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チリンチリン…と涼しげな音を出す風鈴が、春風に揺れている。
キャッキャ!という高いのが特徴の幼い声が、東風商店街の方から届いていた。
その音を、どこか遠いもののように聞きながら、ひとりの少年が塔屋の上から街を眺めていた。
風鈴高校の深緑色の制服の中に、一際目立つ、桜があしらわれたループタイ。
はっきり分かれた白黒の髪に、琥珀色と藍墨茶のオッドアイ。
その名は桜遥。風鈴高校一年、多聞衆の級長。
桜:「…。」
彼にはいくつもの噂がある。
風鈴高校でただ一人の”異能力者”であり、武装探偵社の社員であること。
体術だけでも、総代・梅宮一より強いかもしれないということ。
そして、ほとんど言葉を交わさず、人との距離を保っているのは。
時折見せる、あの沈んだ表情は。
「兄・桜 刀輝(とうき)の死」が関係しているらしい、ということ。
プルルル…
無機質な電子音とともに、桜の制服のポケットが小さく震えた。
彼は何のためらいもなく通話ボタンを押し、短く名乗る。
桜:「…オレです、社長。」
そよ風が吹き抜け、隣にそびえる大木の葉が静かに揺れる。
桜:「分かりました。すぐ向かいます」
そのとき、桜の右肩に、人の手が触れたような皺が、はっきりと浮かび上がった。
桜:「縫櫻(ぬいざくら)、仕事だ」
_赤レンガ倉庫裏路地にて_
冷たい風が吹き抜ける薄暗い路地。
そこに現れたのは、五人組の男たち。異能犯罪グループ”灰街連”の残党。
M:「よぉ、風鈴小僧。…どうやら、噂は本当だったようだな。」
M:「まさか”探偵社”の人間でもあるとは!」
桜は一言も返さない。ただ、静かに指示をした。
桜:「異能力・人間(ヒトマ)の絆。」
彼の後ろに、音もなく現れる一体の異形、縫櫻(ぬいざくら)。
黒い和服に金の桜の刺繍。顔を覆う猫の面と御高祖頭巾。
右手は桜の肩から離れず、左手に一振の刀を握っている。
M:「へっ、こっちは数で勝ってんだ。異能力も持ってるぜ!」
リーダーが叫ぶと、男たちがそれぞれ異能を発動。
煙、炎、雷のようなエネルギーが一斉に桜へと放たれる。
ドンッ!という大きな衝撃で砂埃が舞うが、すぐに太刀風によって払われた。
そしてその中には、無傷の桜と刀を構えた縫櫻がいた。
M:「なに!?」
ザンッ!ザザッ!バチィッ!
攻撃が一撃も通らない。
異能の刃も、煙の刹那も、雷撃の波も。すべて、桜には届かない。
M:「なっ!?こいつ、これだけ撃っているのになんで!」
その問いに答える者はいない。
ただ桜は、ブローニングM1900をゆっくりと抜き、セーフティーを外した。
その銃口は、男たちの太ももを狙っていた。
バン、バン。バン…バン、バン。
必要最低限の弾丸で、誰一人として外さない正確無比な狙撃。
全員が膝をついたところで、桜が低い声で呟く。
桜:「縫櫻、対象を拘束しろ。」
刀がふわりと解け、代わりに桜色の紐が出てきた。縫櫻が迷わぬ手つきで紐を操り、男たちの手足を拘束した。
その途端、男たちの手に残っていた火や稲妻が消える。
M:「異能無効化の紐、か。はは、とんで、もね…。」
桜はすぐに携帯端末を耳に当てた。
桜:「社長。気絶状態にした対象五人を拘束、任務完了です。」
社:「分かった。すぐに太宰が来るから引き渡しを頼む。」
桜:「…了解。」
・・・・・
太:「やれやれ、本当に君は任務に忠実だねえ。あの国木田君が何も文句を言わない理由も分かるよ。」
軽い調子で話しかける太宰。
太:「私なんて、入水を国木田君に止められた挙句、社長に依頼対象の輩を警察に連れてけと仕事を任せられるし、散々だよ。…まあ、雑談はそこまでにして。」
笑っていた目が鋭くなり、桜の顔に向かった。
太:「相変わらずのその顔、表情。」
桜:「…。」
太:「真顔の中から、毒々しく感じるほどの、複雑な感情が漏れ出てるよ。」
太宰の言葉は静かだったが、まるで桜の胸を突き刺すような重みがあった。
桜は、一瞬だけ視線を太宰に向け、すぐに横を通り過ぎようと歩き出す。すれ違いの時、太宰は小さく口を開いた。
太:「…ま、いいさ。じゃあまたどこかでね、風鈴の噂少年君。」
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今回はここまで(≧∇≦)
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