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私は晴れて東京の大学に進学することにした。
それを勧めたのは意外にも父親で、母親もそれに賛同した。
いつのまにか奥手になった私を、外に出すことでなんらかの変化を求めていたのかもしれない。
東京で独り暮らしというと、なにか物語の主人公のようだ。
でも、それが本当に独り暮らしだったのか、いささか議論の余地がある。
何故なら炎蔵がついてきたのだ。
私が大学にいっている間に、炊事洗濯や掃除までもしてくれる。
昼にはお弁当を届けてくれ、たいへん助かった。
大学という場所にはロリコンが多いらしく、私に声をかけてくる輩は多かった。
けれど、高校時代の告白の影響もアリ、私はそのすべてを断った。
まぁ理由のひとつに相手の容姿が無関係とは言わないが……。
どういうわけか、私に声をかけてくる輩は余裕で100キロを超えてて『眼鏡ロリっ娘キター!』とか内心で考えていそうな連中が多いのだ。
外見にコンプレックスのある私としては、それを素直に受ける気にはなれなかった。
それよりも、私からはデブを引き寄せるホルモンでもでているのだろうか?
だとしたらそれは炎蔵と一緒にいるせいにちがいない。具体的な根拠はないのだけれど……。
炎蔵といえば最近気になることができた。
主人の私は中学でとまっているというのに、炎蔵の成長は、いまだに続いているのだ。
さすがに小さい頃にくらべればペースが落ちているが、どこまで大きくなるのか気になる。
いずれ部屋が手狭になるかもだけれど、まぁそのことはそのときになってから考えよう。
それより、問題なのは寿命のほうだ。
ひょっとしたら、私よりも彼の方が長寿なのかもしれない。そんな疑いが出始めている。
炎蔵が生きているうちは、自分のことよりも炎蔵のことを優先しよう。それが拾ってきた者の使命だと思っていたけれど、マジで婚期とか逃しそうな気がしてきた。
まぁ、別段好きな相手がいるわけでもなく、これまで好きになった男子だって、るろ剣の志々雄様くらいなもんなんだけれ……。
驚いたことに、正月に帰宅したら、高校生の弟が学生結婚していた。
まだ正式に籍は入れていないものの、相手の実家に問題があるらしく早くからうちで引き取ることとなったらしい。
相手の両親から承諾を得ているのか疑問だったが、詳しい理由までたずねられる空気ではなかった。
式はいずれ挙げるので、ご祝儀を用意しておけと言われたけれど、学生に無茶を言うんじゃないと断った。
私の部屋は彼女の部屋になった。
もともと家は弟が継ぐものと思っていたのでかまわないだろう。
嫁さんは申し訳なさそうにしてたのに、弟が当然のようにしていたのが釈然としない。
「それより突然だったね」
そう炎蔵に同意を求めたものの、「そんなことはないぞ」とすげなく否定された。
なんでも彼は、私よりも先に弟の件を知っていたらしい。
それどころか、姉を差し置いて弟から相談も受けていたそうだ。
私は家族内での自分の立ち位置が気になったけれど、確認するとろくな目にあわなそうなのでやめておいた。
「ねーちゃんは、あいかわらずマイペースだよね」
そう指摘する弟に、苦笑いする義妹予定者以外、全員が同意してムカついた。