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かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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城に戻ると、大広間ではなく、客間に案内された。
いつもに比べると、使用人が少ない気がする。
「ご苦労様、イソトマ、ディルク。よくやってくれたね」
通された客間には、既にルシアンとリリーが戻っていた。
ルシアンが立ち上がり、イソトマの髪を撫でた。
「ディルク、よくイソトマを守ってくれたね。ありがとう」
ディルクがルシアンに向かい、頭を下げた。
「褒章をいただけませんか」
頭を下げたまま、ディルクがはっきり言った。
その姿を見詰めて、ルシアンが口を開いた。
「いいよ、言ってごらん」
「イソトマを、俺にください。御二人の婚約を、本当に解消していただきたいです」
ディルクが頭を下げ続ける。
イソトマは息を飲んだ。
「……嫌だと言ったら?」
ルシアンが静かに問い掛けた。
頭を上げたディルクが、イソトマを抱き上げた。
「え! ディルク」
「アスランズではない国に、このまま攫います」
ディルクが堂々と言い切った。
面食らった顔をしていたルシアンが、小さく吹き出した。
「なるほど。あのまま攫うこともできたのに、戻ってきてくれたわけだ」
ルシアンがディルクに手を差し出した。
「戻ってきてくれたこと、礼を言うよ。お陰でイソトマと大事な話の続きができる」
ルシアンがイソトマを見詰めた。
これまで見たことがないくらい、柔らかくて優しい笑みだった。
ディルクがイソトマを降ろす。
「ディルクの気遣いに、感謝する」
ルシアンが眉を下げて笑んだ。
(そっか。ルシアンからは言い出しづらい話だから)
わざと自分から話しを振った。
そうやって、ルシアンが切り出しやすい状況をディルクが作った。
(格好良いな、ディルク)
改めて、ディルクの優しさとルシアンの決意を感じた。
ルシアンの目が、イソトマに向いた。
「イソトマの気持ちを先に聞くべくなのだろうが、すまない。私の気持ちを先に言わせておくれ」
ルシアンの唇が、一度、戸惑うように閉じた。
その口が、思い切って開いた。
「……リリーを、妃に迎えたい。私との婚約を解消してほしい」
イソトマに向かい深々と、ルシアンが頭を下げた。
「生まれる前から縛り続けた約束を、こんな形で反故にして、申し訳ないと思っている。どんな責苦も受け入れる所存だ」
頭を下げるルシアンなんて、初めて見た。
気弱な時ですら、王子として頭を下げるような行為はしなかった。
ルシアンの姿を眺めて、イソトマは口を開いた。
「それは、王子としての判断? それとも、ルシアンの気持ち?」
本当はもう、わかっているけど。
ルシアンの口から聞きたい。
イソトマの問い掛けに、ルシアンが息を飲んだ。
「王子としての打算もある。私が目指す国政のため、孤児院出身のリリーを妃に据えるのは都合がいい」
わざとらしい言い回しだ。
こんな時も理屈に逃げようとする辺りが、ルシアンらしい。
「それだけ?」
だから、ちゃんと聞いた。
ルシアンが、ゆっくりと頭を上げた。
「気が付いたら、愛していた。手放したくないし、離れたくない」
ルシアンがリリーの手を引き、抱き寄せた。
ひゅっと、イソトマは息を吸い込んだ。
目の前に理想の二人が立っている。
(これこそ、僕の理想のルシリリ。本来あるべき姿……信頼と絆!)
ルシリリの間にあってほしい感情であり、言葉だ。
ゲームの設定を越えて、それ以上の絆で繋がれた信頼だ。
我慢していた涙が、イソトマの目から堰を切ったように流れた。
「なら良し、許す! 永遠に愛し合ってくれたら、それでいい! うわぁあん!」
イソトマはディルクに抱き付いて泣いた。
「尊いよぉ。ルシリリが前より、てぇてぇになっちゃったぁ」
「良かったな」
「また漫画描くぅ」
「買ったGペンが使えるな」
ディルクが的確に慰めてくれる。
イソトマというよりオタクを慰めている。
「泣かないでくれ、イソトマ。いや……私に泣くなという資格はないな」
ルシアンが伸ばしかけた手を引いた。
「あれ、悲しんでるのか? そんな風に見えねぇけど」
リリーが、訝しそうな顔でドン引いている。
「イソトマは喜んでいる。以前からルシリリ……ルシアンとリリーが……仲良くなれば、いいと、思っていたんだ」
ディルクが言葉を選びながらイソトマの胸中を説明してくれた。
推しという言葉の解釈に悩んだ様子だ。
「そうなのかい? 一体、どうして」
ルシアンが複雑な表情をしている。
婚約者が他の男と仲良くなれと望んでいたら、いい気分はしないだろう。
「僕は、仲睦まじいルシアンとリリーを見ているだけで、幸せなんだ」
グシグシと涙を拭きながら、ルシアンにダメ押しする。
「だから、これからも二人を応援する。ずっと見てるから。別れるなんて許さないから」
「いや、怖いって」
リリーのツッコミが的確過ぎて反論の余地がない。
「私はリリーを離す気がないから、お別れの心配はないよ。永遠を約束した。役に立たなくても守られていいんだと、リリーに覚えてもらわないといけない」
ルシアンがリリーを振り返る。
リリーが顔を逸らした。赤く染まる顔は、もうちゃんとわかっていそうな気がした。
そんな二人の姿が、既に尊い。
「ルシアンとリリーが幸せになるなら、僕は婚約解消に従うよ」
イソトマは、ぎゅっとディルクに抱き付いた。
「それにね、僕もディルクを愛しちゃったから、離れたくないんだ」
リリーは涼しい顔をしているのに、ルシアンが険しい顔をした。
「わかっていたけど、素直に受け入れはできないものだね」
ルシアンの眉間に皺が寄っている。珍しい表情だ。
「そこは許していただきたいです。もっと言うなら、ルシアン様に文句を言われる筋合いはないですね」
「そうだぜ。大人になれよ、ルシアン。もうイソトマは、お前のじゃねぇんだよ」
ディルクとリリーに苦言を呈されて、ルシアンが何も言えなくなっている。
そんな光景が面白かった。
「ねぇ、ルシアン。今、書こうか」
さらさらと書く仕草をする。
眉を下げたルシアンが、婚約書類を持ってきた。
親同士が結んだ婚姻の約束だ。今は本人に判断する権利がある。
「隣り合って、名前を書こう」
「そうしよう」
書類を並べて座る。婚約破棄の署名欄に、名前を書いた。
「初めての共同作業でお別れというのも、悲しいね」
「ルシアン、未練がましいね」
長年、婚約者だったから名残惜しさはあるが。こういうのは決めたらきっぱりしたほうがいい。
「イソトマ、ありがとう。イソトマが元婚約者であることを、誇りに思うよ」
「これからは友人として、よろしくね」
イソトマは拳を持ち上げた。
ルシアンに向ける。
その手を眺めていたルシアンが、同じように拳を持ち上げた。
拳と拳を、とんとあわせる。
互いに自然と笑みがこぼれた。
ここから、イソトマとルシアンそれぞれの新しい人生が始まった。
コメント
1件
え〜!?第43話、めっちゃエモかった…!😭💕 ルシアンがイソトマにちゃんと気持ち伝えるシーン、涙腺崩壊した…。「愛してた」「離れたくない」は反則だよ、尊すぎィ!! そんでイソトマの「ルシリリ尊い!!」ってオタク全開なリアクション、まさにわかる〜!!推しカプがてぇてぇになると泣いちゃうよね!? 最後の拳と拳トントンも、切ないけど新しい始まりって感じで心に沁みた…✨ ディルクの「攫う」発言もカッコよすぎじゃない!?😳💕 新章突入、めっちゃ応援してるよ!!