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二グレド族の村人たちはそれまでの生活を一旦止めて、一斉にこちらを見守る。怯えたように……。
「逆らえばどうなるのか解るだろう……皆殺しだ。だが、カルダ様は寛容なのだ。赤子を三人だけで今日の生贄は十分だと言っている……どうだ」
「う……赤子を……何と! 酷い事を!」
ルゥーダーの脅しに長老は涙目で重く頷き、二人の護衛に指示をだし、周辺の使い古した天幕から親のいない元気な赤子を三人抱えて来た。
「……もうわしの村はほっといてくれ! こんなことはたくさんじゃ!」
長老は堪らず涙に濡れた顔を覆った。しかし、ルゥーダーは一切意に介さず、軽々と泣き喚く赤子を三人、片手で無造作に抱きかかえ歩き出した。
「お願いだ! わしの村だけでも村人の安全な生活を守ってやってくれ!」
ルゥーダーは振り向かない。
「お願いだ! 助けてくれ!」
長老はついに蹲くまった。この村からの生贄はそれから更に増えたという。
ルゥーダーの抱えている赤子たちを見送る少女が長老の傍に寄って来た。
こんな残酷な出来事を少女が慰めるかのように……。
「あのね、長老。私、空が見えるの……」
少女が長老にその小さな唇を寄せて囁いた 。