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続き楽しみにしてます!!
生還
冬の痛烈な寒さに、全身凍えた私たちは、部屋に転がり込んだ。
夢主:「…ほんと、凍えるかと思ったよ…。」
玄関の扉を閉めると、彼は無言で靴を脱ぎ、
足早にリビングへと向かう。
ちらりと横を見ると、彼はパーカー1枚にスウェットパンツ姿のまま、肩を丸めて縮こまっていた。
毛布にくるまる猫みたいに、
袖の中へ手を押し込んでいる。
いつもなら堂々とした雰囲気を纏っているのに、
今の彼はまるで… 小さな子供みたい。
――こんな糸師くん、初めて見るかもしれない。
夢主:「はい、これが飲みたかったんでしょ?」
白い湯気と共に、
かつおと昆布のやさしい香りが部屋に広がる。
じっとカップを見つめた後、
少し遅れて手を伸ばす。
その指先は、かすかに震えていた。
(…そりゃ寒かったよね)
こぼさないように慎重に彼にカップを手渡すと、
指先が、ほんの一瞬だけ触れた。
氷のような感覚に私の心臓は少しだけ跳ねた。
糸師凛:「…うまい。」
凛は短く言って、カップを傾ける。
ふぅ、と静かに息を吐き、少しだけまぶたを伏せた。
その姿を見た瞬間、言葉にならない感情が込み上げる。
(……あ、ダメだ。)
可愛いなんて、思ったら負けだ…
頬がやけに熱くて…
気づかれないように慌てて顔を背けた。
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糸師凛: 「…クシュンっ」
夢主: 「……だ、大丈夫?
ちょっと待って、何か羽織れるもの探してくる!」
風邪を引かれたら大変だ。
私は慌てて立ち上がり、収納クローゼットへと向かった。
夢主: 「たしかこの辺に……」
(うわ、1番上の棚じゃん……オーマイガー。)
届きそうで届かない。
つま先に全体重をかけて、
めいいっぱい手を伸ばした、その瞬間――。
糸師凛: 「……これか?」
夢主: 「え? う、うん。」
ふわりと柔軟剤の香りが漂い、
背中に彼の体温を感じる。
後ろから抱きしめれているような錯覚を覚え、
妙に意識してしまう。
いとも簡単に、彼は棚の箱を下ろし、私に手渡す。
糸師凛: 「……ん。」
夢主: 「あっ、ありがとう!
背、高いね……」
糸師凛: 「今更だろ。」
夢主: 「……た、たしかに。」
私は箱を開けようと手を伸ばした――
その瞬間。
ガタンッ!!
手がすべり、箱が無惨にも床に落下する。
散らばるグッズ。
(……やってしまった。また文句言われるかも。)
糸師凛: 「……」
予想とは裏腹に、彼は何も言わず、
しゃがみ込んで落ちたものを
丁寧に拾い集め始めた。
ちょっと意外で、私も慌てて後に続く。
糸師凛: 「……なんだ、この箱?」
夢主: 「あー、それはグッズが入ってるの!
キーホルダーとか、アクリルスタンドとか!
……って、こんなとこに入れてたんだ、完全に忘れてた!」
一瞬考える素振りを見せたあと、
彼は箱を開ける。
糸師凛: 「すげぇ量だな……」
夢主: 「あはは、止めどない収集癖という、
不治の病を抱えておりまして……
減らさなきゃなんだけどね……」
そのとき、彼の手が箱の中の何かに触れた。
糸師凛: 「おい……これ、鍵入ってるぞ。」
夢主: 「え? ……あ、本当だ!
えー、スペアキー、こんなとこにしまい込んでたんだ!?
使うことほぼないから、全く気づかなかったわ……」
糸師凛: 「アホだな。」
夢主: 「なにぉうっ!!
……まぁ、そこに戻しといていいよー!
どうせ使う予定ないし。」
そのまま彼に任せ、別の箱を開ける。
夢主: 「あ、あと、その箱の中に欲しいものあったら持って帰っていいよ!
ブランケットはこっちの箱みたいだから、そっちのは戻しておいて!」
糸師凛: 「……」