テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
みいは、小さい頃からずっと隣にいる存在だった。小学校、中学まで、気づけばいつも隣にいて、気を使わなくても平気な相手。
最初はただ「一緒にいるのが当たり前」なだけだった。
深く考えたことなんてなかったし、特別だとも思ってなかった。
みいは、よく笑う。
人の話を真剣に聞くくせに、自分のことになるとドジをする。
忘れ物も多いし、走るときはなぜか右足からつまづく。
それに……自分が犠牲になっても誰かを助ける。
クラスで困ってるやつがいれば、すぐ首を突っ込んで、笑いながら何とかしようとする。
頼まれてもいないのに世話を焼くから、時々損をしてるのに、本人は全く気にしてない。
あとモテてた。
でも、そうやって声をかけられるたび、理由もなくムッとしてた。
その理由を、当時の俺はまだわかってなかった。
中学に入っても、それは続いた。
みいは俺より先に友達を作って、笑って、ドジして、人助けして、また笑って。
俺は部活やら何やらで忙しくしてたけど、気づくと視線で追ってた。
話しかけられたときの笑顔は、自分だけのものだと思ってた。
夏祭りは、毎年一緒に行った。
みいが浴衣を着て、髪を上げて、下駄をコツコツ鳴らしながら歩く横顔。
あの人混みの中で、他の誰にも触れさせたくなかった。
だから、それが当たり前だと思ってた。
――終業式の前日までは。
昇降口でみいを見つけたとき、
「夏休みの――」って切り出しかけたら、背後から悠真の声。
「みい、明日の宿題プリント持った?」
振り返って悠真と笑い合うみいを見て、胸の奥がざわついた。
その笑顔は俺も知ってる。でも、悠真にも向けるんだってことが、やけに癪に障った。
偶然会ったフリをした、
実際はかなり探した、みいが行きそうな場所。
見つけた時は偶然を装った。
「明日、行くか?」って何気なく聞いた。
いつもなら即答するのに、黙って下を向いた。
その時点で、答えはわかってた。
「……誰と行くんだよ」
声が自分でも驚くくらい冷たくなっていた。
「勝手にしろ」って言って、先に歩いた。
翌日、夏祭りで浴衣姿のみいを見つけた。
隣には悠真。
笑ってる。その笑顔が花火の光に照らされて、また闇に溶けていく。
手を伸ばせば届く距離じゃないのに、目を離せなかった。
――その夜、ようやく気づいた。
俺がずっと怒ってた理由も、ムッとしてた理由も。
全部、嫉妬だったんだ。
ずっと前から、みいのことが好きだったんだ。