テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
祭りのあと、律は急に距離を取るようになった。最初は何も気にせず、いつも通り話しかけた。
「おはよー」って声をかけても、短く「…おう」だけ。
数日経っても戻らないから、思い切って聞いた。
「ねえ、なんで? 私なんか悪いことした?」
「別に」
「別にって何…?」
「別に」
それ以上は何も出てこなくて、私も何も言えなくなった。
どうしてもいつもの律に戻ってほしかったけど、
壁を作られたみたいで、手が届かなかった。
そんな中、悠馬はいつも通り――いや、前よりも優しかった。
廊下ですれ違えば笑ってくれるし、授業でわからないところを教えてくれる。
重い荷物を持っていたら、無言でひょいっと持ってくれる。
「大丈夫?」って言葉も、声のトーンも、全部があたたかかった。
冬のある日、下校途中で悠馬が立ち止まった。
「…あのさ、付き合ってほしいです」
まっすぐな目。冗談じゃないってすぐにわかった。
素直に、嬉しかった。
その時はもう、律のことなんて考えられなかった。
私のそばにいてくれる人の手を、自然に取っただけだった。