私達は町を隅々まで探したが見つからず、現在地下を出て地上で付近を探索中。
向雲「雷芳!雷芳!いませんか〜!」
丁亮「雷雷〜」
登子 流華「雷芳ちゃ〜ん!子糸〜〜!」
臼柏 千布「ここもおらんのちゃうん」
向雲「困りましたね…。ここでもないとするなら、範囲が拡大してしまう…」
頭を抱えていたその時、私は何かを見つけた。それは、周りが薄暗くてはっきりとまではいかないが輪っかが落ちているんだと察知する。拾ってみたが…ゴツゴツしているこれはペンダントか?宝石のような物が微かに見える。
登子 流華「……」
臼柏 千布「…?どうしたんや、俯いて」
ペンダントを見つめる私を臼柏さんが気がついてこちらへやって来て覗き込んだ。
臼柏さんはランタンを持参して来ていたから辺りは光に包まれ、ようやく手にしていた物の正体が明らかとなった。やはり、ペンダントであった。パールに宝石の色は青。灯火に照らされてキラっとうつる宝石。
臼柏 千布「ん、ペンダント?誰かの落とし物か」
私達に視線を向けた二人。向雲さんは真っ先に、はっと口を開けて駆け寄った。
丁亮さんもそれに続くように歩いて来た。
向雲「こ、これは!雷芳のペンダントです!えぇ、間違いない!私があげた物です!」
ペンダントが落ちていた先は一本道。臼柏さんがその一本道の方にランタンを伸ばすとまた一つ、何かが落ちていた。
それに気がついた向雲さんは落ちている物に向かって走る。
向雲「これは…」
落とし物を拾うと私達の方へ戻って来た。
丁亮「それ俺があげたやつじゃん」
落とし物の正体は以前丁亮さんがあげた髪飾り。私達は一本道を進むことにした。
するとまた髪飾りが。
臼柏 千布「まだ一個なら分かったけど、こんだけなんべんも落とすもんけ?」
向雲「いいえ、彼女はそこまでドジではなかったはずですが…」
登子 流華「誰かに見つけてもらえるように道標としてわざと落としたんじゃない?」
向雲「ほう。雷芳もよく考えましたね」
丁亮「さらにその奥も行ってみよう」
しかし、歩いてももう何も落ちていない。
向雲「落とすものはもう無くなりましたか…」
臼柏 千布「ん?」
私達は立ち止まった。この先は行き止まりだったからだ。だが、この下に錆びれた大きな赤い扉があった。
丁亮「開いたまんまだな」
向雲「まさかこの中に…。今行きますからね!」
向雲さんは急いで扉に続くハシゴを下っていった。私たちもその後へ続いた。
丁亮「うわ、くれーなぁ。なんも見えねぇ」
向雲「私のランプで……おや?」
すると、急に周りが明るくなり、着物を着た女性がこちらの方へ向かっているのが見える。
「お客様?申し訳ございません。もう皆、外に居ないものかと」
向雲「すみませんね。この女性の親戚と、うちの子がこの穴へ入ったとされる所有物がいくつか見つかったのでもしかしたら、と思いまして。何か知っていることは御座いますか?」
「ええ、心当たりなら。ですが、それがどうかしたのですか?」
丁亮「返してくれない?その子、俺らの後輩ちゃんなわけ。あの子が進んでここに来るなんてことまずない」
「誠に申し訳ございませんが、お引き取り願えますでしょうか」
登子 流華「それはできないです」
「…おや、その奥にいらっしゃるのは、かの有名な地下町の町長様ではないですか」
臼柏 千布「…」
臼柏さんは呆れた表情をしてる。
丁亮「俺らは?俺ら知ってる?繁華街にいるんだけどさ」
「いえ、ご存知ないです。ここら辺で繁華街は耳にしたことがありませんね。あまり外に出ないもので」
臼柏 千布「聞かへんねや」
ここら辺じゃ繁華街は聞かないのか。でも結構距離あるし…。
丁亮「よかったら今度来てくれよ。ぜってー後悔しないからさ」
向雲「って、こら。こんな話しに来たのではありません。こちらも引き下がる訳にはいかないんです」
「いえ、お帰り下さい。それに、そこは関係者以外立ち入ってはいけないという看板、この梯子を降りる際に建てておいたのですが、読めませんでしたか?」
丁亮「そんなのあったけな?」
向雲「いえ、看板っぽいものはありましたが、くすんでいて読めるものではなかったです」
「…はぁ、以前、私の後輩に建て直しておくよう申したのですが、、これは後で説教ですね。貴方達を追い出してから」
登子 流華「うわっ!」
女性は周りに数個の小石を出現させて、私達の方へ勢いよく飛ばしてきた。
そこで、臼柏さんは扇を振り翳して、多少の風を起こし小石を薙ぎ払った。
登子 流華「臼柏さん!」
臼柏 千布「ほう、ならこちらも正当防衛として、攻撃させてもらうけど。ええよな?」
流石に、4対1の状況で不利だと気づいたのか、向こう側から白旗を挙げてくれた。
「良いでしょう、ご案内いたしますね」
臼柏 千布「はぁ、なら初めからそうしてくれ。余計な手間かけさせんでや」
丁亮「お、おぉ…向雲さん。この人こえーな」
向雲「シッ!そんなこと言ってはいけないでしょう!」
臼柏 千布「聞こえとんで。ったく、よう言われる。別にそんなつもりでなくても、な」
登子 流華「でもこれでとりあえず、解決しそうじゃないですか?!」
臼柏 千布「やな。はぁ、疲れたわ」
向雲「ここまでご協力頂きありがとうございます♪」
「着きましたよ」
案内先は木の小屋だった。ここに居るって事だよね!
中に入ると楽しそうに会話している二人がいた。
向雲「いました、雷芳!探したんですよ!!まったく!」
雷芳「おっ。お主ら…こんなところにおったか…」
丁亮「こんなわけわかんないとこで缶ジュースなんか飲んじゃって…」
雷芳「ウマいぞ」
向雲「さぁ、帰りましょうね」
丁亮「そーだ。おねーさん、名前聞いても良い?」
臼柏 千布「なんで聞くねん」
渋楽 明翠「渋楽 明翠(しぶがく あけす)と申します」
丁亮「また会える機会があったら!じゃあね〜」
雷芳「じゃあのぉ〜」
丙森 子糸「ばいばい!」
私達は梯子を登り、入り口付近で、お互い別れを告げた。雷芳ちゃんと子糸はどうやら、翌日から作業員の人へ飲み物を配給する仕事をする予定だったらしい。
登子 流華「そうなんだ」
臼柏 千布「でも子供があんなとこあまり長居するのは良くない。あの広い洞窟、有害な場所も少ないくないからな。まぁ、子供だけじゃなく、老若男女問わずな。やけど、子供は特に危ない」
登子 流華「早めに見つけれて良かった…」
地下町へ戻った私達は、旅館の廊下を歩いて行く。
渋楽 明翠「町長もいるとは…」
戚門 竜路(せきもん りゅうじ)「逃したのか?」
渋楽 明翠「えぇ」
戚門 竜路「内密にているだろうな?」
渋楽 明翠「信用して下さいよ。私、それほど口が達者ではありませんから。其方は順調ですか?」
戚門 竜路「ああ。だいぶな。臼柏殿もあのまま加担し続けていたら、ここは地上と一番近い。
況してや、ここで戦うなど、論外だ。地上の者に見つかる。その点で明翠嬢は良い判断だと俺は思っている」
渋楽 明翠「何、計画が進んで仕舞えば、私達は繁盛間違い無しですからね」