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ジャック「……救けるだって?」
困惑したような、呆れたような顔だ。
ジャック「いきなり押しかけてきて何を言うかと思えば、なんだそれ。たった1週間連絡取れないだけだぜ?」
「全く……迷惑な奴だ。」
この先、なにか期待するでもない。頼れるものなんて、もうない。
お前が俺を切捨てても、俺はお前を忘れない。
一生癒えない傷になる。
いい加減にしろよ。もう期待すんなよ。
心でそう思っていても、それと同時に
まだ…まだ希望があると信じたいと願っている。
でももう終わりだ。また離れるだけだ。
どうせ、奴らと同じだと思っていた。
約2ヶ月前…
朝5時、アラームが鳴る。
重りのついたような瞼を無理して持ち上げ、
また朝が来た。
俺の気も知らず、やたらに眩しく照らされた散乱したこの部屋で、抑鬱と共にため息をついた。
何に抵抗するでもなく服を着て、伽藍堂の頭でステージへ向かう。
初めてのロンドン公演だ。
昨夜飛行機移動で6時間。いっそ墜落してくれと思ったが、無事着陸した。
ロンドンは雨が多いらしい。観光名所なんかにもう用は無いが、他に身寄りも無い。
ここでやるのか。屋内ステージに閉じ込められた。
出番20分前、自分自身を覆い隠す様に顔をメイクで塗りつぶす。
そばかす、ニキビ跡、青アザ…
虚ろな目が惨めったらしく俺を見つめ返していた。
観客のざわめきが、俺の耳を嬲る。
奴が合図する。もう時間だ。
空っぽの僕でステージに上がる。
眩いスポットライトとは対照的に、
俺の心は傷つき、憔悴していた。
心を閉ざし、仮面を被った。
『レディース&ジェントルメン!ようこそ私たちのショーにお越しくださいました!これから皆さんに見たこともない不思議なショーをお見せします!どうぞ最後までお楽しみください!』
簡単だ。いつもやるように自分を操作するだけだ。
こんな抜け殻のような「僕」を観客は値踏みする。
違う。俺は俺だ。でも、そう叫ぶ気力も残っていない。
只々違和感と痛みが絡みつく。
こんなの耐えて何になる。なぜ俺は生きている?
俺は何のため生きている?
分からない。どうやってもここから抜け出せない。
俺は俺からは逃げられない。
それなのに
誰も本当の俺を知らない。
誰も
誰も
だれも。
やっとショーが終わった。もうクタクタだ。
気絶するように眠りに落ちた。
次の日の早朝。団長も、団員達もまだ眠っている。
これをいいことに、俺は朝練をサボって無意識に街に踏み出した。
今思えば、まだ救いがあればという願いがそうさせたのかもしれない。
(うまく気が紛れるといいけど……)
そう思いながら八百屋を眺めていたら、急に誰かに話しかけられた。
咄嗟に仮面を被り、心を閉ざす。
俺と同い年位の男子だ。
昨日のショーが気に入ったらしい。
こんな風に話しかけられたのは久しぶりだ。
なんだかお人好しそうな、この世の穢れを知らないような瞳だ。
でも、この人もきっと同じだろう。
俺を排斥して来たヤツらと何ら変わりは無いのだろう。
…
…
……でも…もし、違うとしたら……。
これで最後にしよう。
これが、俺の最後の願いだ。
『裏切られませんように』
#6 微かな光 fin…