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昨夜、アニキと交わした「二人だけの秘密」。
首の後ろのチップは、肉体を操る機能を失い、
今はただオレンジ色の光を弱々しく点滅させて命令を伝えるだけの「壊れた機械」に成り下がっていた。
僕は、これまでにない晴れやかな気分で、いふくんと共に食堂の扉を開けた。
青.彡「…お前、今日はえらい機嫌ええな。鼻歌まで歌って。」
いふくんが不思議そうに隣で呟く。
僕は「はい、よく眠れたので!」と、自分でも驚くほど自然な笑顔で答えた。
食堂のいつもの席には、ないこさん、初兎さん、りうらさんの三人が既に座っていた。
そこへ、少し遅れてアニキが豪快に入ってくる。
黄.彡「おう、みんな! おはよう!」
水.彡 「あ、おはようございます、アニキ!」
明るい声で挨拶を返した瞬間。 食堂のその一角だけ、
時間が完全に停止した。
白.彡「……ぶっ!?」
コーヒーを飲んでいた初兎さんが派手に吹き出し、
いふくんは持っていたスプーンを床に落とした。
ないこさんは微笑んだまま固まり、
りうらさんは目を丸くして僕とアニキを交互に見ている。
白.彡「…え、今、なんて言うたん? ほとけくん。」
初兎さんが、口元を拭きながら震える声で尋ねる。
水.彡「え? あ、アニキ…ですけど。…あ、ダメでしたか? アニキが『さん』付け禁止だって言ったので…」
少し不安そうにアニキを見ると、満足げに鼻を鳴らして、僕の隣にドカッと座った。
黄.彡「おう! 昨日の特訓で、こいつとは魂の兄弟になったんや。なぁ、ほとけ!」
水.彡 「はい、アニキ!」
青.彡「、…はぁぁぁぁぁ!? なんでほとけまでアニキって呼んどんねん! アニキは俺のやぞ!」
いふくんが顔を真っ赤にして立ち上がった。
その猛烈な嫉妬ぶりに、ないこさんがクスクスと笑いながら口を開く。
桃.彡「いいじゃない、まろ。ほとけくんがアニキと仲良くなった証拠だよ。まろだって、最初はアニキにベッタリだったでしょ?」
青.彡「……っ、!」
いふくん追求を、アニキが「男の友情に理由は要らんのや!」と強引に押し切り、朝食が再開された。
けれど、この「アニキ」という呼び名をきっかけに、僕を取り巻く空気は劇的に変わった。
赤.彡「……へぇ。ほとけくん、意外と懐くの早いんだね。」
りうらさんが、トーストを頬張りながら話しかけてくる。
赤.彡「俺、もっと時間かかると思ってた。でも、そっちの方がいいよ。昨日より、今の方が『生きてる』感じがする。」
水.彡 「…ありがとうございます、りうちゃん。僕、今まで…あんまり人とどう接していいか分からなくて。でも、皆さんといると、少しだけ、楽しくて…」
僕が「りうちゃん」と呼ぶと、りうらさんは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに笑った。
白.彡「そんな殊勝なこと言うんやな。…まぁ、悠くんが認めたんなら、俺らも『他人』扱いは終わりや。」
初兎さんが、瞳を優しく細めて笑う。
白.彡「なぁ、ほとけくん実は結構おもろい奴やろ? これからは俺のことも『初兎ちゃん』って呼んでええで。」
水.彡「えっ、いいんですか…? じゃあ、初兎ちゃん。…あ、ないちゃんも、いいですか?」
恐る恐るないこさんを見ると、「もちろん! ないちゃんって呼んで。」と優しく頷いた。
青.彡「……ふん、勝手に盛り上がりやがって。……おい、しょにだ。お前もなんか言えや。」
いふくんが初兎ちゃんを「しょにだ」と呼びながら話を振る。
白.彡「俺に振るなや、まろちゃん。自分がいっちゃん寂しそうにしてるやんか。」
青.彡「黙れ…!」
水.彡「あの……皆さん。呼び方のことなんですけど……」
僕が意を決して切り出すと、和やかだった食卓の視線が僕に集まった。
ないちゃんはコーヒーカップを置き、りうちゃんはトーストをくわえたまま、不思議そうに僕を見ている。
水.彡「『ほとけ』って呼んでもらうのも嬉しいんですけど…本当は、自分の中で決めた名前があって。
これからは、『いむ』って呼んでほしいなって…。」
食堂が、ふわりと温かい空気に包まれた。
桃.彡「いむ? うん、いい名前! 似合ってる!」
赤.彡「いむかぁ。響きが可愛くていいと思う! 」
ないちゃんとりうちゃんが、当たり前のように新しい名前を受け入れてくれる。
初兎ちゃんも「いむくんな。よし、覚えたで」と笑い、アニキは「俺はほとけや!いむもえええけどな!」と豪快に僕の肩を叩いた。
けれど、一人だけ。 隣で不機嫌そうにスープを混ぜている青い影があった。
白.彡「……で、まろちゃんは? 呼ばへんの?」
青.彡「…………。」
いふくんは、スプーンを止めてそっぽを向いた。
青.彡「…俺は、呼ばん。ほとけは『ほとけ』でええやろ。」
水.彡「えっ……。いふくん、嫌ですか……?」
僕が少し不安になって顔を覗き込むと、いふくんは一瞬だけ僕と目を合わせ、
すぐにまた視線を逸らした。その横顔が、ほんの少しだけ赤らんでいるように見える。
青.彡「嫌とか…そういうんやなくて。…お前が俺の横で鼻歌歌いながら歩いとったのも、昨日泣いとったのも、全部『ほとけ』やったからや。」
それは、いふくんなりの、ひどく不器用な「こだわり」だった。
水.彡「いふくん…。それって、今の僕じゃダメってことですか?」
青.彡「…っ、そんなこと言うてへんやろ! ボケ!」
いふくんは立ち上がり、空になった食器を片付けようとした。
でも、去り際に一瞬だけ、僕の椅子の背もたれをギュッと強く掴んだ。
青.彡「…勝手に『いむ』って名乗って、勝手にどっか行くなよ。…ほとけ。」
ぶっきらぼうな、命令のような、でもどこか必死な響き。
水.彡「…分かりました。いふくんだけは、特別にそのままでいいですよ。」
僕がそう言うと、いふくんは「特別とか言うな!」と背中越しに怒鳴って、足早に食堂を出ていった。
黄.彡「あいつ、ホンマに素直やないなぁ。」
白.彡「ま、あれがまろちゃんなりの可愛がり方なんやろ。なぁ、いむくん?」
アニキたちの笑い声を聞きながら、僕は首の後ろのチップに触れた。
オレンジ色の光は、相変わらず弱々しく点滅している。
けれど、いふくんが呼ぶ「ほとけ」という名前も、今の僕には、
彼と僕を繋ぐ大切な鎖のように、心地よく感じられた。
__スパイとして、感情を殺して潜入したはずだった。
けれど、この賑やかな呼び名が飛び交う輪の中にいることが、僕には何よりも救いだった。
あの、僕がランキング見たとき1位でした。
まじありがとうございます大好きです(((
めっちゃ頑張ろうと思います((
…今日夜、更新、迷ってる。
コメント
4件
更新やっちゃおう! めちゃくちゃ楽しみにしてるッッ!!(* • ω • )b