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「世界都市さんは忙しい」
※世界都市擬人化創作
“シャッフル”
「待って。一旦整理しよう」
廊下の角で落ち着けというように手をかざした
というより落ち着けと自分に言い聞かせた
「まず、お兄さんはパリ」
いつもより数センチ低い目線で話す
「俺がベルリンだ」
今度はいつもの自分が全く違う口調で話す
「私がロンドンです」
ヨーロッパで唯一の敬語。今起きている事がお分かりだろうか
つまり
ヨーロッパ都市3人がシャッフル状態なわけである
原因は普通にぶつかって。そんな漫画みたいなことあるかって?あるんだよだってこの世界フィクションだから
俺はロンドンの身体で、ベルリンが俺の身体。そしてロンドンがベルリンの身体となっている
頭がおかしくなりそう
「どうするか…さすがに困るぞこれは」
自分の姿と声でそんな口調だととても違和感。
というかちょっと気持ち悪…んん”
「まー…なってしまったものは仕方ないよー!今日は1日バレないように…」
「パリ。私の姿でその口調やめてもらえます?
違和感でしかありません」
割り込み!!
てかみんなそう思ってるよ!!そしてロンドンが1番違和感だよ!!
「まぁパリの言う通りだな…正直戻り方もわからないわけだ。言っても信じてはもらえないだろう。今日1日はお互いを演じ切るんだ」
ロンドンはいかにも嫌そうな顔…というか不服そうな顔をしている
そりゃそうだ。だって入れ替わってるのが俺だからね
一方ベルリンはそんな俺達を不思議そうに眺めてた
鈍すぎるこの人
「さてと〜じゃ、会議だから行こっか〜」
クルッと後ろを向き歩き出す。後ろからロンドンとベルリンが追いついた
「せめて言葉使いだけは直してくれません?」
呆れたように言ってくる
「も〜。そんなに心配しないでよ。お兄さんだってやるときはやるからー」
睨まれた。さすがに言いすぎたかなーなんて…
「それよりベルベルとロンロンのほうがお兄さん心配だよー」
ま、ほんとは全然心配なんてしてないけど
「べ、ベルベル?」
ベルリンは自分の呼ばれ方にちょっと混乱してるらしい
「私が他都市にバレるような失敗をするとでも?」
今日のロンドンはいつもより攻撃的だ
まぁ当たり前かこんな状況下じゃ
会議室の扉前まできた。
「じゃ、バレないようにね〜」
最後にそれだけ言って扉を開けた。
扉の向こうにはいつもの面々。上海、ソウル、東京、ニューヨーク、ローマそれから…モスクワは…お休みかな?
会議室は5人と5人の対面席。
右側に1つ手前の席を開けて上海、ソウル
左側に奥から東京、ニューヨーク、ローマ
「おっせぇある」
最初に口を開いたのは上海。いつもの調子だ
他の都市らもどうやら雰囲気だけでは気づいてないようだし
まぁ、さすがにそこまで鋭い子はいないか
こういう時ロンドンなら…きっとこう言う
「すみません。今日は早いんですね上海」
うわー我ながらすごい酷い皮肉…このくらいは言うでしょ
いつも言ってるし
笑顔を崩さないように顔の筋肉に気を配る
案外疲れるなこれ
後ろの2人はわからないけど、目の前の上海は明らかに少しイラついてるようだった
「…時間も過ぎてるし始めよう」
ベルリンの姿をしたものが言った
本当は誰かを知ってるためどうも変に感じる
まぁ多分認めたくないけどお互いをよく知ってるからこういう演技ができるのだろう
右側の奥の端の席に着く
いつもロンドンが座る席
向かい側は東京、その隣はニューヨーク。ベルリンの見た目のロンドンが横に座った。
珍しく欧米兄弟が向かい合った形になった。見た目は違うけど
中々ないよなこんな機会。
それと入れ替わっているとはいえロンドンが自らパリの横を選ぶのも珍しい。
いつもはロンドンの隣には気まぐれで座ったり座らなかったり…
たまに先客がいる。ローマとか
恐らく今ロンドンはベルリンの見た目だからだろう
大抵、ロンドンとベルリンは隣同士で座る
横目でチラリと見られた。なんか睨まれた?
なぜそこまで俺だけに当たりが強いのかねー…
一方俺…ではなくベルリンはというと、
ローマの横に座っていた
よく分かってんなー
まぁいつも会議してるし、そのくらいは普通に意識するか
はぁ…やるか…。今回の議題は至って簡単
“モチベーション向上”についての案出し
いつも司会役は順番性であるため今日は俺
つまり俺の見た目のベルリン
彼の方を見ると目線に気がついたのかスっと立ち上がってくれた。
正直ベルリンはちょっと心配してたけどなんとかなりそう
「こ…今回の議題は…”モチベーション向上”についてだ…いや、ついてだ…わよ」
ちょっっとぉぉ!?
前言撤回!!!心配しかない!!
どうしてくれんの!みんなちょっと不思議な顔してるじゃん!
いや…違う!
結構ウケてる上海とソウル。
なんだコイツという顔をしながらも若干ウケてる東京とニューヨーク。
苦笑いのローマ。
え?ローマちゃん気づいてる?
「久しぶりだからな…緊張しているんだろう。」
隣でベルリンの見た目のロンドンがフォローに入る。この腹黒紳士野郎…!
てかなんでそんなカタコトなの!?
え?俺ってこんなん?いや絶対違う
俺の見た目のベルリンは満足そうに座る
ここまで来ると天然を超えてる
お、落ち着け…顔に出しちゃダメ…今俺はロンドンだし…
落ち着け…落ち着け……
なんとか表情は変えずに耐えられた
「つってもなー…このクソブラックの会社でモチベ上げれるような策なんかなくね?いくら見返りがあっても仕事の量に適さねぇだろ」
ニューヨークが水を差した
笑いは一応止まった。今回は感謝するわ
「それなら休憩時間を増やすとか…体力面から精神的な整えの方が大事な気がします」
東京が続けた。
まぁそれはそう…それはそうなんだけどさぁ東京ちゃん…
「はっ。いっつも睡眠時間削って仕事してる奴が何言ってるある。説得力皆無あるよ」
「うっ…」
上海が思いっきり発言を殴った
苦しげに下を向く東京。
ニューヨークがその肩を軽く叩いて鞭撻している
「あ、それだったら働いた時間に比例して休息の時間を決めません?」
ソウルが思いついたように言った
まぁそれもそれで悪くはないんだが…
「はぁ…そんな事してみろある。無理して馬鹿みたいに働くやつが出るあるよ。休みがほしけりゃ働け精神。それだと余計にモチベが下がる」
また上海が反論する
ソウルは”じゃあお前が案だせや”みたいな感じで上海を見ている
こっわ
「……そうあるなぁ…うん。我がブレイクタイムを決めるある!そうすれば平等よろし!」
「却下」
全員の声が揃った。まぁそりゃそうだわ
「あいやっ!?それなら休憩なんかなしある!!普通に限界超えて働け!!!」
荒ぶってる荒ぶってる。落ち着け
「なんでそうなるんですか。そもそもいつも休憩の邪魔してくるのは上海でしょ」
ソウルもムキになりだした
「はぁ!?邪魔してねぇある!邪魔してなくても働き続けるやつはいるじゃねぇあるか!!」
上海が東京を指さした
これは完全に飛び火。ドンマイ東京ちゃん
「東京は例外ですよ。ちょっとおかしいし」
「正常です」
うわー酷い。悪気はなさそうだけど
言い方がなー…
段々と話が逸れてきた
トントンっと横から靴を軽く蹴られた
ベルリンの見た目でロンドンが目配せをしてきた
あー…はいはい
なんとなく言われてることはわかる
「論点がズレてきていますよ。雑談なら会議後にしてください」
これでしょ
さすが俺、すごい演技力だわ
上海は膨れっ面で座り直した。ソウルは申し訳なさそうに会釈した
ニューヨークはチラッとこっちを見る。
なんか不思議なものを見るというか…え?気づいてる?
若干落ち着いた雰囲気になり、また会議がスタートした。
会議が終わって現在午前12時半。
仕事場には今入れ替わりが起こってる3人しかいなかった
なんとかバレなかった…はず…多分…十中八九
「今日は…泊まりですね」
「だね〜…」
なんかもう違和感も感じなくなってきた
それより仕事がきつい
「さて。風呂入るか」
一瞬空気が固まった
「ちょぉっと待ったァ!!!」
「私もそれは…」
ロンドンが目を伏せた
さすがに風呂までは嫌らしい。それもそう
人の体を隅々まで見ることになるし見られることになる
普段ストレスからセフレの関係を持っている俺でも抵抗が…
いや待って。
今ならロンドンに仕返しするチャンス…で、は?
なにせ俺の身体はベルリンだし。ベルリンならそんな変な感情もないだろうし。
ロンドンは俺の身体じゃないから報復することも出来ない
なら…
「…まずは順番を決めないと」
そう言うと、ロンドンが俺を見た
明らかに”何言ってんだ”という感じだ
「む、それもそうか…」
「ちょっと待ちなさい。どうしてそうなるんです?」
「なにがだ?」
「いえ、なにがって…貴方たちプライバシーとか恥じらいとかないんですか?」
「え〜もしかして恥ずかしいのー?ロンロンって意外とピュアだったり〜?」
弱点は思いっきりつついてやる
「……あなたほど豪快で大雑把ではないので」
言い返してはいるが内心は焦ってるだろう
これは面白い
ベルリンの姿のロンドンの肩に手を置く。更に追い討ちをかけてやろう
「大丈夫大丈夫…お兄さん、身体は素手で洗うタイプだから!」
「やめなさい」
ダメだし食らった。ちょっとやりすぎたかなー…
「しかし明日は朝から会議だからな…。夏場だし、入らない訳には」
「……わかりました。では先にパリと行ってくるのでベルリンは後でも?」
ん?あれ?
「え?まぁ…構わんが」
脱衣場。夏場だし、熱気もすごくているだけでも汗をかく
さすがにこの時間は比較的すいてるし誰もいなかった
「ここクーラーつかないかなー…ロンロン上に頼んできてよ」
「無理ですよ。ただでさえこの施設予算が半端ではないので」
そう返しながらロンドンはビニール片ナップ巾着からハチマキのような布を出した
え?
「はい。付けてください」
「え?え?」
「脱衣も洗身も私が行います」
そ、そうきたか…
仕方がない。これで拒否すればそれこそ変態だ
「えぇ〜…いいけど…それ…素手?」
「そんなわけないでしょう?いいから早く付けてください」
グイッと目隠しを押し付けられる
「はぁ…はいはい」
脱衣場のベンチに座り、目隠しをつけた
視界が暗くなる
なんも見えないし…これ逆に危ない気がする…
ネクタイが外された。ベストのボタンを引っ張られてる感覚がある
やばい…傍から見れば完全に変態だわ
いや、誰も来ないよな。この時間だし
ベストが脱がされてワイシャツのボタンを3つほど外されたくらいの時
ガチャ
扉が開く音がした。勘違いであってほしい
「あ」
ベルリンの声がした。いや、正確にはロンドンが言ってる
数秒沈黙があっただろうか…
「……ごめんなさい。失礼しました」
「ちょっと待っ…東京!」
扉の閉まる音が聞こえる。
うわぁ、東京ちゃんだったかー…
最悪…。いや待って?俺関係ないじゃん。
俺は今ロンドンの姿だしロンドンはベルリンの姿だから特に誤解はされてない
はぁー…よかったぁ
「パリ。明日東京に説明しますからね」
「え?」
オマケ
入れ替わり説明後
東京「なるほど」
ベルリン「色々すまんな…その、混乱しただろう」
東京「まぁ…多少は」
ベルリン「……そ、そういえば最近はちゃんと寝れてるか?」
東京「はい」
ベルリン「…………東京。なんでそんなに距離をとるんだ…」