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「雫さん、こんにちは」
「希良君!」
僕は、パンを並べる雫さんに声をかけた。
「カフェ2人いい?」
光平は頭を下げた。
「希良君のお友達? こんにちは」
「こんにちは、光平です。はじめまして」
「光平君ね。あ、じゃあ、2人ともパンを選んでね」
「僕は……メロンパンと塩パンで。あと、カフェオレ」
「は、早! 決めるの早すぎない?」
光平が言うと、雫さんが笑った。
僕達は、注文を済ませてからテーブルについた。
「さっきの人? 雫さんって言うのか?」
「そう。雫さんが……僕の大切な人」
「そっか……ちょっと驚いた。希良は年上が好みだったんだ」
「年上が好きっていうわけじゃない。好きになった人がたまたま年上だっただけだよ」
でも正直、年上の人を好きになったのは初めてだったけど……
「なんか希良が好きになるのわかる。綺麗な人だし、ちょっと色っぽい。すごくいい女だ」
「お前な、そういう言い方止めてくれよ。変な目で見るの、絶対ダメだからな。あの人は、優しくて本当に素敵な人なんだ。一緒にいたらさ、すごく楽しくて幸せな気持ちになれる」
「へえ~じゃあさ、希良は、雫さんのことを1ミリもそういう目で見てないってこと?」
光平は、意地悪そうに聞く。
「そ、そりゃ……僕だって男だからな。雫さんと……って思ったりも……」
ニヤニヤしてる光平。
「希良」
「ん?」
「お前さ、雫さんの話をしてる時、嬉しそうだな」
「え?」
「最近大学で元気ないけど、今はすごく幸せそうだ」
光平……
そっか、僕は、雫さんにフラレた。
フラレたのに……
雫さんに会うと自然に笑顔が出て、気持ちが元気になってる。
たとえ報われなくても、好きな人をただ好きでいられることは、もしかしたらものすごく幸せなことなのかも知れない。
無理に雫さんを忘れる必要はないのかなって……ちょっと思った。
ここに来れば雫さんに会える。
雫さんの可愛い笑顔を見られたら、きっと僕は元気になれる。
勉強だって、バイトだって頑張れる。
雫さんの笑顔には、それだけの魅力とパワーがあるんだ。
それに、店長さんが作る美味しいパンもカフェオレもあるしね。
落ち込んでた気持ちが、亜美や光平の後押しのおかげで少し和らいだ気がする。
いつまでもウジウジして落ち込んでちゃダメだよな。
雫さんやみんなにこれ以上心配かけられないし、僕も笑顔でいなきゃいけない。
自分自身のためにも――
理科の先生になる夢と、もう一度ちゃんと真剣に向き合っていこう。
勉強もバイトも頑張って、毎日の生活をハリのあるものにしたい――そんな新たな決意が僕の胸を熱くした。
いつか必ず、胸を張って雫さんに嬉しい報告ができるように、今はまだ遥か遠くにある希望に向かって……
ただ真っ直ぐに、1歩1歩、進んでいきたいと思った。