テラーノベル
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2026/02/17
※モブが出てくる
py視点
家族全員で街に来ている。
お母さんのポーションを売るのと、日用品の買い出し。普段はお父さんとお母さんの2人でしていることだけど、たまにはついて行きたい!とAkiraさんとふたりでお願いして連れてきてもらった。
sh「じゃあ、俺ちょっとあっちに顔出してくる。」
sm「うん、広場の方で待ってるから」
sh「ん。行くぞAkira。」
Ak「はーい!」
僕はお母さんと広場の噴水に腰をかけて2人を待つことにした。
たくさんの人が行き交い、色んなところからいい匂いがする…ふと、ひとつの屋台の方に視線が吸い寄せられた。
「…!クレープ…」
sm「ん、食べたい?」
「えっ、いいんですか…?」
sm「ああ。あとでAkiraにも買ってやらないとな」
「…!やった!ありがとうございます!」
僕はそっとお母さんの手を握る。お母さんはそれに応えるように優しく握り返してくれる。
不器用だけど優しい、そんなお母さんが好きだ。
「わぁ〜…!美味しそう…」
店員「いらっしゃい…ませ…!?」
sm「何がいい?」
いちごやチョコ、黒ごま…
僕は赤い果実の方を指さした。
「これがいいです!」
sm「ん、じゃあいちごクレープひとつ…」
店員「……あ、あの…っ!」
sm「…?どうかしましたか。」
店員「その、子…」
「ぇ…?僕、ですか…?」
屋台から身を乗り出し、僕をじっと見つめる女の人。
黒くて長い、ひとつにまとめられた髪、三角巾の中からさらりと垂れた、白のワンポイント。
sm「……」
店員「…✕✕!✕✕なの!?」
屋台からかけ足で出てきて、僕に抱きつく女の人。
知らない。知らない名前と、知らない人。
急な出来事に脳がフリーズする。
店員「あぁ…!生きてたのね…!✕✕…!嬉しい…」
「あ…の…」
店員「あなたを捨ててしまってからずっと後悔してたの…っ!生きててくれて嬉しいわ…!ねえ✕✕、私と暮らしましょう?」
頭の中が徐々に温度を失っていくような感覚。
直感的に理解した。
この女の人が、僕の本当の母親なんだ。
僕に似た髪と肌の色。もしそうならば、僕はまさに母似と言われるような見た目だろう。
本当なら、喜ぶべきなのだろうか?
僕にはこの人の肌のあたたかさが、妙に冷たく感じた。
…この感情は、なんだろう。
sm「…ピヤノ。」
お母さんの声。
僕と”お母さん”の両方を見つめる、感情の読み切れないアメジストと目が合った。
sm「…俺たちは、お前の意見を尊重する。」
「っ……」
sm「でも…これだけは覚えててほしい。」
sm「俺たちは、ピヤノの家族だ。」
「!」
僕は唇を噛んだ。
……迫られた2択。僕は……
僕には、迷いなんてなかった。
「…ごめんなさい」
僕は、泣きつく女の人の体から距離を取るように、肩を押して静かに離す。
「…僕は、あなたとは暮らせません。」
店員「えっ…そんな、なんで…どうして…?」
「恨んでるわけではありませんよ。むしろ感謝しています。」
僕は立ち上がる。
ずっと考えていた。
赤子の頃の記憶があるわけじゃない。「拾ってくれてありがとう」なんて言ったこともない。
…ずっと知らないふりをしていた。
でも、わかる。僕はもう守られるだけの子供じゃない。
似ているなんて言われない肌、目の色、髪の色、体格。そしてお母さんは男性で、子供は産めない。
僕もAkiraさんも拾われた子だってことは、とっくのとうに理解していた。
森で拾った、誰の子かも分からない赤子。やろうと思えば召使いにだって、見殺しにだってできたはずだ。
それでもお父さんは僕たちに狩りの術を教えて、お母さんは僕たちに教養や知識を教えた。
「最高の両親に出会えたので。」
…自分の命を顧みず、僕たちを幾度となく危機を助けてくれた。
僕たちのために、本気で怒り、泣いてくれた。
「もう、明らかでしょう?」
そこに血や遺伝子の繋がりが無かったとしても…
「…僕は、スマイルさんの子供です。」
お母さんの手を握る。
店員「…そっか、そうよね。」
店員「捨てといて、都合よく一緒に暮らそうだなんて、そんな事、高望みだったわよね。ごめんね。」
店員「あ……名前…そうよね。ねえ、最後にお名前、教えてくださる?」
「ピヤノ、です。」
店員「ピヤノ…いい名前ね。あなたが親かしら?」
sm「まあ…はい。」
店員「この子を育ててくださって…ありがとうございます。この先もどうか。頼みました。」
sm「…はい。……行こう、ピヤノ。」
「はい…」
お母さんの手は暖かい。
やっぱりまだまだ大きく感じる手を呆然と見つめていた。
sm「っ…ふふ…」
「えっ、ちょ…なんで笑ってるんですか…!?」
sm「いや…スマイル”さん”って…はは…っw」
「だっ!だって…言い慣れてない、ですし…っ」
sm「はぁ…っ…俺さ、シャークんと話してたんだよ。もしAkiraとピヤノが本当の親と出会ったらどうしよう。って。」
「そ、それは…」
sm「2人の意見を尊重しようって事で落ち着いたし、さっきピヤノが店員さんに抱きつかれた時も少し身構えてた。2人ももう守られるだけじゃない、2人には決める権利があると思う。……でもさ。」
sm「10何年も育てたんだ、俺…俺たちだって、2人の親だ。…そう思うのは、彼女に失礼だったかな。」
お母さんは遠くを見つめる。
その先には、あのクレープの屋台があった。
「…あたりまえ、ですよ」
「多分、これはAkiraさんも同じようなこと言うと思うんですけど、」
お母さんの手をぎゅっと握る。
「生まれがどうであれ、僕はお父さんとお母さんの子供ですよ。」
sm「……そっか。」
たくましい手が僕の帽子をとって、頭を優しく撫でる。
sm「ピヤノがそう思ってるなら良かった」
普段笑わないお母さんの、優しい笑み。
僕もつられて笑った。
クレープは食べられなかったけど、それ以上に大切なものを得た気がした。
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