テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
90
ネコの退屈
真選組の女中の朝は早い。早朝3時頃にセットしたアラームを消し、真選組隊士の朝食を用意することから始まる。
早朝4時、朝食の材料を確認し約200人分の朝食を作る。
早朝5時、昼食と夕食の相談を行う。
早朝6時、稽古が始まり、空腹のまま来た隊士たちへ朝食を提供する。
その後、残った朝食を他の女中たちと分け合いながら、胃の中に入れる。
次から次へと仕事が舞い込み、女中の休みはほぼないと言っても過言ではない。
「死ねェェエエ工!!!!!土方ァァァァ!!!!!!」
ヒューーーーン ドカァァァアン
いつものように副局長の部屋から爆発音がするのが聞こえる。
その後から、副局長の声がこだました。
「総悟ォォォォォォォォ!!!!!
てめぇぇぇァァ!!!!!待ちやがれェェ!!」
まーたやってるよ、とほかの女中が呆れるため息を零しながら、洗濯を干している。
パンパンっと敷布団をシワを伸ばす。
「真夜ちゃん、ここはいいから中江さんの手伝いに向かってくれるかい?」
真夜、と呼ばれた彼女は、整った顔立ちをしているにも関わらず、前髪が目にかかっており、どのような表情をしているのかを知ることが難しい。
「松田さ、んは、大、丈夫で、すか?」
途切れ途切れに、心配する声をかける真夜に松田は、優しい笑顔を浮かべた。
「大丈夫よ、真夜ちゃん。何かあったらすぐに呼ぶからね。」
真夜はこくりと頷き、中江という女中の元へと小走りで向かった。
そんな彼女を松田は心配そうに、中江の方に向かう彼女を見ていた。
「大丈夫かしら、真夜ちゃん。」
そうぽつりと心配の念を零した。
その姿は、母親のようにも見えた。
後ろから副局長の声と一番隊隊長の声を聞きながら、ため息を零した。
「これは、真夜ちゃんが避けるのも納得だわ。」
その声が聞こえたか、2人の動きが不自然にピタリと止まったような気がしたが、気のせいだろう。
_____________________________
中江に、買い物を頼まれた真夜は1人、かぶき町に出ていた。
賑わうかぶき町に酔いしれないように、大江戸マーケットに向かって歩みを進める。
買い物袋から買ってくるリストを確認していると目の前に知っている人とすれ違った気がした。
真っ黒な着物に椿の花が刺繍された、サングラスをかけて、下駄を履いていた青年だった。
真夜はバッと振り向くが、その青年はいなかった。まるで、狐に化かされたような気がした。
気のせいか、と思い、真夜は大江戸マーケットへ向かう視線を戻し、重たい足を進めた。
「いる訳、ない、よね。」
怯えたような声を零しながら、真夜はその場を去った。何となく、早く、屯所に戻って真選組隊士たちの顔を見たくなった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!