テラーノベル
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その夜、向井から電話がかかって来た。
向井ー翔太くん、ごめんやで。
渡辺ー・・。
向井ーもう、言わへん、コンテスト出さへん。
渡辺ー普通の出せばいいじゃないか。
向井ーそやな、考えてみる。
渡辺ー晩ご飯食べたかった。
向井ー来てくれたら作ったのに。
渡辺ーまだ、怒ってる。
向井ーほんま、ごめんな。
渡辺ー来週は食べに行く。
向井ーありがと、美味しいのん作るわ。
渡辺ー楽しみにしとく。
向井ーほな、ほんまに、ごめんな。
渡辺ーん。
曲がったヘソは簡単に戻らない。
今日は晩ご飯を食べに行かなかった。渡辺はサラダをつついてる。
途中だけど、食べるのをやめてしまった。美味しくない。
向井の晩ご飯が恋しい渡辺だった。
向井は暗室にいる。
たくさんのフレーム。
みんな渡辺を入れている。
1枚1枚見ていく。
どれもこれも「綺麗」だ。
いいじゃないかと思ったが、これくらい、ちょっと腕のあるカメラマンなら撮れる。
もちろん、向井にしか撮れない渡辺だと思っている。
でも、そのコンテストの過去の入選作品を見ると、違うのだ。
撮った人の気持ちが伝わってくる。
ただ「綺麗」なだけじゃない。
「愛しい者」を撮ってる。
向井は、「綺麗」に撮ることがいいことだと思っていたが違った。
渡辺という自分にとって、大事で愛しい人を撮ったつもりだったが、「綺麗」に撮ろうとしているのが分かる。
狭い暗室で座り込んでしまった。
服を脱いで、なお「綺麗」で「愛しい者」を撮りたい。
だから、ヌードモデルを頼んだがダメだった。
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