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準備をしたっちゃしたけど、いざ行くとなると、やっぱ少し緊張というか、一生慣れないであろう負荷が心に掛かる。
まあ、それも荷物に詰め込んだ。家にはにはもう戻らない、彼女も戻らないから。
道を進む、まだ見知った道だ、金曜日、夕方、その時間帯は彼女が唯一私の散歩に付き合ってくれた。
散歩が大好きな私からしたら、大好きと大好きが同時に起きる、大好きの超大作だった。
夕日に左手をかざす。右手をポケットに突っ込み、写真を掴む、取り出す。
彼女が夕日を手にしている写真が出てきた。まあ、比喩的なやつだ、遠近を利用した。くだらないギャグとも言えよう。
もう何時間が過ぎようとしていた。とうに夕日は消え、私は寝床を探している。
ふと耳を澄ますと、スズムシ達の話し声、風の温厚の中に、川のせせらぎが聞こえてくる。
寝床の準備を終えた。川の勢いは強くなく、でも水筒の口を入れると、するすると入っていく、そんな勢い。
だが、何故ここまでおだやかな川なのにせせらぎが聞こえて来たのかが分からない、話し声も優しさも幻聴で、川の発見も単なる偶然なのかも。
夏の終わり、朝は寒いと思っていたが、思い込みだったな、と、朝を迎えて思い返す。寝床を畳んだら、出発だ。
私は、えっと、あぁ、ヘッドホンを耳に当てた、ヘッドホンだったはず、彼女はそう呼んでいた。
どこから持ってきたのかわからないが、これを使えば耳の中に音楽家がいる様で、最初は慣れなかったが、今となれば最高の道具だ。
彼女は、人間の奏でる音楽を好んだ。そうだな、本当に私と真逆だった。
植物や虫を好む私は、そういった自然が奏でる、もはや音楽とも言って遜色は無いだろう。
そう思える人間だから、人間の作る音楽には。
はっきり言って、興味がなかった。