テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
兄たちが学院へ旅立ってから、数日が過ぎた。
表向き、私の日常は変わらない。
決められた時間に起きて、
決められた時間に食事をして、
決められた範囲で魔法の練習をする。
――完璧に管理された生活。
(……息苦しい)
最近、胸の奥の違和感が増えていた。
理由は、分からない。
ただ、時折。
夜になると、
胸の奥が、ざわりと波立つ。
光ではない。
でも、はっきりとした闇とも違う。
(……なに、これ)
ある日の夕方。
庭で、短い魔法練習を終えたあと、
私はふと、足を止めた。
空気が――重い。
「……?」
護衛たちは、気づいていない。
でも、確かに。
視線を感じる。
(……誰か、いる)
背筋が冷たくなる。
次の瞬間。
胸の奥で、
闇が――微かに、応えた。
(……っ)
思わず、息を詰める。
同時に、
遠くで何かが弾けるような感覚がした。
護衛の一人が、眉をひそめる。
「……今、何か――」
「なんでもない」
私は、咄嗟にそう言った。
理由は分からない。
でも。
(……知られちゃ、だめ)
その夜。
王都の外れ。
人気のない路地裏で、
黒衣の人物が膝をついた。
「……まさか」
その口元が、歪む。
「まだ、十二歳だというのに……」
指先から、黒い魔力が霧散する。
「光だけではない」
「……闇も、確かにそこにある」
低い笑い声が、闇に溶けた。
「見つけたぞ、ルクシア・ノクティス」
王都の灯りが、
何も知らずに輝いている。
その中心で。
私はまだ、
迫り来る影の存在を、
はっきりとは知らなかった。
けれど――
運命の歯車は、
確実に、回り始めていた。