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「え」
勢いよく引っ張られた際、腕の中から滑り落ちニャオハは足元に降り立った。
そしてそのままトイレの中に引っ張り込まれ、外から隠すように体で覆われる。
視界が暗くなる。
人の体温を感じる。
え、グルグル眼鏡??
何してんだ??
これじゃまるで、私を庇ってるみたいじゃないか。
廊下の方から足音が聞こえる。
カツ、カツ、カツ…と一定の足音が近付き、そして離れていった。
…行ったか。
どうにか緑の悪魔を回避することができた。
しかし。
「…何のつもり」
こいつは何を考えてるんだ。
疑いの眼差しで目の前の人物を見上げる。
チーノは体を離しながら、廊下の方へ集中させていた意識を雪乃に向ける。
「何がや」
「…お前が私のこと無償で助けるわけがない」
何か企んでいるのだろう。
助けた代わりに何かを要求するつもりか。
そう疑い睨み上げていると、フンと鼻を鳴らし視線を逸らす。
「別に。気分や」
「…気分?そんなわけ。どうせ後から何かしら要求するつもりだろ」
「例えば?」
「…え、例えば…風紀辞めろ、とか」
「あー、ええな、それ」
「ふざけんな」
眼鏡を押し上げながら、チーノはトイレから出て行こうとする。
「え、ほんとに何もないわけ?」
「しつこいなぁ、助けてもらっといて何やその態度は。ちょっとは感謝したらどうや」
「いや、意味わからんすぎて気持ち悪い…」
チーノの意図が読めず困惑する雪乃。
「ったく、こんな事しとる暇ないねん俺は。じゃあな」
「え、ちょっとま…」
トイレから出ていくチーノを追いかけトイレから出た瞬間、
「え………」
「あ………」
一般通過男子生徒2人と目が合った。
振り返ると、男子トイレ。
男子トイレから出てきた、女子。
「………」
気まずそうな目でこちらを見る男子たち。
超絶気まずい雪乃。
あひゃひゃひゃひゃ、と笑いながら去っていくチーノ。
あの野郎………。
チーノを睨みながら、拳を握り込む。
これが狙いか、あいつ。
私を辱める為の罠か。
助けるフリして狙ってたのか。
まじ許さん。ぶっこ◯す。
「ニャオハ、行くよ」
足元にいたニャオハに声を掛け、ピキピキと青筋を立てながら、その場から逃げるように立ち去った。
「………」
ニャオハがずっと、ゾムが通り過ぎていった方向を見ていたことに気付かずに。