コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
🐙が気晴らしにお散歩する話
・rbru要素を含みます
◇快晴
ふと、たまに思ってしまう。彼が愛しているのは本当に俺なのか、と。記憶を失う前の俺をも知っている彼だから、もしかしたら俺だけど俺ではなくて、また違う星導ショウなのかもしれない。そう思うと夜もよく眠れない。
「はぁ…」
最近は目元に深く隈を作って生活している。
以前、何かしらで悩んでいた時にまた同じように夜も眠れず、隈を作っていたら、彼が一緒に寝ようと誘ってくれたのを思い出した。その日は前日のことが嘘かのようにぐっすり眠れたのをよく覚えている。
今回もそれで解決出来ればいいのだが、生憎悩みの原因は俺の思い込みではあるのものの、彼にある訳で。
そんな彼と共に眠ってしまったらいつ口を滑らすか分からない。極力この悩みは腹の中に溜めておきたい、そう思っているから尚更。
「まぁいいや…」
一旦全てを諦めるのも大事、誰かから貰った睡眠薬を少量含み、脳内をすっからかんにして気絶するように眠った。
朝、といっても時刻はもう既に正午を過ぎている。カーテンの隙間から差し込む光から見て今日は快晴だろう。こんな日には出不精の彼の手を引き、半ば強制的に散歩するのが好きだ。
「俺だけでも行こっかな」
以前、彼が好きだと言ってくれた香水を振り、少し暖かくなってきたこの季節に適した洋服を身につけ外に出た。
思った通りの天気でなんだか気が明るい。ここに彼がいたならば更に気分は上がっていたが、今は少し彼のことを考えるのをやめにしよう。
まだ少し冷たい風と、それに見合わない暖かい陽、人通りの少ないこの道だからこそ堪能出来るこの空気感が心地良い。
「ふぅ…」
こんな感じで一息つくのもいいかもしれない。
そんなことを思った3月だった。