「来週吹奏楽祭だから体調には気を付けてくださいね。あ、あと最近不審者が出ているみたいなので必ず誰かと帰ってください」
顧問の話が終わって部活が終わる。
外は暗く、季節は肌寒い冬。
部室の中は暖房が効いていて暖かかった。
「陽葵帰ろー」
いつも一緒に帰っている仲の良い友達のところに駆け寄る。
「ごっめん星奈。うち今日塾で咲喜と帰るわ」
胸の前で手を合わせる陽葵を横目にそっかー塾がんばってね、と一声掛けて他の子にも一緒に帰ろうと尋ねる。
「ごめん今日親迎えに来てるから」
「うちそこにあるバス停で帰るから…」
その他もろもろ出てくる帰れない理由。
ため息をついて諦める。
私ってこんなに友達少なかったっけ?笑
いやいや、部活終わるの遅かったし他部の友達みんな帰ってるから、…
ま、いっか、一人で帰ろう。
下駄箱でみんなと会うのが気まずくてゆっくりと階段をおりる。
手すりの冷たさを体感しながら、ゆっくりとくだる。何してんだろって思う。
「星奈?」
後ろから突然声がしてびっくりしつつ振り向くと同じ部活のかずやがいた。
今年同じクラスになったばっかりだ。
もう半年は一緒のクラスだけれども笑
「やっほかずや」
「一人でなにしてんの」
「そっちこそ」
水筒を大切そうに抱いた彼は息を整えながら私に言った。
「俺さ水筒忘れて取りに帰ってたらみんな行っちゃった」
「ええー可哀想!私も友達と帰れなかった」
私と似てるかもな、とくすっと笑っている私に彼は続けた
「一緒に、帰ってくれませんか」
なんで慣れてない敬語?とおかしくて、それがちょっと楽しくて言った。
「ちょっと噛んだでしょ?」
「うっせー」
「いいよ、帰ろ」
「よっしゃ」
お互い軽く笑いながら下駄箱へと向かった。
「_チューバってさ、大変でしょ」
「でかいもんな俺は余裕」
「へえ、かっこよ」
「だろ」
適当に返事をしたつもりが逆効果で彼を調子に乗らせてしまった気がする。
でも、それでもいっかと思える人だった。
「え、もうかずや家着いたの」
「結構歩いたけど星奈家遠くね?」
「いやー、ここから2分くらいだけどさ」
「しゃーねぇ。着いてってやるよ!」
「えっいいの?!」
仕方ねえなとニヤニヤ笑うかずやに甘えて
2人で外灯に照らされた道を歩いた。
変な気持ちになった、まるで、恋愛漫画を読んでいる時の。アレ。
この気持ちに気付くのは、まだ少し先。
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