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放課後。校門をくぐった愛梨は、いつもの道を急ぎ足で歩いた。

今日はもう、余計な寄り道をする気力なんてなかった。


玄関で靴を脱ぎ、部屋に飛び込むなり、愛梨は鞄を投げるように置く。

そしてすぐにテレビのリモコンを掴み、電源を入れた。


画面が点くと、そこには――

自分の姿があった。


いや、正確には「自分ではない自分」。

淡いピンクの髪を揺らし、ステージでマイク型の杖を振り、笑顔で歌っている「マジカル・アイリーン」の姿。

画面下にはニュース番組のテロップが流れ、その横にはSNSで拡散された映像の文字。


『今、SNS中心にこのライブ映像が話題となっています』


アナウンサーの穏やかな声が、愛梨の心臓を容赦なく突き刺す。


「ちょっ……な、なんで私が出てるの!」


思わず声を上げると、部屋の隅でポシャン、と小さな音がした。

視線を向けると、パステルグリーンのマスコット――パララが、どこか誇らしげに胸を張っていた。


「あの動画、僕がやったプリ~」


「えぇっ!? パララがやったの!?」


「そうパラ! 僕が君の動画を~撮影したパラ~! それを、マジカルカメラでアップ、したパラ〜!」

パララは満面の笑顔。


「そ、そんなので……出せるの?」


「皆に見て欲しいパラ〜」


その瞬間、テレビからではなく、どこからともなく澄んだ女性の声が響いた。


『初めまして。私はラッキーランドの女神です。メガミーンです』


「わ、わわわ……私、望月愛梨です!」

愛梨は慌てて名乗る。


「えぇ、よく探し出しましたね。ラッキーランドの希望を」


「ラッキーランドって……パララの住んでるとこ?」


「パラっ!」

パララは元気よく頷く。


メガミーンと名乗った女神の声は、どこか切なく、それでも強い響きを帯びていた。


「愛梨、聞いてください。ラッキーランドは皆、幸せに暮らしていました。しかし……ある日突然、“ブラック・クローバー”と呼ぶ恐ろしいものが現れ、私達の世界は真っ暗な夜になってしまったのです。マスコットの仲間たちはクリスタルに閉じ込められ……勇敢なホワイトが戦ってくれましたが、全ての魔力を使い果たし……」


そこで、女神は小さく息を吐いた。

「……この話は、また今度にしましょうか」


「えっ……」


「ですが、言い伝えがあります。真っ暗に包まれし時、マジカルキーを手にした救世主、魔法少女が光で闇を照らす……それこそが愛梨、貴女です。貴女はブラック・クローバーの幹部達がこの世界を鬱にする計画を、止めなければなりません」


「えぇっ!?」

愛梨とパララの声が同時に重なった。


女神の言葉は続く。

「愛梨。貴女は“モングー”を浄化したあと、マジカルキーに似た鍵を手に取りましたね?」


「あぁ……これですか?」

愛梨はポケットから、小さく輝くダイアのキーを取り出す。


「パララ。それを付けてみてください」


「分かったパラ!」

パララは首元――いや、体の上部にあたる場所にキーをぱちんと取り付けた。


「君に届ける、ハートパラ~!」

軽く回転しながら、パララはポーズを決める。


「わぁ、かわいい……」

愛梨は思わず笑顔をこぼす。


「ファンサしちゃったパラ〜! ふふ」

パララはご機嫌だ。


「ブラック・クローバーの計画を止めるため、ラッキーランドを元に戻すため、そのキーをすべて集めてほしいのです」


愛梨は真剣に頷いた。

「は、はい!……が、頑張ります」


だが次の瞬間、女神の声の調子が少しだけ鋭くなった。

「そして、あと1つ。パララ。あなた……アイリーンのステージの動画を、ネットにアップしましたね? ステージ動画を勝手に撮影するのは禁じられています。罰として――羊カットです」


ぱふん、と乾いた音とともに、パララの毛が一瞬でモコモコのボサボサに変わった。


「パラ!?」

鏡を覗き込み、パララは絶望の声を上げる。


「へぇ……」

愛梨はどこか冷静に眺めていた。


「愛梨、マジカル・アイリーンと世に知られてはなりません」


「……理由、聞いていいですか?」


「ブラック・クローバーのボスは恐ろしい存在。何が起きるか分かりませんから」


「そ、そうなんですね!」


「魔法少女になるということは、それだけ大変なことなのです。安全に行動してくださいね」


「は、はい!」

愛梨の声には、緊張と決意が入り混じっていた。


鍵の魔法少女アイリーン

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