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⊂(ᴖ ̫ᴖ )⊃
第一話
中身は蓋を開けてみなければ分からない
⚠️Fjsw×Omr⚠️
この話は創作です。
藤澤と大森の関係性に、作者の特別な意図はありません。
展開を進めるための演出ですので、ご理解下さい。
このお話は “甘々な藤澤と大森” という雰囲気ではありません。
お互い傷つけ合いながら愛の形を探っていく物語になります。
苦手な方は注意してお進みください。
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オケの収録終わり
藤澤は、忙しいスタッフの助けになればと機材の撤収を手伝っていた。
エフェクターがいくつも詰まったハードケースを両手に持つと、地下の機材室へ向かう。
階段を降りて、部屋をいくつか通過すると機材室の前に到着した。
両手に持っているハードケースを置いてから、ドアノブを捻る。
しかし、鍵がかかっているのか開かない。
「…あれ」
藤澤は困ってしばらく立ち尽くしたが、仕方が無い。
藤澤は機材室に片付ける予定だったハードケースを持ち直すと、スタジオに戻った。
待機ブースに入ると、藤澤は近くにいるスタッフに声をかける。
「薫さん…」
女性スタッフが顔をあげると、ハキハキとした様子で返事をする。
「はい」
藤澤は何となく申し訳なさそうな雰囲気で話を続けた。
「あ…あの機材室空いてなくて…これ」
ひょいとハードケースを持ち上げるとスタッフは、あっと口を開いた。
「空いてなかったですか?すみません」
「いや全然…」
藤澤は気にしないでという意図で首を振った。
女性スタッフが続ける。
「手間かけました
そこ置いといて大丈夫です
あとで私が運んどきます」
「あ…じゃあ、ここに」
藤澤は食い下がるのは、むしろ迷惑かと思ったのでハードケースを地面に置いた。
「ちなみに藤澤さん、もう上がりですか?」
薫がシールドケーブルをクルクルと畳みながら聞いてくる。
「あ、はい
もう上がりです」
「あ…じゃあ上がりついでに
これ、大森くんに渡してくれます?」
薫が腕を伸ばすと、机の上のポーチを手に取った。
それは、大森がいつも持ち歩いているポーチだ。
中には、マヌカハニーや粉状の喉薬などが入っている。
「あ、忘れてる…渡しておきます」
「助かります
じゃ、お疲れ様です」
薫はそう言うと、お辞儀をしてからスタスタと部屋を出ていった。
「お疲れ様です」
藤澤もペコリと頭を下げる。
手元のポーチを眺めると、大森の所へ向かった。
今、大森は別の曲の歌入れをしているので藤澤とは違うスタジオにいる。
と言っても同じ建物内なので、すぐに会える。
藤澤はエレベーターに乗り込むと2階のボタンを押した。
大森がいる2階に到着すると、廊下を歩く。
藤澤はコントロールルームの重たい扉を開けると挨拶をした。
「うんしょ、お疲れ様ー」
すると、中にいたスタッフが一斉に振り返った。
藤澤が違和感を感じた瞬間、スタッフが顔を強ばらせながら挨拶をしてくる。
藤澤は、妙な雰囲気に辺りを見渡した。
すると、ミキサーの前に座っているエンジニアに視線が引き寄せられた。
彼が、素早い動きで録音ブースの音量をゼロにしたのだ。
それにより録音ブースで話していた大森の声は、こちらの部屋には聞こえなくなった。
「あれ?ヨネさん…
なんで音量絞ったの?」
藤澤は扉の前から移動しないまま、疑問を口にする。
エンジニアの米塚は気まずそうに頭を搔くと、歯切れ悪く答えた。
「あ…大森くん、ちょっと機嫌悪くてね」
藤澤は笑顔のまま答えた。
「あ、そうなんだ
全然戻してもらっていいよ」
「い、いや」
口ごもる米塚に藤澤は被せるように、言い放った。
「戻してもらえる?」
藤澤の言葉に米塚は足元を見つめながら、録音ブースの音量を上げた。
すると、録音ブースにいる大森とスタッフの談笑が聞こえてくる。
『へぇ…大森さんも大変ですね』
『そうでしょ?りょうちゃんに関してはサポートなんてもんじゃないから
もはや補助輪つけて走らせてるみたいな』
大森の声が聞こえた瞬間、コントロールルームにいるスタッフ全員が縮こまった。
対して録音ブースに大森と話しているスタッフは、思う所があったのかフォローを入れ始めた。
『あはは…
あ、でも…すごく優しいじゃないですか
あ、さっきだって片付け手伝ってくれましたよ』
『へー、そんな事してんの
無駄に頑張っちゃって
りょうちゃんって感じ』
『いや…そんな事は…』
火に油を注いでしまったスタッフは消え入るような声で答えた。
しかし、すぐに立て直して話を続ける。
『そ、そんなこと言っても好きだから付き合ってるんですよね』
『あっはは』
大森が乾いた声で笑った。
コントロールルームにいるスタッフは悪い予感を察知すると顔を歪めた。
『そんな訳ないじゃん
なんか付き合おうって言われたから』
この言葉だけで十分、凍っている空間に大森はさらに一撃を食らわせた。
『まぁ、正直めんどうだっただけ
バンドメンバーに好きとか言われてもね』
そこまで聞くと藤澤はコントロールの中を歩き始めた。
スタッフが見守る中、録音ブースの扉を開ける。
扉が開く音につられるようにスタッフと大森が藤澤の方を見た。
その視線の中、藤澤はにっこりと微笑む。
「おつかれ」
スタッフは見た事もないほど目を見開くと、そのまま固まった。
大森も、強ばった笑顔のまま動きを止める。
対して藤澤は笑っていない瞳のまま、大森を見つめると口を開いた。
「何か言うことある?」
大森の瞳は小刻みに揺れていたが、スっと動きが落ち着くと藤澤を見つめ直す。
「りょうちゃん、おつかれさま」
そう言うと、首を傾げて可愛らしく笑った。
「どっから聞いてたの?」
藤澤は、大森の心を凍らすほどの軽蔑の視線を向けると言い放った。
「どこから聞いててもアウトって事くらいは分かるよね」
大森が口を固く結ぶと、不服そうに藤澤を見つめた。
数秒の沈黙の後、ボソッと言う。
「…思ってないよ」
藤澤は答えないまま、大森にポーチを手渡した。
「…え」
「忘れもの」
大森がポーチをそっと受け取る。
「…ありがとう」
「元貴の方が今日、早めに家いるよね」
大森は瞳だけを動かすと、藤澤を見つめてこくりと頷いた。
「俺もできるだけ早く帰るから
ゆっくり話そうか」
藤澤が肩を強めに掴むと、大森は体を強ばらせた。
「分かった?」
藤澤が顔を覗き込むと、大森は口角をあげて微笑む。
「う、うん…わかった」
「じゃ、またね」
藤澤は手を振ると、録音ブースから出ていった。
最後にコントロールルームいるスタッフに挨拶をする。
「僕、先に上がらせて頂きます
お疲れ様でした」
声をかけられたスタッフ達は、全力で頷くと口々に挨拶を返した。
藤澤が出ていくと、水を打ったように間が静まった。
しかし、録音ブースにいたスタッフは罪悪感に駆られて口を開いた。
「家に帰った後でも…謝るのは遅くないと」
大森の瞳が素早く動くと、スタッフの瞳を鋭く貫いた。
なので、スタッフは言葉の途中でも口を閉ざすしかなかった。
「よし、じゃやろうか」
大森が、指揮を執るように手を叩いた。
「ヨネちゃん、Bの頭からよろしく」
指示を飛ばされた米塚がオケを流すと、コントロールルームは大森の歌声で包まれた。
この声を聞いていると、多少の性格の悪さはどうでも良く感じてくる。
それほどの才能が大森にはある。
しかし、以前の大森を知っていた者はどうしても違和感を感じていた。
あんなに仲間想いだったのに
最近の大森は、藤澤をこき下ろす事に夢中に思えた。
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ーーーー
時刻は夜の11時を回った頃。
藤澤は、やっと全ての仕事を終わらせた。
帰宅する事を大森に連絡してから、マネージャーの車に乗り込む。
「お疲れ様です」
運転手に座るマネージャーがペコリと頭をあげる。
「うん、お疲れ様ー」
シートベルトを着用すると、藤澤を乗せた車はゆっくりと発進した。
「…最近」
マネージャーが口を開く。
「お仕事立て込んでますよね」
「そうだね、ありがたいよね」
藤澤がそう言うとマネージャーがバックミラー越しに、こちらの様子を伺った。
「…どうしたの?」
藤澤から聞いてみると、マネージャーは少し申し訳なさそうな雰囲気で話し出した。
「…その、お疲れじゃないかなって」
「ううん、そうでもないよ」
マネージャーの運転する車が、信号に従って停車した。
静かな空間の中でウィンカーの音だけが、カチカチと響く。
藤澤が窓に目線を移すと、再びマネージャーが話し出した。
「その…相談とかあったらいつでも頼ってください」
藤澤は何となく、今の大森と藤澤の関係を心配しているんだろうなと予想がついた。
「…ありがと、でも大丈夫」
藤澤は、バックミラー越しのマネージャーに目線を向ける。
「ちゃんと考えて付き合ってるから
元貴は優しいよ、少し脆い所があるだけ」
その回答にマネージャーは、微かに頷くと小さく呟いた。
「…そうですか」
それからは会話らしい会話もなく、車は藤澤の自宅に到着した。
マネージャーが車を停止させると、藤澤の方を振り返って言う。
「今日もお疲れ様でした
明日は11時に迎えに行きます」
「ありがと、お疲れ様ー」
藤澤はニコリと笑うと、扉を開けて車から降りた。
マンションの自動扉を抜けて、エントランスに入る。
エレベーターを呼び出すためのボタンを押すと、到着していた箱が開いた。
乗り込んで、8階のボタンを押すとエレベーターが上がっていく。
藤澤は待っている間に、鞄の中にあるキーケースを探して手に持った。
帰ったらちゃんと話さないと
藤澤は、気持ちを固めると深呼吸をした。
エレベーターが8階に到着する。
藤澤は早足でエレベーターから降りると、804号室に向かった。
扉に鍵を差し込むと、左方向に回す。
もう見慣れた玄関のドアノブを持つと、引っ張るように扉を開けた。
「涼ちゃん!ただいま!!」
開けた瞬間、大森が胸に飛び飲んできた。
「うぉっ!!」
藤澤は、驚いて声を上げた。
大森が胸に顔を埋めると、グリグリと額を擦り寄せてくる。
藤澤は、後ろ手に扉を閉めながら大森の熱烈な歓迎を受け止めた。
大森が抱きついながら扉の鍵をガチャリと閉めると、背伸びをしてキスをしようとした。
「まって」
藤澤が厳しい声で、止めると大森の眉が下がった。
「…まてない」
大森が、グッと上着を引っ張ると縋るように見つめてくる。
藤澤は、大森の作る雰囲気に流されないように背筋を伸ばした。
大森の瞳を真っ直ぐに見つめると、藤澤は諭すように言った。
「その前に言うことあるよね」
大森が落ち込んだ様子で目線を落とすと、小さくつぶやくように言う。
「ごめんなさい」
藤澤は、頷くと話を続けた。
「うん、なんであんな事言ったの?」
藤澤がそう言うと、下がっていた大森の眉がすっと戻る。
藤澤から瞳を逸らすと、ぶっきらぼうに言った。
「あんな事って?」
「元貴」
藤澤は名前を呼びながら、そっぽを向く大森の顔を覗き込む。
「それ、僕に言わせる?」
藤澤が鋭く言い放つと、大森は一歩後ろに下がった。
「ごめんなさい」
しかし、一回目よりも心がこもっていないのが伝わる。
この話題を早く終わらせて欲しいという雰囲気がありありと見えた。
「僕、迷惑だった?」
藤澤がそう言うと、大森が弾かれるように顔を上げた。
大森の眉が下がると、大きく首を振る。
「だから思ってないって!!」
「じゃあ、あの時は嘘ついてたって事?」
さらに追求すると大森の唇が、もごもごと動く。
すると、大森を見つめる藤澤の目付きが鋭くなった。
「嘘つくの上手いね」
止まらない追撃に、大森の顔つきは蝋が固まるように引き攣っていく。
「…違う、そういう事じゃなくて」
大森の呼吸が早くなると、許しを乞うように藤澤の手を握った。
しかし、藤澤の瞳は氷の膜を張るように冷めていく。
「付き合うとき約束したよね?
1番大切な約束なはずだよね」
藤澤の雰囲気に引っ張られるように、大森の瞳が潤んでいく。
藤澤は、それでも言葉を続けた。
「覚えてるよね?言ってごらん」
転がるように悪くなる状況に、大森は俯くと履いているズボンを握った。
藤澤と付き合う時、一つだけ約束した事があった。
嘘をつかないこと。
藤澤は嘘に気が付きやすく、それ故に敏感だ。
だから、僕には嘘つかないで
大森は告白をした時に、その約束を受け入れた。
藤澤の手を握って絶対に守ると言った。
あの日がたった7ヶ月前だとは思えない。
純粋に素直に好きだと言えた頃。
もはや懐かしいとも思えないほどに、大森の愛は形を変えていた。
「涼ちゃんには…嘘ついてないじゃん」
大森は、言い訳でしかない言葉を使った。
その言葉に藤澤は鼻で笑うと、首を傾けた。
藤澤が怒っている時に良く出る仕草だ。
「ん?」
藤澤の身長がいつもよりも大きく感じた。
大森は恐怖を誤魔化すように、唾を飲み込んだ。
「僕に直接嘘ついてなくても、僕に関する嘘をついたらさ… それって一緒だと思わない? 」
藤澤の気配に気圧されると、大森は一歩下がって距離を取った。
しかし、藤澤は素早く大森の腕を掴むと再び近くに引き寄せた。
「あ、それとも嘘じゃないって事?
本当にめんどくさかったんだ」
大森は、すぐに首を振った。
「嘘です、ごめんなさい」
藤澤が子供を叱る時の様に背を縮めると、大森の顔を覗き込んだ。
「ね…そうだよね、嘘ついたよね? 」
「…はい」
大森が認めると、藤澤は寄せていた顔を離した。
大森を見下ろすように見ると、諦めたような雰囲気で言った。
「元貴って、大切な約束守れない人なんだ…うわーがっかり」
藤澤の呆れたような声色が、大森の心を海原のように荒らす。
瞳に滲む涙を、どうにか誤魔化そうと瞬きを繰り返した。
「元貴の愛って軽いなー」
藤澤が、頭を搔くと苦笑いのような顔で呟いた。
大森は未熟さを認めて貰えない恨みのようなものが滲むと、藤澤を睨みつけた。
「…そこまで言わなくてもいいよね」
大森が耐えられず口走る。
藤澤の表情が固まると、大森のお腹に衝撃が走った。
「うっ!!」
大森は、玄関の床に転がるとすぐにお腹を抑えた。
藤澤が靴を履いたまま、大森を蹴り上げたので鈍痛が走った。
しかし大森は痛みよりも、藤澤に蹴られた事実の方が衝撃的だった。
上手く頭が動かない。
「この状況で口答え?よく出来るね」
藤澤の冷たい声が聞こえる。
「そこまで言わなくても? 」
藤澤が、そう言うと乾いた声で笑った。
「それって、僕に隠れて散々悪口言ってた奴が言っていい言葉かな」
大森は床に突っ伏したまま、顔をあげられなかった。
藤澤の表情を見たら、ますます傷つきそうな予感がしたからだ。
しかし藤澤の手が、大森の髪を鷲掴みにすると引っ張って顔を上げさせた。
「っ…」
藤澤の瞳が、大森の瞳を覗き込む。
少しの疚しさすらも見透かされような気配に、大森の呼吸が早くなっていく。
「この話し合いも温情だって分かってる?
そんな感じなら別れた方がいいね、俺たち」
コメント
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わあああぴりさん新作出してくれてありがとうございます…!! もう毎回神作品すぎてその才能もらいたいくらいです!(?) 次回も楽しみにしてます!頑張ってください!

更新ありがとうございます!また新しい物語、続きが気になって気になって仕方ないです!もう既に面白いです🥺 また続き楽しみに待ってます!!
新しいお話見れるのうれしすぎるし、続きが気になりすぎる…!!あの、Sっ気のある涼ちゃんが好きすぎて、もっくんは安定にちょっと可哀想だしもう沼すぎますー!!😭続きも楽しみに待ってます!!