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※この話は全てフィクションです。
お待たせする時間が長かったため、いつもの倍の長さとなります。く
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸さとみ
救急車が来て、病院まで向かう。
莉犬が倒れた。
その光景だけが頭の中を何度も何度もフラッシュバックして、消えない。
頭が真っ白になって、パニックで呼吸が浅くなる。
救急隊「大丈夫ですよ、安心してください」
そうやって俺の背中を擦りながら、優しく語りかけてくれる。
その声が届いているはずなのに、頭には何も入ってこなかった。
耳鳴りのような「サーッ」という音と、自分の心臓の鼓動だけが響いている。
10分ほど救急車に乗っていたらしい。
でも俺には、30分…いや、1時間以上も閉じ込められていたように感じられた。
重い足を引きずるようにして、手術室の前へ。
ドアの奥の莉犬に届くように、必死に声をかけ続けた。
莉犬「さとちゃッ…ありがとッ…ポロポロ」
かすれたその声に、心臓を握り潰されたような痛みが走る。
これが莉犬との最後の会話になる——そんな嫌な予感がよぎってしまった。
医者「必ず、助けます」
さとみ「お願いしますッ…ポロポロ」
俺は深々と頭を下げた。
そして、手術室のドアが閉まった瞬間、支えていた足が力を失い、その場に膝から崩れ落ちた。
震える手でスマホを取り出す。
何度も文字を打ち間違え、ようやく送った文章は日本語として成立しているかも怪しい、最低限の単語だけだった。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸メール
さとみ「莉犬が倒れた。病院います。」
機械的で、感情の欠片もない文章。
いや、ロボットでももっとマシな言葉を送るだろう。
ころん「マジ、?」
るぅと「ドッキリはやめてくださいよ笑」
るぅと「物騒ですよ笑」
さとみ「ドッキリでもなんでもない」
ジェル「ホンマにそうなん?」
さとみ「本当だ。信じてくれ」
ななもり「本当なんだね?」
ななもり「聞きたいことは沢山あるけど」
ななもり「俺も行く」
ななもり「今どこいるの?どこ病院?」
普段ならすぐ返せるはずのメッセージに、俺は少し間をあけて返した。
さとみ「桜山病院」
ここは、以前莉犬が疲労で倒れたときにも運ばれた病院だ。
医者も、またかと呆れているかもしれない。
ななもり「了解!すぐ行く」
ななもり「そこ、動かないでよね」
ころん「僕も行く!」
るぅと「僕、莉犬の家寄ってから行きます」
ジェル「俺もそうするわ」
ななもり「2人は頼んだ!」
さとみ「莉犬の家には行くな」
るぅと「なんでですか?」
さとみ「お前たちには見せらんない」
ジェル「俺たちだって大人やで?」
ジェル「信用してくれへん?」
さとみ「わかった。無理だと思ったら帰れよ」
るぅと「分かりました」
さとみ君の口調が、普段よりも硬く、短い。
その裏にあるものをまだ理解できないまま、俺たちは莉犬の家へ向かう。
そして、その数十分後、俺たちは想像以上の絶望を目にすることになる。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ななもり。
ななもり「まじか…」
ななもり「何があったんだろ…」
ななもり「とりあえず急がなきゃッ…」
ななもり「桜山病院までお願いします!」
運転手「了解致しました」
ななもり「出来ればちょっと早めで!」
運転手「了解致しました」
ヒカ〇エの前で、事前に呼んでおいたタクシーに飛び乗る。
運転手「なにかあったんですか?」
ななもり「ちょっと友達が」
運転手「そうでしたか。…お大事に」
運転手「見知らぬ人に言われても…ですよね」
ななもり「あ、いえ、そんなことありません」ななもり「ありがとうございます」
数分後、病院に着いた。
運転手「お代はいいです」
運転手「最後に会えないのは悲しいですから」
そう言った運転手の顔が、少し滲んで見えた。
俺は駆け足で病院へ。
看護師「廊下は走らないでください!」
ななもり「すみません!急いでてッ」
看護師の声を背に、俺はさらに加速する。
ななもり「さとみ君!!!」
さとみ「なーくッ…ポロポロ」
さとみ「俺ッ俺ッ…ポロポロ」
ななもり「大丈夫、大丈夫だから。」
ななもり「すぐ皆来るよ」
ななもり「話だけ先、聞いてもいい?」
さとみ「はい、ポロポロ」
ななもり「なるほどね…」
さとみ「すみません…俺の注意不足です…」
ななもり「さとみ君は悪くないよ。きっと、起きてくれる」
ななもり「信じて待とう?」
さとみ「はいッ…ポロポロ」
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸手術室前
それからどれくらい経っただろう。
時計を見ても、数字が全然頭に入ってこない。
秒針が進むカチ、カチという音だけが、やけに大きく耳に刺さった。
足音。
顔を上げると、ころんが息を切らして飛び込んできた。
額には大粒の汗、肩は上下に大きく揺れている。
ころん「…ッ、さとみ君ッ…!」
さとみ「…ポロポロ」
ころん「莉犬くんッ…どこ?」
ななもり「手術中だよ。まだ…」
ころんは何も言わず、俺たちの横に腰を下ろした。
その瞳は、さっきまで笑っていた人間のものじゃないように見えた。
俺は、唇をぎゅっと噛み締め、拳を膝の上で固く握りしめていた。
少し遅れて、るぅととジェルも到着した。
顔色は青ざめ、指先まで震えている。
るぅとの手には、小さな紙袋。
きっと、何か莉犬のために持ってきたんだろう。
るぅと「部屋…見てきました」
ジェル「……正直、言葉にならん」
その一言で、ころんが顔を上げた。
けれど誰も、何も聞き返せなかった。
ななもり「…今は莉犬を待つことだけ考えよ」
ジェル「せやな…」
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ななもり。
沈黙が落ちる。
消毒液の匂いが鼻を刺し、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
時間が、粘りつくように遅く感じられた。
その時
「ピーーーーーッ」
短くも鋭いアラーム音が、手術室の奥から響いた。
俺たちは反射的に立ち上がった。
足が震えて、床の白いタイルが揺れて見える。
さとみ「そ、そんなッ…ポロポロ」
ころん「やばい音じゃん、これッ…!」
さとみ君ところちゃんは、絶望で泣いている。
るぅとくんと ジェル君は、緊張と莉犬くんへの信頼で泣くことは無かったが、その場で立ち尽くしていた。
看護師「皆さん、ここでお待ちくださいッ!」
必死に制止する看護師の声が、遠くで響くように感じる。
俺はドアの前まで駆け寄った。
中から別の医師が飛び出してきて、器具を持った看護師に何かを早口で告げる。
医師の額からは滝のように汗が流れ、その瞳には焦りが滲んでいた。
俺は拳を握りしめ、唇を血が滲むほど噛んでいる。
誰も、一言も発せなかった。
ただ、祈ることしかできなかった。
廊下の空気は重く、呼吸をするたびに肺が締め付けられるようだった。
遠くから聞こえる靴音や、金属がぶつかる小さな音に、全員が敏感に反応する。
数分後、手術室のドアがわずかに開き、看護師が顔を出した。
看護師「ご家族の方…」
と呼びかけられ、俺たちは反射的に立ち上がる。
心臓が一気に跳ね上がる。
看護師「…もう少しで終わります。」
看護師「落ち着いてお待ちください」
安堵と不安が同時に押し寄せてくる。
“終わる”という言葉が救いのようであり、同時に怖かった。
終わったとき、そこに莉犬がちゃんと息をしていてくれるのか——。
再びドアが閉まり、静寂が戻る。
誰も座ろうとせず、ただドアを見つめ続けた。
そして——
数分後、手術室のランプが消えた。
全員の胸が、同時に強く締め付けられる。
中から現れた医師の白衣は汗でしっとりと濡れ、その表情は疲弊していた。
医者「…手術は、成功しました」
その瞬間、張り詰めていた糸がぷつりと切れた。
さとみ君はその場に崩れ落ち、顔を覆って泣いた。
俺も、ころちゃんも、るぅと君も、ジェル君も、堪えていた感情が一気にあふれ出す。
廊下に、泣き声と安堵の吐息が混ざり合った。
医師の言葉が何度も頭の中で反響する。
何度も確かめるように、自分の耳を疑った。
医者「意識はまだ戻っていませんが、」
医者「容態は安定しています。」
医者「面会は…少しだけなら」
その一言に、俺たちは全員で小さく頷き、案内されるまま面会室へ向かった。
消毒液の匂いが一層濃くなり、心臓が高鳴る。
カーテンで仕切られたベッドの上に、莉犬君がいた。
顔色はまだ青白く、細い腕には何本ものチューブが繋がっている。
けれど、その胸は確かに上下していた。
さとみ「…莉犬…」
さとみ君の声はいつものよりも小さくて、震えていた。
その音に反応したように、莉犬の指がわずかに動いた。
るぅと「ねぇ…今、動きましたよね!」
るぅと君が驚きと歓喜の声を上げる。
そしてゆっくりと、莉犬君のまぶたが持ち上がった。
まだ焦点は合っていないが、かすかに笑みのようなものも浮かんで見えた。
莉犬「…さと…ちゃ…」
莉犬「ダメじゃんね…ポロポロ」
その一言だけで、さとみ君の目からまた涙が溢れた。
さとみ「バカ…もう、心配させんなッ…」
そう言って、彼は莉犬の手をそっと握った。
莉犬は弱々しくも、握り返してきた。
その温もりが、何よりの答えだった。
面会室の空気は涙でいっぱいになったが、それは悲しみではなく、確かな安堵の涙だった。
——その瞬間だった。
莉犬「……ッポロポロ」
莉犬「ヒューハッ…ポロポロ」
莉犬君の眉がきゅっと寄り、苦しそうに息を吐く。
心拍計の音が、一定のリズムから外れた。
莉犬「ピー……ピー……!」
面会室の空気が一気に張り詰める。
看護師が慌ただしく飛び込んできた。
看護師「すぐ外へ出てください!」
俺たちは後ろ髪を引かれる思いで部屋を離れる。
ドアの向こうで、医師と看護師の短く鋭い指示が飛び交っていた。
ころん「なんでッ…」
ころん「さっき成功って言ったじゃん…!」
ころちゃんが震える声で呟く。
俺は黙ったまま、固く唇を噛んでいた。
望まない現実が、胸に重くのしかかる。
この状況で祈ることしかできない自分に、怒りと無力感が渦巻いた。
莉犬君が、今にもこの手から零れ落ちそうに見えた。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸莉犬
あー、俺生かされちゃったんだ。
タヒにたかったのになぁ、、
みんな俺の前で涙ぐんじゃってさ、、
そんなの反則じゃんね、。
でも俺さ、生きるきないんだよね、
さとちゃんには悪いことしたな。
目の前で死のうとしちゃった。
俺の汚いところも全部全部見せちゃった。
謝りたいけど、もう、謝れないんだろうなぁ、
またね。
じゃなかったね、、
ばいばい。さとちゃん。皆。
来世でも会えたらいいなぁ、
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