この研究の中、一番支えてくれたのは研究所のメンバーたちもだが、ダニエルさんの支えが大きかっただろう。彼は自らも病気で苦しんでいるにもかかわらず、未来ある子供たちを支えるために全力で尽くしてくれた。彼の存在が、私たちが研究に専念できる大きな要因となった。毎日のようにダニエルさんは寮で私たちを迎えてくれ、優しい笑顔と温かい料理を提供してくれた。私たちが遅くまで研究に没頭しているときも、ダニエルさんは決して文句を言わずに見守っていてくれた。
「頑張っている姿を見ると、私も勇気づけられるんだよ。」
ダニエルさんはいつもそう言って、私たちを励ましてくれた。
そのおかげで五年後、ヒロトはついに星散病の薬の開発に成功した。研究所の仲間たちやキャサリン教授、ダニエルさんも一緒に、私たちはいつものパブで盛大に祝った。ヒロトは感慨深げに語った。
「これで、星散病の患者が二十五歳を超えて生きられるようになるかもしれない。玲子姉さんに早く報告したいよ。」
その言葉に、私たちは全員頷いた。玲子さんの遺志を胸に、私たちはこの瞬間を迎えることができたのだ。
アキラはその間、日本で国を超えて活動するNPO団体を立ち上げた。奇病を抱える人々を守り、支えるための団体であり、その活動に多くの寄付金が集まっていた。アキラは誇りを持って語った。
「この団体は、奇病を抱える人々に希望と支援を提供するために存在するんだ。お姉さんのような苦しみを一人でも減らすために。」
本当に良かった。努力が実を結ぶとはこういうことなのだろう。そう考えていたとき、俺の電話が鳴った。
「やぁ、コウタ。話はキャサリンから聞いたよ。うちのクリニックを大きくして君たちの病院にするといい。」
電話の相手は、日本にいる美紀さんだった。
「それは……本当にいいのですか?」
俺は驚きと喜びを隠せなかった。
「もちろんさ。未来ある若者への投資だよ。」
美紀さんの声には温かみがあった。
この提案により、私たちは全員で夢をかなえた。玲子さんが死んでからもう十三年が経っていたが、私たちは彼女の遺志を継ぎ、病院を開業することができた。
「これからも、奇病を抱える人々に寄り添い、最善のケアを提供し続けていこう。」
俺たちは新たな決意を胸に、未来に向かって歩み続けた。
そして卒業と日本に帰る日。
「皆さん、本当にお世話になりました。」
ヒロトは研究室のメンバーたちに深く頭を下げた。
「あなたたちの努力と情熱が素晴らしい成果を生み出したわ。これからもその道を進んでね。」
キャサリンさんは温かい言葉で三人を送り出した。
ダニエルさんもまた、心からの感謝を込めて三人に微笑んだ。
「未来に向かって頑張るんだよ。君たちならきっと素晴らしいことを成し遂げられる。」
三人はダニエルさんと研究所のメンバーたちと握手を交わし、最後の別れを惜しんだ。そして、日本への帰国の日がやってきた。
空港では多くの研究室の仲間たちが見送りに来てくれていた。キャサリン教授も、オリビアやイーサン、ジュリアンと一緒に彼らを見送っていた。
「またどこかで会おうな!」
ジュリアンは涙をこらえながら手を振った。
「もちろん、いつでも帰ってきてね。」
オリビアは優しく微笑んだ。
「玲子さんにいい報告ができるみたいでよかったよ。今度は僕が日本へ遊びに行くからね。」
イーサンは笑顔で俺たちの頭をなでてくれた。
三人は感謝の気持ちを胸に、飛行機に乗り込んだ。機内では、これまでの努力と成果が頭を巡り、感慨深い気持ちになった。
「やっとここまで来たんだな。」
ヒロトは窓の外を眺めながらつぶやいた。
「玲子姉さんもきっと喜んでくれてる。」
アキラは頷いた。
「日本でも頑張ろう。これからが本当の始まりだ。」
俺は力強く言った。飛行機は静かに日本へと向かい、彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように、青い空の中を進んでいった。
日本に到着した三人は、美紀さんのクリニックへと向かった。そこでは美紀さんと優香さんが出迎えてくれた。
「おかえり、三人とも。」
美紀さんは温かく迎え入れてくれた。
三人は新たな決意を胸に、日本での新たなスタートを切った。俺達の夢は、ここからさらに大きく広がっていくのだ。
そして二年後、ヒロトが開発した薬はついに国の審査を通り、星散病の治療が可能となった。これは私たちにとって大きな勝利であり、新たな希望の光となった。
その時にはもう、私たちは奇病専門医「星宮クリニック」を開業していた。ヒロトが院長を務め、アキラはNPO団体を運営しながら入院患者の心のケアを担当し、俺は看護師長と栄養士として二人を支え、看護師たちへの指示を行っていた。毎日が忙しい日々だったが、その分充実感に満ちていた。
そんな中、ある日五人の患者が俺の目に留まった。まだ高校生くらいの女の子たちで、それぞれが奇病を抱えていた。中には俺と同じ狂獣病の患者もいた。彼女たちは差別や偏見、虐待に苦しんでおり、俺はなぜか彼女たちから目を離すことができなかった。
「君たち、大丈夫か?」
「はい……」
彼女たちが傷だらけでやってきたとき、俺はあのヒーローのように声をかけた。彼女たちは怯えたように答えたが、その目には強い意思が宿っていた。
彼女達が入院生活を送る中、俺は彼女たちの話を聞きながら、かつての自分やヒーローのことを思い出していた。ヒーローは俺たちを守り、導いてくれたヒーローだった。今度は俺が、彼女たちを守る番だと感じた。
幸いにも、俺の病は戦闘に特化しており、彼女たちを守るには十分な力がある。Star Life Instituteで身につけた知識も活かせるだろう。俺は彼女たちを支え、勇気づけるために決意を固めた。
ある日、俺は彼女たちが音楽を演奏しているのを見かけた。彼女たちは自分たちの思いを音楽に込めて、奏でていた。俺はその美しいメロディに心を打たれ、彼女たちに声をかけた。
「なぁ、君たち。その音楽を世界に広めてみないか?」
俺の言葉に、彼女たちは驚いた顔をしていたが、次第に希望の光が宿るような目をして、頷いてくれた。
それは新たな始まりの予感だった。俺たちは共に歩み、彼女たちの夢をサポートするために力を尽くすことを誓った。こうして、新たな物語が始まるのだった。
この後の物語は「バンド編」へと続く。彼女たちがどのように音楽を通じて世界に発信していくのか、そして奇病を抱える人々に希望と勇気を与える存在となるのか。その旅路が描かれていくだろう。
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