ホテルにチェックインすると、俺はあらためてALSについてスマホで調べ始めた。
上肢下肢の麻痺による運動障害、喋りにくくなる言語障害、食べ物を飲み込めなくなる嚥下障害、呼吸障害など、どれもが行きの新幹線で一度は読んだ説明だったが、再度読むと、それらを説明する文章の一文字一文字が俺の心に重くのしかかってきた。知らぬうちに息を止めて黙読していたようで、呼吸まで苦しかった。
本当にこれらの症状が瑞奈に現れるのだろうか?
そもそもまだ診断が確定した訳じゃないのだから……読み進めるほどに不安になることを抑えられないが、検索を止めることもできなかった。
瑞奈がこれらの症状を発症させた場合、果たして俺はそのことを真正面から受け止めることができるだろうか? そう心が俺に問いかけてくる。大丈夫。宣言しようとしているのに、本当にその宣言は果たされるのだろうか……?
そんな折だった。俺が春奈さんのブログを見つけたのは。
『春奈のブログへようこそ とあるALS闘病者の戦いキックオフ』
キックオフ、という単語に導かれるように、そのブログを閲覧するや、時間を忘れて読みふけっていた。
春奈さんはどうやらサッカーを本格的にやっていた三十歳前後の女性のようだ。
五年前にALSを発症し、現在は視線入力ができるパソコンを使ってブログを更新していた。
女性のサッカー経験者という経歴がどうしても瑞奈とダブって見える。ブログに写真は貼られていないが、掲載文章を読む限り、春奈さんは既に手足を動かすことができない状態のようだ。
瑞奈もいずれ……、すぐに頭を激しく振った。初期診断は誤診であって欲しい。でも、ブログに記載されている回顧録に、『よく躓くようになった』『呂律が回らなくなった』の言葉を見つけた。
胸がぎりぎりと締め付けられる。最近の瑞奈は、何でもない平坦な道で転んだり躓いたりしていた。呂律も回っていない時があった……。
視線がブログ中の連絡先メールアドレスで止まっていた。
どれくらいの時間、そのメールアドレスを眺めているのか、瞬きさえも暫くできなかった。
幾ばくかの時間が流れ、空調が効いた部屋の中であるにもかかわらず汗がこめかみを伝い落ちていくのを感じた時、俺はそのメールアドレスを宛先に、メール文をしたためていた。






