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夜。
時計の針が22時を指す頃、玄関のドアがゆっくり開いた。
「ただいま……」
「……◯◯、まだ起きてるかな……」
3人の声はどこかおそるおそるで、まるで地雷を踏まないように歩く足音。
昨日、あんなに怒られて、何も言えなくなって。
今日も同じように冷たくされたらどうしよう……そんな不安が3人の表情に浮かんでいる。
でも――
「おかえり」
小さく、優しい声が背後から聞こえた。
3人がびっくりして振り返ろうとしたその瞬間。
「振り向かないで」
背中にふわっと、柔らかな温もりがくっついた。
◯◯が、3人を後ろからハグしていた。
「……ごめんね。意地悪して。
本当はね、昨日の夜からずっと……謝りたかった」
元貴が、ハッとしたように言う。
「◯◯……」
「怖かったの。3人が、私の知らないところで、
私の知らない顔して笑ってるの、見たくなくて。
勝手にヤキモチ焼いて、勝手に拗ねて、勝手に怒って……
……でもね、それって結局、好きだからなんだよ」
涼架が小さく笑う。
「ずるいよ、それ。こっちが言おうと思ってたのに……先に言われた」
「好きすぎて苦しいって、すごいなぁ。
俺ら、そんな風に思われてたんだなぁ」
滉斗も、少し照れたように呟いた。
それでも、◯◯の腕の中にいることが、3人にとって何よりも幸せだった。
元貴が小さな声で言う。
「怒られるのも、意地悪されるのもいいけど……
でも、やっぱり今が一番好きだな。◯◯にこうやって甘えられるの、たまんない」
◯◯はその言葉に、ほんの少しだけ強く抱きしめる。
「……私も。
3人が他の誰に笑ってても、優しくしてても……
やっぱり、帰ってきてくれる場所がここなら、
それでいいかなって……今日思った」
涼架が、そっと手を取る。
「ただいま、◯◯」
滉斗も手を重ねる。
「帰ってきたよ」
元貴は、振り返らずに呟く。
「◯◯がいるなら、どこだって帰る。
それが“俺たちの家”だから」
◯◯の目に、少し涙がにじんだ。
でもその涙は、もう不安でも怒りでもない。
ただ、大切な人たちを想う気持ちが、溢れただけだった。