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☆yatio☆
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#主人公愛され
瀬名 紫陽花
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――四月
夕刻。わたし、九条詩織は十数メートル先のホームに佇む初老の男を見つめていた。
彼はわたしが三週間前から追っている暗殺対象《ターゲット》である。
監視や尾行は抜かりなく行っているため、命を狙うわたしに気づいている形跡は全くない。
二度ほど任務実行の機会があった。
彼にもわたしのような娘がいるかもしれない。
自らの手を汚し殺めたら後戻りできない。
そんな気がして、みすみす好機を見逃してきた。
わたしは数百年の歴史をもつ九条流暗殺術の後継者。
いつかは自分の手で暗殺を実行する運命なのだろう。
だが無理だ。ともかく今はできない。
(落ち着け、わたし)
こんな乱れた心境では、証拠を残すなど重大なミスを起こすかもしれない。
今日はやめた方がいいかもしれない。
またもや先送りしたくなる。
とはいうものの、実行期限は迫りつつある。
今日を逃せば、いつ機会が訪れるか分からない。
潮時かもしれないな。
大きく息を吸ったその時。
ターゲットがよろめくように線路に落ちる。
ホームに進入してきた電車の警笛が大きく鳴り響く。
衝撃音が数度。
酒を飲んでもいないのになぜ?
持病でもあったのだろうか。
その瞬間に居合わせた女性が目を見開き口を両手で覆う。
長いブレーキ音が収まるとともに、全てをかき消す大きく不快な警報ブザー。
駅員が走り回り野次馬を制止する一方、それに逆らうようにスマホで撮影する者もいる。
周囲は騒然としていた。
わたしは知っている。あれは間違いなく致命傷になる。
ターゲットを殺める必要がなくなったのだが、任務終了を素直に喜ぶ気にはなれない。
組織にとって闇に葬るべきとはいえ、さきほどの瞬間に人が亡くなっているのだ。
どうして喜べようか。
様々な思いを胸の奥にしまい、わたしは自宅方面のホームへ静かに向かう。
見知った顔と向き合った。
佐倉悠真。
わたしの通う公立高校でこの四月から同じ二年B組となった男子生徒である。これまで話をしたことはない。
彼は事故前のわたしの不審な挙動に気づいただろうか。
大きな懸念事項となってしまったが、今すぐは手の打ちようもない。
彼は何か言いたげなそぶりを見せたが、わたしはあえて無表情のまま歩みを止めなかった。
コメント
1件
第1話、めっちゃ引き込まれたわ! 九条詩織の「♡♡♡たくない」っていう葛藤、冒頭からガッツリ心掴まれた。ターゲットがまさかの事故死で、任務終了したのに素直に喜べない描写がリアルすぎる。悠真くんの存在も気になるし、この後の展開が楽しみすぎる🔥