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尊
ちょいと季節遅れの初詣話。
一月最後の日曜日。
未だ未だ本格的な冬が残る季節、同居している彼と共に布団に包まっていた。
「シッマもうちょい布団寄越せや」
「俺ももう限界なんねん!」
わちゃわちゃしながらも、最終的には身体を向かい合わせにして布団に包まるのだから、俺達の関係は続いているのだろう。
「あっ、そう言えば今年初詣行ってへんくね?」
目の前でスマホを弄ってたシッマが唐突に目線を合わせ此方に喋りかけてくるのだから、思わず向けられた整った顔面に顔が若干熱を持つ。
「確かに、でも寒いし僕行きたないわ」
「え”ー、俺大先生と初詣行きたかったんやけど…」
「おっ、ま…しゃーねぇな、行ってやるよ」
最愛の人にこんな事を言われて行かない恋人が居るだろうか。
いや、断念するね、居ないやろ。
「ほんまか?! ならさっさと準備してこ!」
「はいはい…っ、あ~さむ…」
ぐいぐいと腕を引っ張られ布団から出されると、急激に肌を冷たい空気が掠めた。
確か先程見たネットニュースの天気予報では、丁度大寒波が来ていると書いてあったような。
「シンマ、多分外あほみたいに寒いで」
「マジかぁ…ほな手袋もしてかなあかんか…」
ダウンコートにマフラー。手袋と持ちうる限りの防寒グッズを身につけ、ポケットに財布と家の鍵。
「よっしゃ行くでー!」
「元気やな~お前」
「思ったより人居らへんな…」
「そりゃそうやろ、もう一月の終わりやで?」
寒い中何とか足を進めながらも着いた神社。
境内には未だ彼方此方にうっすらと氷の膜が張ってある。
「大先生俺金忘れたわ」
「全くお前ってやつは…ほらよ」
想定済み。
言葉にはしなかったが大体予想はついていた。
ポケットから適当に小銭を取り出し此方に手を出す彼に渡す。
「二礼二拍手一礼、やったっけ?」
「お前よぉ覚えとんな」
ギシギシとなる木製の階段を登り、賽銭箱の前に立つ。
日曜日、横に吹く風の中には雪の結晶が混じり始めていた。
境内に、見渡す限り人は居ない。
パンッパンッ。
乾いた音が横から聞こえる。
隣にいる彼は、その後数秒目を瞑った後に瞼を開いた。
どうやらお願いごとを終えたらしい。
「っし、帰るか!」
笑顔で言い放つ彼に気を取られて居れば、何時の間にやら繋がれた手をぐいっと引っ張られる。
「寒いしラーメン食べ行かん?」
「お前金持ってへんやん」
「頼むよ大先生、俺達の仲やろ? な?」
軽口を叩きながらも、繋いでいた手はぎゅっ、とさらに強く握りしめられる。
スリスリと親指の腹で乾燥した肌を撫でられれば思わずにんまりと口角がニヤけてしまう。
「笑っとる…?」
「別に」
バレないように首元を覆うマフラーに顔を埋め、境内を出る前にもう一度神棚の方を見詰める。
神様。どうかお願いだから
俺の人生から此奴を取らんといて下さい
終わり