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第三夜:黒い羽根の少女


深夜、【Fleur】のドアが静かに開き、外の冷たい風を押しのけて一人の少女が店に足を踏み入れた。


彼女の背中には黒い大きな羽が広がっており、その姿はまるで伝説の鳥のようだった。


羽は美しく、光を受けるたびに淡い青色に輝くが、どこか切なげに垂れ下がっている。彼女の目は金色で、どこか遠くを見つめているように見えた。


店内の温かな空気が少女を包み込み、彼女はカウンターに歩み寄った。リュカはその姿に驚くことなく、穏やかな微笑みで迎える。


「いらっしゃいませ。お席にどうぞ。」


少女は少しだけ首をかしげ、静かに座った。その視線はどこか儚げで、遠くに向けられている。


リュカが柔らかく声をかける。


「今日は、どんなことでお悩みですか?」


しばらく沈黙が続いた後、少女は静かに口を開く。


「私は…人間ではありません。」


その言葉に、リュカもカインも少しだけ驚きの表情を浮かべたが、すぐに冷静に対応する。


「そうですか。」


リュカは穏やかな声で続ける。 


「それでも、悩みを抱えていることはあるんですね。何か、お話ししてもいいですよ。」


少女はうなずくと、金色の瞳を下に落とし、少し言葉を選ぶようにして話し始めた。


「私は、何百年も生きています。でも、その時間の中で、ずっと感じていたことがあるんです。それは…孤独。」


彼女の声には、深い孤独と寂しさが滲んでいた。


「人間のように過ごすことはできても、結局私は、彼らと同じようには生きられません。誰にも理解されないまま、ただ時間が過ぎていく。羽を広げても、どこへ飛べばいいのか分からなくて。」


リュカは静かにその言葉を聞き、しばらく考えた後、穏やかな表情で言った。


「その孤独感は、永遠に続くものではありませんよ。誰かがあなたを理解してくれる日が必ず来ると信じています。」


カインはその話を黙って聞きながら、静かにグラスを拭いていた。しばらくして、カインが低い声で口を開く。


「孤独というのは、時に自分の内側に閉じ込められたような感覚を生む。それが長く続くと、他の世界との繋がりが見えなくなってしまう。」


彼は少し間を置いてから、静かに続けた。


「でも、その閉じ込められた世界の中にも、少しだけ光が差し込む隙間がある。大切なのは、それに気づくことだ。」


リュカが少し微笑んで言った。


「カインが言うように、孤独の中に閉じ込められているように感じるかもしれませんが、その孤独をどう受け入れるかが、次に進むための大きな鍵になるのかもしれませんね。」


その時、カインが一歩進み、カクテルを作り始めた。彼は無言で手際よくグラスに液体を注ぎ、その後、ゆっくりと少女にカクテルを差し出す。


「このカクテルは『Wings of Solace』。」


カインは少しだけ顔を上げ、低い声で言った。


「羽根を広げて、空を飛ぶために必要なもの。孤独を癒し、心に光を届ける一杯です。」


リュカが続けるように言った。


「これは、あなたが感じている孤独を少し和らげてくれるかもしれませんよ。飲んでみて、少しでも楽になれば。」


少女はそのカクテルを手に取り、少し迷いながらも口に運ぶ。


その瞬間、彼女の目が一瞬大きく見開かれ、羽が微かに震えた。カクテルの味は甘く、心を包み込むような温かさを感じさせ、彼女の胸の中に少しずつ穏やかな感覚が広がっていった。


「これは…」


少女は静かに言った。


「不思議ですね。飲んだ瞬間、何かが少しだけ軽くなった気がします。」


リュカはにっこりと微笑みながら、


「それは、あなたの中にある光が少しだけ目を覚ましたからかもしれません。孤独を感じているときは、どうしても自分の中の小さな光を見失ってしまうものです。でも、少しずつその光を感じられるようになるはずです。」


カインが冷静に続ける。


「孤独は、他人との繋がりを持たない限り永遠に続くものではない。ただ、少しずつその繋がりを見つけていくことが大切だ。」


少女は少しだけ微笑み、再びカクテルを手に取った。


「ありがとう…少し、心が軽くなった気がします。」


リュカは優しく頷いた。


「こちらこそ、来てくれてありがとう。もしまた孤独を感じたときは、いつでもこの場所に来てくださいね。」


少女は少しだけ微笑み、立ち上がって店を後にした。彼女の羽根が静かに揺れ、外の冷たい風にのってその姿が闇の中に消えていった。


カインがグラスを拭きながら、静かに言った。


「孤独を感じるのは、他者と深く繋がることの難しさだ。でも、いずれその繋がりを見つけることができる。」


リュカは微笑みながら頷いた。


「そうですね。どんな存在でも、必ず誰かと繋がることができる。そう信じて、待つことが大切なのかもしれません。」


外の風が店の窓を揺らし、その音が静かな夜の中に響いた。

『星降るカクテル』

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