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#二次創作
ゆりかご.
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アキ天です
Twitterにあげたものの再掲です
珍しくちゃんと字を書いたのでここにも載せてみます
「おい起きろ」
デビルハンター本部の資料室で、アキは文字通り羽を伸ばしてぐうたら寝ているバディを持っていたファイルで小突く。
「あと五分寝たら考える……」
「昼休憩だぞ」
言い終わる前に天使が立ち上がる。飯の話を出した途端にこれだ。つくづく悪魔らしい薄情さだと呆れるのも、もう慣れたことだった。
資料室を出て、昼時の陽気が漂う廊下を進む。初夏も過ぎたようなこの時期となると、少し蒸し暑さを感じてしまう。同時に少し悪い予感が頭をよぎり、案の定後ろからアイス買ってよ、と悪魔の声が聞こえてきた。
「お前今日何もしてないだろ」
「えー、暑いと余計疲れるし……。夏料金だよ」
「ふざけんな。飯屋で冷たいもん頼めばいいだろ」
「このままじゃ暑くて外出れない」
屁理屈ばかりこねる天使をなんとか躱してエレベーターホールまでたどり着く。下行きのボタンを押して待っていると、ふと耳慣れない言葉がアキの耳を掠めた。
声がした方を振り向けば、公安の職員の横顔が目に入った。随分と困ったような表情をしている。その隣にいるのは濃い顔に暗い肌の、明らかに日本人では無い風貌の男だった。どうやら言語の壁に苦戦しているらしいことが一目見るだけで分かる。
やがて職員の方がアキの視線に気づき、こちらへ近づいてくる。
「お疲れ様です。早川さん、この方の言葉分かりますか?」
こうなる気はしていた。しかし、アキも日本語以外の言語に詳しいわけではなかった。せいぜい義務教育レベルの、会話においてまるで応用の効かない英語の知識程度しか持ち合わせが無い。
それでもなんとか力になれないかと、目の前の男性と対話を試みる。が、
「――――――?」
聞こえてきたのは英語とは程遠い、どこの国で使われているものかも分からない言語だった。お手上げだ。
「すみません、俺も全く。翻訳機ないか聞いてきましょうか……」
「待って。僕が話してみてもいい?」
今まで静かに聞いていた天使がアキの背中から顔を出す。アキが返事をする前に天使は男の方を向いて口を開いた。
「―――?」
天使の口から聞こえたのは、先程男の口から聞いた言語と同じもののように聞こえた。途端に男の顔が幾分か明るくなる。
「―――! ――――――?」
「―――。―――?」
「――――――。」
いくつか会話を交わした天使は、最後に「待ってて」と言うようなハンドサインをした。
「この前助けてもらった人にお礼を渡したいんだってさ。二十代後半くらいで、眼鏡かけてる男の人で、カビの悪魔と契約してたって。誰か分かる?」
「それなら、高橋さんのことではないでしょうか。今ならまだ食堂にいるかもしれません」
「じゃあその人呼んできて」
その後、職員が呼んできた田中さんという人で間違いなかったらしく、二人は天使の通訳で楽しそうに話し、最後には握手をして肩を当てた。男は去り際に天使にも握手を求めたが、当然天使は断った。その顔が少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。
再びボタンを押したエレベーターの前で、天使はぽつりと「故郷の言葉だったんだ」と零した。
「また聞けるなんて思ってなかった。言葉を聞いただけであの景色が浮かぶみたいだ」
天使の目はたぶん、美しい景色を映していた。
数十分前の光景を思い返す。男と話し始めたときも、田中さんを待っている間も、二人の通訳をしている間も、天使は心なしか楽しそうに見えた。ほんの数ヶ月とはいえバディとして一緒に過ごしてきたアキでも見たことがないほどに。
「なんでそんなしかめっ面してるんだよ」
天使が怪訝な顔で覗き込んでくる。
……そんな顔をしてたのか、俺は。
「あ、もしかして」
違う。
「寂しかっ「違う」
「……でも」
「?」
「今度休み取れたら行くか。お前の故郷」
「えっ」
いつも伏せられがちな目が大きく見開かれる。天使の表情は先程と同じように少し楽しげになっていた。いや、この場合は期待か。
「ほんとうに……?」
「ああ」
やったあ、とでも言うように目を輝かせた天使を見て少し安心する。なんでかはよく分からないけれど。
エレベーターが停まり、乗り込む。少し考えてから「さっきは頑張ったからアイスも買ってやるよ」と言ってみた。思った通りぱっと顔が明るくなった天使を見て、上がりそうになる口角をなんとか噛み殺した。