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「…なに、してんだよこの変態野郎っ!!!!」
そんな怒声が聞こえた瞬間、掴まれていた両手が解放される。
どんっと大きな音が聞こえた方向には、俺を襲っていた奴が地面に転がって伸びてしまっていた。
「スマイルっ!!」
その名前で俺のことを呼ぶのはただ1人。
振り返ればそこには、息を切らしたきりやん先輩が立っていた。
sm 「…せ、んぱい..、?」
kr 「スマイル!ごめんね、遅くなって。大丈夫..、じゃないよね..。っ…取り敢えずこれ、着な。」
息を整えながらそう言って、着ていた上着を渡してくれる。頭が回らずただ言われるがまま先輩の大きめの上着を羽織る。
先輩はその間に路地の外まで行き誰かに向かって手を上げてこっちです‼︎と声を上げていた。
程なくして人影が見えれば、その正体が警察だと分かる。
kr 「すいません、勢いでぶっ飛ばしちゃって…」
全く反省してなさそうにそう言えば、呆れられながらも正当防衛として片付けてくれるようだった。
それからはあっという間で、警察官が男を捕らえ後から駆けつけたパトカーへ引き渡される。
乗っていた婦警さんに少しの事情聴取をされた後俺たちは家へ帰された。
婦警 「協力ありがとう。後のことはしっかりと私たちが処理をするから心配しないで。須磨くんは今回のことで身をもって知ったと思うけど、男の子だからって油断しないこと。夜道にはしっかり気をつけてね。」
sm 「…ぃ。」
思った以上に声が出ず代わりにコクリと顔を頷かせる。
婦警 「もし何か体調に異変があればこの病院へ尋ねてみて。警察の管轄下にある所だから事情は説明しておくわ。今日はもう遅いから家でしっかり休んで。君も、桐谷君も迅速な対処ありがとう。蹴り飛ばしちゃったのはあんまりよくないけど、」
kr 「う“….、すいません、。」
婦警 「ふふ、でも君のおかげで犯人を捕まえることができたから。ご協力いただき本当にありがとうございます。」
そう言って婦警さんは綺麗に敬礼して見せた。
それじゃあまた後日連絡する、と言ってパトカーへ乗り込んで行った。
kr 「…俺らも帰ろうか。」
そう言われて歩き出そうとした時、急に視界がガクッと下へ落ちる。
何が起こったのかと思えば自分の足に力が入らなくなっていた。
sm 「ぁ…、ぇ?」
kr 「あー、力入んない?…ほら、おぶってやるから。」
目の前でしゃがみ背を向けてそう言う。断ってもずっと道の真ん中で座りこむわけにはいかない。
いつもなら絶対に断るが素直に従い先輩の背に体を預ける。
そのまま先輩の背に揺られ、静かに帰路へ就いて行く。
いつの間にか気づけば玄関の前まで着いていた。
あっという間の展開が続き頭が追いつかず、先輩におぶられてからの記憶が全く無かった。
kr 「…ほい、着いたよ。降ろすね、…ょいしょ。歩けそ?」
そう言って少しだけ身長差のある彼が、俺の顔を覗き込む。
暗くてはっきりは見えないが先輩は俺のことを心配してくれているようだった。
これ以上迷惑をかける訳にはいかない。
先ほどのことを思い出して震える体をバレないように手で押さえ込み、先輩の言葉に頷く。
声を出して返事をすればそれさえも震声になってしまいそうだったから。
だが先輩は中々その場から動かなかった。
体が強張って頷いたのが分からなかったのだろうか、と思い俯いていた顔を先輩の方へ向ける。
俺の方を見ていた先輩は眉を寄せ何か考えているようだった。
その様子に思わず首を傾げてしまう。
すると、
kr 「…スマイル、…うち、来る?」
sm 「………ぇ?」
想定外の提案に呆けた声が溢れる。