テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
29
217
第七章 お家で……
――逃がさないって言ったよね、私。
「……ぁ、待って…//」
「待たない。」
一言。短く、けれど絶対的な宣告だった。
瑠夏が親指で私の下唇をなぞっている。
「一年我慢した。……もう無理。」
首筋に瑠夏の顔が沈んだ。熱い吐息が肌を撫でて——歯が、軽く触れた。
瑠夏が私の首筋を甘く噛んだ。
「これで忘れたなんて言えないでしょ。」
「―――ッ、瑠夏ちゃんの意地悪っ、//」
瑠夏が口を離して、くっきり残った赤い痕を満足げに見つめた。
「意地悪じゃない。……愛情。」
舐めるように視線を這わせてから、もう一度同じ場所に口づけた。今度は優しく。
瑠夏が口づけを止めて顔を上げる。
「明日もつける。」
「……どこに!?」
瑠夏は少し考えるようにして、
「……全部。」
真顔で言い切った。
「……嘘。見えるとこに五個くらい。」
「み、見えっ!?」
「制服で隠れるとこも含めたら十個はいける。」
計算済みだった。
いつから数えていたのかは不明だが、着衣の際の露出範囲を把握しているあたり、相当前から企てていたらしい。
瑠夏は歩き出して私の手を引っ張った。
「ほら、帰ろ。……まだ途中だから。」
「う、うん!だね。」
二人はナナの家に着いた。「ただいま」の声と同時に瑠夏が後ろからするりと入る。
「あら瑠夏ちゃん、いらっしゃい!今日はハンバーグよ!」
「お邪魔します。」
礼儀正しい。外面は完璧。だが靴を脱ぐ手つきは既に私しか見ていなかった。
「二人とも手洗ってらっしゃい、もうすぐ焼けるから――」
瑠夏が私の耳元で囁いた。
「ナナの部屋、先行ってていい?」
お母さんの背中がキッチンに消えた瞬間の早業だった。瑠夏はまるでハンターのような目をしていた。
「うん、いいよ……ぁ、やっぱダメ!」
瑠夏はすでに階段に足をかけていた
「遅い。」
するすると二階へ消えていく瑠夏。一年の間に何度も訪れた家だ、間取りは完璧に把握している。
「なんか瑠夏ちゃん元気ねぇ、今日。」
のんきに笑うお母さん。
自分の娘が今まさに捕食されようとしていることなど知る由もなかった。
「はは、だね。(今の私の部屋には、少しエッチな漫画があったはず……!)」
私は急いで階段を駆け上がった。ドアを開けた瞬間——。
瑠夏はベッドの上に座って、何かをぱらぱらとめくっていた。
――遅かった。
瑠夏は漫画のページに目を落としたまま、
「……ふうん。」
表紙には「年上お姉さんに溺愛されて——」という文字列が見えた。
R指定ぎりぎりの、いわゆるガールズラブ系の漫画だった。しかも結構な冊数が本棚から引き出されている。
ようやく顔を上げた。瑠夏は無表情だった。
「ナナ、こういうの好きなんだ。」
静かな声。怒っているのか喜んでいるのか判別がつかなかった。
「ぁ、それはその………違くて!……//」
ぱたんと漫画を閉じて膝の上に置いた
「違くないでしょ。……ここにあるの全部そう。」
本棚のラインナップが整然と並べ直されていた。
「攻め×受け」「年下×年上」「幼馴染もの」——ジャンルごとに分類してある。
一冊の表紙を指先ですっと撫でた。
「……「強引な彼女に振り回される受け」、これ私たちに似てるね。」
的確な分析だった。さすが成績がトップなだけある。漫画から目を離して私を見上げていた。
「ねえ。こういうこと、されたいの?」
「ち、違うよ!」
瑠夏はすたっとベッドから降りて私との距離を一歩詰めた。
身長差16センチが威圧的に作用する間合いだった。
「じゃあなんで持ってるの。」
正論だった。ぐうの音も出ない問いかけが真上から降ってくる。
漫画の一ページを開いて私の目の前に掲げた。ヒロインが壁ドンされているシーン。
「この体勢、さっきやったよね私。」
「確かにしたけど……//」
漫画をぱたんと閉じた。
「つまり――」
漫画が枕元へ丁寧に、しかし逃走経路を塞ぐように置かれた。
「こういうの見て、私のこと思い出したりする?」
問い詰めているようで声の端が微かに震えていた。「している」と言われたら暴走する自信がある。
でも「していない」と言われたら——それはそれで別の意味で壊れそうだった。
「思い出したりとか、別にしてな……//」
じっと目私の目を見つめている。
――沈黙が三秒。五秒。
「……目、泳いでる。」
瑠夏の観察力が容赦なかった。
「―――ッ、//」
ふっと息を吐いて笑った。
「正直じゃない子には罰。」
手首を掴まれた——と思った次の瞬間、背中にベッドの感触があった。視界いっぱいに瑠夏がいる。
両手首をシーツに押さえつけられた。
「ほら。漫画と同じ。」
「……ぁ。」
顔を近づけて、顎のラインにゆっくり唇を滑らせた。
階下から私のお母さんが「ハンバーグ焦げちゃうー!」と叫んでいたが、二人の耳には届いていなかった。
瑠夏が鎖骨のあたりに歯を立てる。
「声、出していいよ。……おばさんに聞かれたいなら。」
私は急いで口を両手で押さえた。
瑠夏がその両手を見て目を細めた。
抵抗なのか恥じらいなのか——瑠夏には後者にしか見えなかったらしい。
片手で私の両手首をまとめて頭の上へ抑えた。
「隠さなくていい。」
空いた手が制服のリボンに掛かった。するりと引かれる絹の音が静かな部屋に響いた。
「お母さんに聞こえちゃうから……///」
瑠夏の手がぴたりと止まった。
理性がぎりぎりのところでブレーキを踏んだらしい。数秒の硬直のあと、深くため息をついた。
「……タイミング悪い。」
瑠夏の顔は本気で恨めしそうだった。
リボンを元に戻して、でも手首は離さないまま、
「ご飯のあと。続き。」
「うん……//」
コメント
1件
えっちなシーン書いた方がいいですか? それとも純粋なほうがいいですかね?