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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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アリスは可哀想な祖父の姿をまた思った。夜になると徘徊しないために、ベッドにロープでくくり付けられている姿を




目の前にいる成宮北斗もそこまでとは言わないが、やはり鬼龍院の言う通り、どこかおかしいのかもしれない、そして今の自分は祖父のおかげでおかしい人に、かなり免疫が出来ている



でもアリスはなんだかこのおかしい変人と、こうして一緒にいることにだんだん、心地よさを感じていた



でもこの心地よさに馴染むわけにはいかない。すると北斗が考え込んだ風に言った




「もっと正確に言うと俺は君と寝たい 」


「なんですって? 」



この人に会ってからこの言葉ばかり言ってる気がする。アリスは目をしばたいて半笑いで尋ねた




「ええ・・・と・・・つまりはこういうことかしら?あなたは伊藤の財産には興味はないけれど、私とベッドを共にしたいと・・・でも私は恩師の孫でもあるし品位のある令嬢だから結婚しなきゃいけないって・・・・こと?」




コクンと北斗がうなずいた



「そのとおり俺は遊びで女と寝る男ではない」



アリスが上ずった笑い声をあげた



「まぁ・・・成宮様・・・それでしたら少しそのお考えは早計ではないかしら、私と一度ベッドを共にしたら、ガッカリして結婚したことをきっと後悔しますよ」




北斗が首を振った



「それは絶対ない、それに一度だけではなく何度も君とベッドを共にしたいんだ、数えきれないほど」




北斗はアリスが驚き、あきれるのをじっと見つめている




彼の言い方になぜかアリスの無垢な体に、火を付けられたような気がした。自分の頬が熱くなっているのを感じる


夫婦の営みは女性には楽しめるものではないと、母親からたびたび聞かされていた


しかし女学生時代そっちの方面に進んでいる、学友からはあれほど良いものはないとも聞かされていた



鬼龍院といてもこれほどの情欲はまったく湧き上がってこないのに



目の前であけすけに自分と肉体の交わりを楽しみたいと、堂々と申し込んでいる男性になぜかときめいているなんて



今・・・まさにこの瞬間・・・この人の深みのある声が、アリスの神経を伝わって心をそそる



彼の大きな手が・・・・唇が・・・自分の身体を這う所を大胆にも想像してしまった



この人となら友人が言ってたように、男性の身体と触れ合う悦びを教えてくれるかもしれないなんて・・・



恥ずかしくて絶対口に出せない



さらに北斗がアリスに言った



「君と何度もそういうことをしたら子供ができる・・・・俺はその子を俺の子として大切に育てたい」



アリスは椅子の背に頭をのけぞらせて笑いたかった。冗談でもまさかそこまで考えているなんて




「あなたのご親切には感謝しますわたとえお世辞でも嬉しかったです」




北斗が椅子の肘掛けをきつく握りしめた



「俺と結婚すれば鬼龍院は君にもう近づけないし、君から三度目の婚約破棄の悪評から守ってやれる」




アリスはふと眼下の舞台を見やった



舞台中央には、スポットライトを浴びた重そうな和装の衣装を着た歌舞伎役者が目玉をまわし見得みえを切っていた


蜘蛛の巣のような紙吹雪がスパイダーマンのように手の平から発射され、観客席まで吹き飛び散っている




「あなたにここへ押し込まれている所を誰かに見られていたら、私の評判はすでに傷ついてしまっているわよ」



「俺達なら乗り越えられる」



アリスはもう返す言葉もなかった、ここは母に教えられた通り憤慨して立ち上がりツンと顎をあげて立ち去るべきなのだろう



「仮に私があなたの求婚をお受けしたとしたら、どうなさるおつもり?」



アリスは純粋な好奇心に負けて非の打ちどころのない、礼節な言葉遣いをもう失っていた



なんと言って彼は切り抜けるつもりか、お手並み拝見といった所だ



財産に興味が無いなどと言っておいて、矛盾が出てきたらつついてやろうと思った



「君を俺の牧場へ連れて帰る 」



彼の視線が鋭くなった、琥珀色の目が薄暗い中で狭められ輝いた、アリスはその様子をなぜかうっとりと見つめた




「すぐに近くにある小高い丘の教会で、今夜にでも結婚式をあげる。心配いらない牧師は俺の同級生だ。翌日街の市役所に行って入籍する」



アリスは呆れた風に「はぁ?」と当惑して目と口を大きく開け顔を傾けた



「披露宴もウエディングドレスもなしで?お花も飾ってもらえないのかしら?」



「君が盛大にやりたいならいくらでも金を出す、でもそれは後日でいい、俺の家の離れにバラの温室がある、そこは天井がガラスばりで年中常夏の温度だ・・・そこで世界中のバラを育てている、その真ん中に俺がいつも仮眠する東屋あずまやがある」




クスッ・・・・

「続けて 」



たとえ作り話だとしても、アリスはその話が素敵だと思った。眼下の歌舞伎よりもロマンチックに思えた




「結婚初夜はそこでする 」



彼はアリスを見つめてハッキリ言った、アリスはごくんと唾を飲んだ熱いのはきっと目下の劇場の熱気のせいだ




「月明かりの下で一糸まとわぬ君を崇めたい。きっととんでもなく美しい 」




体がこわばり自分が興奮しているのがわかった



彼の熱がアリスを包む


彼の存在がアリスを包む



顔の輪郭がはっきりわかる、さっきからわかっていたが彼はハンサムた。そしてとても魅力的な男性だ



彼の自分を見つめる視線は・・・・アリスの心臓に胸骨を叩かせる



今やこのボックス席の空気には二人の秘密と興奮が漂っていた



二人の間に数10センチの空間があっても、北斗の体温を感じられる気がする。おそらくここを出れば二度と会えない男性なのに




「これどうやってるんだ?」



北斗はアリスのアップにした髪の毛を眺め、顔周りに可愛らしくカールして垂らしている巻き毛を指でつまんで、まっすぐ下に伸ばした



指を離したとき「ピョン」とアリスの髪がバネのように顔周りに戻ると、興味深そうに目をパチパチした




「・・・ヘアアイロンで巻いてるだけよ?」



今度は反対側の巻き毛を指でつまみ下に引っ張って離す・・・・


なにが面白いのか何度も同じ手順で、北斗はアリスの巻き毛を下に引っ張ってもてあそんでいた



彼の身体がすぐそばにあるせいで落ち着かない、自分の身体が彼にふしだらに反応している



―バレませんように―



アリスは火照った頬が気付かれないよう願った



「・・・そうやって巻いた髪を全部伸ばしてしまうおつもり?私のヘアスタイリストの二時間の努力が無駄になるわ 」




「鬼龍院を愛しているのか?」




本当にこの人には驚かされる。これには自信を持って答えられる



「いいえ・・・これっぽっちも・・動物保護団体を愛しているかと聞かれた方がマシだわ 」




アリスは再び手紙の内容を思い出して心が痛んだ








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