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チャクラ宙返り
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戦争に備え動き始めようとした刹那、うちは一族の生き残りがいたという思いもよらぬ事態が発覚した。
戦争とミズノの処遇──二つの議題が里をゆらすのだった。
──木ノ葉・会議室
ミズノ達が解散したすぐ後、上層部達の会議は開かれた。
扉が閉まる音が響き、部屋は一層静まり返る。
前の卓に控えるのは綱手、コハル、ホムラ。
長い卓にはシカク、シカマル、いのいち、ヒアシ、カカシ、ガイ、里の要職、そして暗部。
全員の視線が5代目火影・綱手へと注がれる。
綱手は組んだ指に額を押し当て、低くゆっくりと告げた。
「…以上が…うちはミズノについての報告だ」
ホムラが眉間に皺を寄せている。
「まさかうちは一族の生き残りがもう一人いたとはな。…放置は危険だ」
コハルは頷きながら、視線を伏せて心中でつぶやく。
(ヒルゼンめ…何を考えていた。…奴にはあの件を知られているに違いない)
コハルは目線を上げ、語気を強める。
「うちはの血筋は、扱いを間違えれば火種になる」
ヒアシが腕を組み、冷静に言葉を選ぶ。
「現状…警戒は避けられん。
加えて先の聞き取りの場で、うちはミズノは自ら“今は話せない”と何度も言明している。何か隠しているのなら監視体制は必須だろう」
「同感だ」
いのいちが続ける。
「しかも、彼女は万華鏡写輪眼を開眼している。監視付きの拘束が望ましいと思うが」
周りの反応を伺いながら、冷静に分析していたのはカカシだった。
(……マダラが話していたことは本当だったみたいだな。イタチは里の命令で一族を惨殺した…。
三代目は、なんらかの形でその事実を知ったミズノを上層部から守っていたのか…)
カカシは言葉を繋ぐ。
「彼女は罪をおかしたわけじゃない。うちはだから…という危険視だけで処遇を決めるのは、得策ではないと思いますが」
しかし、ホムラがすぐに反論する。
「だが、血は争えん。何か企みがあるやもしれぬ。
うちはの者は常に大きな力を秘め、災いをもたらしてきた。今回もうちは一族の過去からの因果が原因で戦争になるのだぞ!」
ガイはすかさず身を乗り出し、真っすぐな眼差しで更に反論した。
「ミズノのことは俺が最も近くで見ていた!
ミズノは仲間思いで信頼できる忍だ!!
木ノ葉の“若き力”を信じることこそ、我ら大人の役目じゃないのか!」
全体を俯瞰し、静かに様子を見ていたシカクが口を開く。
「今のところ…うちはミズノが反逆や謀反を企てていた形跡はない。
ただ、うちは一族の生き残りがいたという情報に他里が過敏に反応するのは間違いない。
感情論よりも…噂が一人歩きする前に、里として彼女の対応を固めることが先決だ」
綱手はしばし沈黙し、慎重に言葉を繋ぐ。
「うちはミズノは…三代目が自ら保護していた。
何か重大な理由が裏に隠れているはずだ。
戦争を控え、忍連合を結成した今、隠し事は許されない。
この件は緊急の五影会談を要請し、私が責任を持って各影に説明する。
シズネ、今すぐに五影に伝令をだしてくれ」
「はい!」
シズネは立ち上がり、すぐさま会議室から出て行った。
「五影会談で各影の意見を聞き、正式な処分を下すまでうちはミズノは“監視付きの保護対象”とする。
ミズノには私から自宅謹慎を命じてある。
監視は日向と暗部のツーマンセルで編成。
…手荒な事はするな」
綱手は皆を見渡しながら告げた。
コハルとホムラは密かに視線を交わし合う。
(奴には目を光らせておかねばならん。情報を漏らしたときのことも考えておかねばなるまい…)
ホムラは深いため息をつき、低く呟いた。
「火は油断から燃え広がる…火影、お前の甘さが仇とならぬことを祈る」
「………」
綱手は視線を落とす。
その瞳に宿る言葉は、誰にも届くことはなかった。
「では…うちはミズノの件は五影会談へ委ねる。
次は、戦争に向けた作戦会議に入る。
まず忍具と食料の備蓄を始めよ。忍を戦闘部隊と支援部隊に二分割して、戦闘部隊の小隊の組み方を検討するのじゃ。
全ての忍のリストをここへ」
沈黙を切り裂いたコハルの言葉を皮切りに、会議は戦争への協議へと移っていった。
──雨の滴る、薄暗い地下の広間
石の床に蝋燭の明かりが揺れている。
創設者である大蛇丸を失った音隠れの忍たちが集まり、蝋燭の火を囲んでいた。
そこへ仮面をつけた男が音もなく現れる。
「貴様…!!何をしにここへきた!!」
一人の忍が立ち上がり刀を素早く男へ向けた。
仮面の男は微動だにせず、落ち着いた声で答える。
「…お前たちに“選択肢”を与えにきた」
幹部たちは顔を見合わせてざわつく。
「選択肢だと?…どういうことだ」
仮面の男はゆっくりと静かに言葉を続けた。
「木ノ葉に“うちは”の生き残りの女がいることがわかった。しかも奴は万華鏡写輪眼を開眼している」
場は騒然となる。
「馬鹿な!あのガキ以外、うちは一族は滅んだはずだ!」
「まさか…隠していたのか?
…そういう抜け目のない真似は大国らしいな…」
「しかし…万華鏡写輪眼、もしそれが本当なら…」
仮面の男はさらに低い声で畳みかけていく。
「近いうちに再び戦争が始まる…。
忍界は混乱に包まれるだろう。
その前にうちはの眼を手に入れれば、お前たちが戦争の主導権を握れるかもしれん。
そして音隠れの名は一気に上がり、里の力を増強する大きな好機となる。
女の処遇で木ノ葉は揺れ、その件で緊急五影会談が行われる。火影のいない今が狙い目だ」
老忍が眉をひそめた。
「何故それをワシらに教える?…目的はなんだ」
仮面の男ははっきりと告げる。
「忍界の秩序の“行く末”を見たいだけだ…。
この機会を利用するかどうかは、お前たち次第だ」
蝋燭の火が一斉に揺らめき、音隠れの忍たちの胸に甘く危うい興奮が灯っていく──。
「…皆冷静になれ。罠かもしれん!
もし真実だとしても、失敗すればワシらは終わりだ」
すぐにもう一人がぽつりと呟く。
「だが、大蛇丸様を失った今の俺たちは…ただの“残骸”だ。このまま大国の影に隠れ続けるのか?」
彼らの間に沈黙が落ちる。
仮面の男は一人ひとりの顔を見回しながら、囁くように言った。
「失敗を恐れ、疑い、何もせずにいれば今が続くだけだ。
だが、一手で流れを変えることができれば”操る側“になれる。機会は何度も巡ってくるわけではない」
再び沈黙が流れる。
誰かが拳を握った。
「……罠ではない保証はあるのか」
仮面の奥で男の声だけが笑う。
「動けばわかる。お前たちに必要なのは決断だけだ」
老忍は、疑念を宿した瞳を緩めない。
「……力を求めた先に、何が残る。
大蛇丸様がそれを身をもって証明したはずだろう!」
だが、その言葉を聞き流すように若い忍が立ち上がった。
「ふん、言葉ばかり並べても何も変わらねぇ!
このまま腐るくらいなら…俺はやるぞ!」
他の忍達も互いに視線を交わし、戸惑いながらもうなずき、決意の表情を見せ始める。
男は一歩退き、薄く笑んだ。
まるで、すべてが自分の掌の上で転がっていることを確かめるように。
その瞳の奥には、計算された思惑が宿っていた──。
五影会談へ出発する直前。
綱手、シズネ、カカシ、そしてシカクの四人が静まり返った会議室に集まっていた。
「……五影会談の伝達は完了した。今から立つ」
綱手の声は静かな決意を帯びていた。
シカクが腕を組み、眉を寄せている。
「綱手様が不在の間、最も懸念されるのは九尾の人柱力、ナルトだ。
ナルトはマダラの標的。五影会談中に奴が動く可能性がある」
その言葉にシズネは警戒し、表情を引き締めた。
シカクは続ける。
「先ほど雷影から伝達があった。
マダラの狙いは九尾だけではない、八尾も標的にしている。
それを踏まえ、ナルトを“尾獣のチャクラコントロール修行”の名目で雲隠れの“亀島”へ送り、八尾の人柱力・キラービーと共に保護するという。
戦争のことは二人には伝えず、マダラから隠すとのことだ。確かに…里に残すよりは安全だろう」
「ナルトのことだ…戦争が始まると知ったら、仲間を守るために無茶をしすぎるでしょうからね」
カカシは小さく息を吐く。
「……カカシ、ナルトに私からの任務としてすぐに指示を出せ。ヤマトと共に、護衛を頼む」
「…了解しました」
綱手はカカシに命を下し、シカクを伴って鉄の国へと向かっていった。
──数時間後、阿吽の門前
ナルトはカカシ、そしてヤマトと共に雲隠れの里へと向かう準備を終えていた。
背中には小さな荷と、計り知れない重い決意。
カカシがそっとナルトの肩に手を置く。
「…じゃあ行くぞ」
ヤマトも頷く。
「…よし!!やってやるってばよ!!」
追い風が木々を揺らしながら、彼の背中を押すように吹き抜けていく。
ナルトは、力強く歩み出していった。
──3日後、鉄の国・五影会談
吹雪が荒れ、氷の風が会場の外壁を叩いている。
雪深い中立の地で五つの影が集っていた。
その場に漂う空気は、外の寒気よりもさらに冷え切っている。
各里の影たちが円卓に並び、その背後には護衛たちが控えていた。
うちは一族の生き残り、ミズノについての議論が始まる。
雷影・エーが低く鼻を鳴らし、口を開いた。
「全く…木ノ葉は次から次へと問題ばかりだ!!
戦争準備の最中にうちはの生き残りなど野放しにはできん!あいつらは危険だ!何をしでかすかわからん!処分するべきだ!!」
その隣で土影・オオノキは椅子に体重を預けたまま、ぼそりと呟く。
「うちはと聞くだけで頭が痛くなる…。早々にカタをつけねばならん話じゃぜ」
風影・我愛羅は閉じていた瞳を静かに開いた。
「うちはだからといって…彼女に罪はない」
水影・メイが手を組み、綱手をじっと見つめた。
「風影様の言う通り…。うちはというだけで罪人扱いし、処罰するのは早計です。ですが…この件、木ノ葉はどういった対応を?」
綱手は深く息を吐く。
「内部の会議で“監視付きの保護対象”とした。
生き残った理由は不明だが、先代が自ら保護していたのだ。何か相当な理由があるのだろう」
オオノキが鋭い視線をむける。
「ならば、ヒルゼンがなぜ保護していたのか…理由を詳しく説明してもらわんと困るな。この時期にそんな秘密が出てくるとは、信用に関わる話じゃぜ」
エーが眉を吊り上げる。
「ヒルゼンめ…何を考えていた…!昔から木ノ葉は甘すぎる!!
ワシらを愚弄するにも程があるぞ!!」
綱手は瞼を伏せ、静かに拳を握りしめた。
(三代目がなぜミズノを守ったのか……その理由はわからない。だが…あの人が差し伸べた手に、意味のないものなんて一つもなかった)
ゆっくりと顔を上げた綱手の表情には静かな怒りと、譲れない信念が宿っている。
「“うちは”というだけでミズノを断ずるのは間違っている。彼女を守っていた三代目の想いを、何も知らずにいた私たちが簡単に切り捨てていいはずがない!」
一瞬の静寂が広間を包み、外から微かに雪の吹雪く音が聞こえてきた。
メイが控えめに言葉を発する。
「……綱手様のお気持ちもわかります。私もヒルゼン様が何らかの理由で保護していた罪のない子を“うちは”というだけで断じたくはありません。ですが…詳しい事情がわからないのに安易に受け入れるわけにはいきません」
護衛の忍たちが視線を交わし合い、重苦しい空気がいっそう濃くなった。
静寂の中で、綱手は皆を見据える。
(“優しさ”を私はもう否定しない。
それがどれほど愚かに見えようとも、貫いた人がいた。
火影の私が…先代の意志を継がずして誰が継ぐ)
「……彼女は、“うちは”である前に木ノ葉の忍だ。
三代目が助けた命には必ず意味がある。私はその意志を信じる」
その瞳は僅かな迷いを抱えながらもなお、揺るぎなかった。
雷影が机を拳で打ち鳴らす。
「その“情け”が災いを呼ぶかもしれんのだぞ!火影!!」
綱手は眉間に皺を寄せ、わずかに視線を落としたまま黙り込む。
激しい応酬に決着はつかず、話し合いは深夜まで持ち越されていくのだった。
──ミズノの自宅
深夜。
月光が薄く部屋を照らし、風が窓を鳴らしていた。
ベッドの上、ミズノは膝を抱えながら微かに震える指先を見つめていた。
自宅待機という名の“保護と監視”。
家の周囲では日向と暗部の忍が見張りを続け、わずかな音にも敏感に反応している。
(私に対しての信用は…ほとんどない。うちはという名だけで、皆の視線が敵に変わる…)
静かな悲しみと悔しさが胸の奥でせめぎ合う。
幾度も巡る思考の中、外の空気がわずかに揺れるのを感じた。
耳を澄ますと、風の裏に混じる複数の足音、短い指令の声──。
(様子がおかしい…)
ミズノは立ち上がり、窓際に身を寄せる。
闇の中、阿吽の門の方角へと忍達が走っていくのが見えた。
すぐに扉の外から、控えの忍が低い声で告げる。
「……うちはミズノ、大人しくしていろ」
「わかっています…」
そう答えながらも、ミズノは静かに目を閉じた。
チャクラを感知しようと集中する。
闇に紛れた無数の気配──見知らぬ、荒々しい気配。
そして混ざる、仲間たちのチャクラ。
(この知らない気配…まさか敵襲?)
その時、遠くで爆音が響く。
(!!今の音は…?)
ミズノは扉に一歩、近づく。踏み出した足に一瞬だけ迷いが宿った。
しかし、胸に強く灯る想いがそれを許さない。
「…里に何か起きているんですか?」
「…お前に話すことは何もない。静かにしろ」
「………」
(ナルト君のチャクラを感じない。綱手様のチャクラも…。どうして…?このままじゃ、また里が…)
脈打つような鼓動。胸の奥が締め付けられる。
躊躇いが指先を震えさせるも、己を奮い立たせるように扉へ手をかけた。
瞬間、護衛の二人が厳しい表情で目の前に立ちはだかる。
「命令に背くつもりか!!」
「中に戻れ!」
ミズノは息を呑み、俯く。そして──その眼を静かに赤く染めた。
「……ごめんなさい。だけど、私は……」
囁くような声と共にミズノが顔を上げる。
すると彼らの意識が瞬時に奪われ、糸が切れたように地面へと崩れ落ちた。
ミズノは息を詰め、チャクラを消す。音もなく夜の闇の中へと飛び出した。
冷たい風が頬を撫で、月明かりが雲間から自身を照らす。
(イタチお兄様が守ったこの里を、ナルト君が守ったこの里を…めちゃくちゃにはさせない!)
彼女は迷いなく、里の門へと走り出した。
──阿吽の門
夜の静寂を切り裂くような爆音が轟く。
音隠れの忍たちが闇の中から次々と姿を現し、木ノ葉の仲間達がその侵入を必死に食い止めていた。
ヒナタの白眼が光る。
「正面に二十、右に十、後方に五…増援、まだ来ます!」
「ネジ!正面を封じろ!!リーは右へ回れ!」
シカマルの指示が飛んでいた。
その喧騒を前にミズノは足を止める。
胸の奥に渦巻く葛藤が喉を締めつけた。
──ふと、イタチの顔がよぎる。
(……“うちは”が恐怖として語られることも、イタチお兄様の想いが無意味になることも我慢できない。
この手で証明してみせる。私たちは”悪”じゃない!)
深く息を吸い込み、静かに印を結ぶ。
「口寄せの術!」
地面が揺れ、白煙と共に現れたのは漆黒の毛並みと赤い双眸を持つ巨大な猿──猿鬼(えんき)。
その足が地を踏み鳴らすたび、周囲の空気が震える。
門がきしみ、空気が張り詰めた。
木ノ葉と音隠れの忍たちは一斉に動きを止め、視線が一点に集中する。
「な、なんだあの馬鹿でかい猿は!?」
「…あいつだ!うちはの口寄せだ!」
猿鬼は辺りをぐるりと見渡した後、自身の肩に立つミズノをみつめて、にやりと笑う。
「騒がしいと思ったら…こりゃまた派手にやってんな、ハニー」
「ハ、ハニー……!?」
周囲の忍たちが困惑と戸惑いでざわめく。
ミズノは冷静に、短く言葉を返した。
「猿鬼、あなたの力を貸して。
敵を誰一人、里に侵入させないで。
そして木ノ葉の忍を…みんなを守って」
澄んだ声に宿る意志が、まっすぐに猿鬼の耳に届く。
猿鬼は笑みをおさめ、赤い眼に光を灯した。
「……お前の頼みなら断れねぇな。
任せろ。この門に近づく奴は、一人残らず叩き潰してやるよ!!」
大きな叫びとともに地を拳で殴りつけると大地が波打ち、敵の列が大きく後退した。
その威圧感に、敵も味方も息を呑む。
「こいつ……なんて力だ…!」
すると、ミズノが猿鬼の肩から戦場の中央へと着地する。
「ミズノ!まさか一人で戦うつもりか!!」
ネジの叫びが響く。
「一人でなんて…そんな事させない!私たちも一緒に戦う!」
ヒナタが構え、リーも続いて拳を振り上げた。
「そうですミズノさん!!みんなで戦いましょう!!」
ミズノは彼らを見渡し、小さく微笑んだ。
「ありがとう。でも…これは私の戦い」
再び前に向き直ると、ネジが声を荒げた。
「相手の数が多すぎる!一人では無理だ!!
それに、綱手様の命令に背くつもりか!」
「わかってる。でも、もう決めたの」
ミズノの眼が静かに燃えるような熱を帯びる。
「猿鬼!絶対に誰も手を出さないようにして。
もちろんあなたも手を出さないで!」
「……止めても聞くわけねぇな。
全く相変わらずだなハニーは…だからほっとけねーんだよ!」
猿鬼は門の前にどっかりと立ち、両腕を広げる。
瞬間、炎が地を這い巨大な檻を形づくった。
「お、おい!?なんだこれは!?」
猿鬼は木ノ葉の忍達を次々と炎の檻の中に放り込んでいく。
忍達は印を組み、脱出や攻撃を試みるも術が発動できない。
「術が使えない…!一体どういうことだ!」
「その炎の檻の中はチャクラを練ることはできねぇ」
腕を組み、真面目な表情で告げる。
「火の性質を応用した封印術だ。……ま、術が使えないのは、炎が燃え尽きるまでのせいぜい三十分くらいってとこだ。
諦めてお前らはその中でおとなしくしてろ。ハニーが戦いやすいようにな」
「な、なんだと!?出せ!」
「まさか音隠れと通じてるんじゃないだろうな!
俺たちを動けないようにして、わざと里を襲わせる気じゃないのか!?」
「やっぱり“うちは”は危険だ!!」
声が錯綜する。
すると、ヒナタが叫んだ。
「違う!ミズノさんはそんな人じゃない!!里を守るために…みんなを守るために戦おうとしているんです!!」
リーは拳を震わせている。
「ミズノさん…どうして一緒に戦わせてくれないんですか!」
ネジは無言で白眼を光らせ、その意思が決して揺るがないと悟ったかのようにミズノの背を見つめていた。
「三十分であの人数を止めるというのか…」
ミズノは心の奥に仲間たちの声を沈めたまま、音隠れの忍達へと鋭く視線を定める。
万華鏡写輪眼が赤く輝き、空気が凍った。
音隠れの忍たちがざわめき、次々と声を上げる。
「万華鏡写輪眼…!やはりあいつの言っていたことは本当だったようだな!!」
「木ノ葉め…力を独占しやがって…!」
「あの眼を奪えば…俺たちの流れが変わる!!」
その声に怒りと悲しみがぶつかり合い、ミズノの表情からすべての温度が失われていった。
「私の眼が狙いだったんだ…また…“うちは”のせいなんだね…」
その呟きをミズノは自分の胸へと押し込め、眼を閉じる。
静まり返った空気。
ただ、仲間たちの視線だけが彼女に向けられていた。
その沈黙を打ち破るように、鋭い怒号が響く。
「殺せ!!あの眼を奪え!!!」
大勢の敵が、刃のような殺気を向けて突進してきた。
ミズノは素早く眼を見開き、向かってくる忍達に次々と視線を合わせる。
「うっ…!」
呻き声を残し、数人の身体が倒れ伏していった。
一瞬、音隠れ達の動きが止まるもすぐに指示が飛ぶ。
「隊列を崩すな!!あいつの視界の範囲に入ってはならん!眼を見るな!!」
ミズノは素早く印を結ぶ。
「土遁・土龍弾(どりゅうだん)!」
地を這う龍が現れ、敵陣を薙ぎ払う。
すぐさま、次の術を繰り出す。
「火遁・豪火球の術!!」
巨大な火球が飛びだした。
彼らは炎を避けながら跳躍し、背後から攻撃を仕掛ける。
ミズノは振り向かず、一瞬で半歩沈む。膝で顎を打ち、相手を地に伏せていった。
「な、何だ……こいつは…」
ミズノの圧倒的な強さに、音隠れの忍達は怯み始める。
その隙にミズノは印を結ぼうとしたが、ふと手が止まった。
今、これを使えば自分に対する疑念をさらに深めることになる。
けれど──
(……証明するって決めたんだ。私の全てをかける!)
ミズノは揺れる思いを断ち切り、素早く印を結んだ。
「木遁・修羅煙爆樹(しゅらえんばくじゅ)!!」
地面から無数の蕾がついた木の幹が走り、敵を縛り上げていく。
ミズノが両手を打ち合わせると蕾が一斉に弾け、爆風が走る。
衝撃だけが抜け、意識を刈り取っていった。
意識を失った者たちが次々と木の枝に巻かれ、動きを封じられる。
「木遁だと!?どういうことだ!?」
「初代しか使えないはずの木遁を…?柱間細胞をうめこまれているのか?一体あいつは何者なんだ!」
木ノ葉の忍たちは戸惑いの声を上げるも、炎の檻の中でその戦いをただ見届けるしかなかった。
仲間たちの顔には驚きと戸惑い、そして言葉にならぬ焦燥が浮かんでいる。
「なぜミズノが木遁を…!?」
ネジは白眼でミズノの動きとチャクラを読み取っていた。
(無茶をしすぎだ…あんな戦い方、長くは持たない!)
シカマルは視線を細め、戦場全体を俯瞰する。
「木遁が使えるなんてどういうことだ…?」
彼女の動きを一瞬も見逃さず、思考の中で図を描くように戦況を整理していった。
(判断が早い…素早く戦線を見極めている。動きに何一つ無駄がねぇ…)
「あいつ…相当な切れ者だぞ。一体何を隠してやがる…」
ヒナタは両手を胸の前で握りしめている。
戦うミズノの背中は、まるで孤独そのもののように見えた。
(助けたい…力になりたいのに…)
ヒナタの瞳が揺れる。
「ミズノさん…」
皆の視線を集めながらミズノは戦い続けていく。
力を使い続ける眼から血の涙が滴り落ち、身体中に痛みが広がっていた。
「…まだ、大丈夫…あと少し……!」
ミズノは静かに呟き、万華鏡と樹で闇を貫いていくのだった。
喧騒の外れ、岩の上に立つ仮面の男──うちはマダラは静かにその戦いを注視していた。
「“うちは”でありながら、木遁までとはな。……随分と興味深い存在だ。その出自も含めて確かめるとしよう。…だが、揺さぶりをかけるにはこれ以上ない駒になる」
その口元には皮肉げな笑みが浮かぶ。
「…予想以上に面白くなりそうだ」
──ミズノは最後の一人を縛り上げた。
荒い呼吸を繰り返しながら、ふらつく足取りで猿鬼の元へと戻っていく。
「……猿鬼…ありがとう…みんなをその檻から解放して……」
額には大粒の汗、虚な眼。
赤く滲んだ涙が頬に跡をつけ、蒼白な顔には明らかな疲労の色が刻まれている。
猿鬼は黙ってミズノを見下ろし、短く息をつくと口を開いた。
「だいぶ無茶したな。一人で背負いすぎだ…そろそろ俺は帰るが…」
後ろに振り返り、木ノ葉の忍たちへ眼を向ける。
「おい、お前達…こいつは命懸けで戦った。守り、証明するためにな。
あれだけの敵を一人で止めたんだ…少しはわかってやれよ」
その言葉を最後に、猿鬼の術は静かに解かれ炎の檻が音もなく消えていく。
猿鬼の姿もまた、白煙に紛れて霧のようにその場から掻き消えた。
ミズノは重い足取りで皆の方へ足を進める。
「……みんな、大丈夫……?手荒いやり方をして……ごめんなさ……」
言葉を終える事なく、彼女の身体は力を失いその場へ崩れおちた。
「ミズノさん!!」
ヒナタが叫び、ネジとリーと共に駆け寄る。
「医療班!! 早く! お願いします!!」
リーの声が響き、医療班は戸惑いながらも急いで担架を運び込む。
──ほどなく、ミズノは担架にのせられ運ばれていった。
運び込まれたミズノの傍らに、サクラがすぐに駆け寄る。
「チャクラは…ほとんど残ってない……筋肉も神経系もボロボロ……」
顔をしかめ、青ざめた表情でサクラは呟いた。
(まるであの時の綱手様みたい……こんなになるまで……)
胸の奥を締めつけられながらも、彼女は震える手をミズノの身体の上に重ねる。
すぐさまシズネたちと目配せし、治療を始めていった。
──鉄の国、五影会談場
重厚な扉が勢いよく開かれ、若い忍が駆け込んでくる。
「失礼します!! 緊急報告です!!」
声が裏返るほどの緊迫感に、場の空気が一変した。
「木ノ葉が……百を超える音隠れの忍部隊により大規模襲撃を受けました!!」
「なに!? 音隠れだと!?」
椅子から荒々しく立ち上がったエーの声が部屋に響き渡る。
「何の真似だ!? なぜ木ノ葉に!」
我愛羅が目を細める。
「……狙いは、“うちはミズノ”だな」
メイも緊張を隠せない。
「情報が漏れていたのですね…」
「シカク!今すぐ里に戻るぞ!!」
綱手は鋭く声を放ち、足早に場を去ろうとした。
「お待ちください!火影様!!」
伝令役の忍が叫び、慌てて制止する。
「すでに…音隠れの忍たちは、うちはミズノ一人によって全員拘束されたとの報告が……」
「なに……?」
綱手が問うより先に、エーが吼えた。
「百人を超える敵襲だぞ!しかも大蛇丸が実験台にしていた得体の知れぬ奴らだ!それを一人でだと?
寝言は報告に入らんぞ!」
若い忍は萎縮しながらも、絞り出すように口を開く。
「事実です…!更にうちはミズノは木遁を操っていたと…」
その瞬間、場の空気がぴたりと凍りついた。
沈黙の中、我愛羅が呟く。
「木遁だと…?」
メイとオオノキは言葉を失い、視線を重ねる。
「馬鹿な……!」
エーは信じられぬといった表情で卓に手をついた。
「……ミズノ……」
綱手のその囁きが会議室の静けさに紛れていった。
──静寂が戻った木ノ葉、彼女はまだ目覚めない。
だがその力、その眼は、忍界に波紋を広げていくのだった。