「それはそれとして、第1回! 神器検討会議~♪」
「わーい!」
「は、はい……」
夕飯をとったあと、私たちは客室で話をすることにした。
いつもと違う部屋で緊張感を持って臨みたい……という思いもあるが、正直ただの気まぐれでもある。
ノリノリの私とエミリアさんに対して、いまいちノリの感じられないルーク。
今は悩みを抱えている最中だから、それも仕方が無いのかな?
「わたし、今日は大聖堂で黙々とお掃除をしていたんです。
だから、頑張ってたくさん発言しますよ!」
「よろしくお願いします!
……でも、今回は剣の話ですけどね」
「発言することはあまり無さそうでした!?」
「あはは……。
えっと、まず私の作りたい神器の形は『剣』です。
みんなご承知の通り、ミラエルツでアドルフさんに作ってもらった『なんちゃって神器』の剣をベースにします」
「おぉー!
アイナさん! イメージしやすいように、現物を出しておきましょう!」
「あ、そうですね。それじゃルーク、出すから受け取ってー」
「はい、いつでもどうぞ」
アイテムボックスから『なんちゃって神器』の剣を出して、そのままルークに渡す。
私が一人で持つには、やっぱり重いんだよね。体勢を崩してしまうので、誰かの補助が必要なのだ。
「うーん……、やはり立派な剣ですよね。
最初はアイナさん、何て無駄遣いするんだろうって思っていたんですが、神器にするなら納得です」
「まぁ、そう思いますよね……。
あのときはまだ言うつもりは無かったので、肩身の狭い思いをしながら作ってもらったわけです」
「では、この剣はこちらに置いておきますね」
「うん、よろしく。
まだ模造剣の状態でナマクラなんだけど、一応怪我をしないように注意してください」
「はーい!」
「はい」
「さて。
それでは参考に、以前私が見た『神剣デルトフィング』の情報を出しますね」
そう言いながら、以前鑑定した結果を宙に映し出す。
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【神剣デルトフィング】
形状:神器<剣>
属性:水
熟練:72/100
特殊:超斬撃 全攻撃補正 不死特効 悪魔特効 炎特効 全種族攻撃UP 状態異常耐性UP 装備限定<英雄>
加護:氷の加護
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「ひゃぁ……」
「おお……これは凄い……」
「凄いですよね!
これを見たら、作りたくなっちゃいますよね!?」
「そうですね……。
もし自分に作れる力があるなら、確かに!」
「『装備限定<英雄>』……ですか。
やはり選ばれた者にしか使えない、ということなんですね」
ルークは憧れを頂くように、ウィンドウを眺めていた。
『英雄』という響きには、やはり思うところがあるのだろう。
「誰でも使えたら、それはそれで危険だしね。
使える人を限定する代わりに強くする、誰でも使えるなら弱くする……うん、そんなものだよね」
「そうですね。優れた業物を使うには、自らも優れていなければ……」
「うん、みんな頑張ろうね。日々、上を目指しましょう。
さて、今回は新しい神器の『設定』を決めたいなって思います」
「全部を真似したら、同じ剣ができちゃいますもんね。
ここはやはりグレイトで、スペシャルな、オンリーワンを目指しましょう!」
「でも、しっかり使える感じでお願いしますよ!」
「そ、それは大丈夫です!!」
「本当ですか!?
……っと、それでは属性から決めましょう」
「光属性ですね!」
「エミリアさん、早い!」
そうは言うものの、私のイメージも光属性である。
一番聖剣っぽいし、格好良く感じる。……これも、一種のステレオタイプだろうか。
「そうですね、私も光属性が良いかと思います。
うん、格好良いですね」
「ルークもそこ!?」
「え? ははは、やはり正義っぽい感じがしますからね。
私は、神器という響きからは光属性を連想します」
「そういえば、世界にあるっていう3つの神器の属性は分かる?」
「『神剣デルトフィング』は水属性、
『神剣カルタペズラ』は火属性、
『神剣ナナフヴァドス』は土属性になります」
「おお、さすがルークは詳しいね。
……私に至っては、3つ目の神器の名前、今初めて知ったよ……」
「私は1つしか知りませんでした……。
でもこの流れだと、何となく風属性にしても良さそうですね?」
「いやいや、別に流れを踏まえる必要は無いですよ。
それにシリーズ化をするなら、私だって一通り作りたいですし」
「……と言うと、作る神器は1つでは無いのですね?」
「まず1つ、作ってみてから考えようかなって。
大量生産するものでも無いけど、いくつか作るくらいなら問題ないでしょう」
「そうですね。
何故か今までは剣ばかりですけど、別に杖とかもあって良いですよね」
「そういえば、何で剣ばっかりなんでしょうね?」
うーん……。今までの3つを作った人は、剣が好きだったのかな?
でも今回、私が作ろうとしているのも剣なんだよなぁ……。
現存する3つをそれぞれ別の人が作ったと仮定するなら、全員が前例に倣っていれば、全部が剣になってしまう。
もしかしたら1人につき1つしか作れない、とか……?
でもまさか、作った人の魂が必要だなんていうのは無いよね? 素材の一覧にも無かったし。
「……何でも良いというのであれば、私はやはり光属性を推しますね」
「それじゃ、属性は光属性にしましょう!
いや、素材でどうなるか分からないので、暫定だけど……」
「えー? そうなんですかー?」
「ああ、素材をまだお見せしていませんでしたね。
『神剣デルトフィング』についてはこちらになります」
そう言いながら、以前鑑定した結果を宙に映し出す。
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【『神剣デルトフィング』の作成に必要なアイテム】
・オリハルコン×10
・ミスリル×3
・氷竜の魂×1
・浄化の結界石×1
・氷の魔導石×24
・光の魔導石×8
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「おお、これは……」
「付けられる属性は多分、竜の魂と魔導石が影響すると思うんですよ」
「……さすが神器。竜族の魂が必要なのですか……。
しかし、それはそもそも入手できるものなのでしょうか……?」
「さぁ……?
でも作った人はいるわけだから、何とかなるでしょう!」
「仮にドラゴンを倒したところで、普通は『魂』なんて手にできませんよね……。
ドロップみたいに、ぽろっと落ちてくれれば良いんですけど」
「そもそも、物体なのかも分かりませんからね……。
今までに何回か見たような、不思議な光みたいなアイテムかもしれないし……」
「でも、それ以外のアイテムは何となく見覚えがありますね。
ミスリルはもう入手済みですし、魔導石は市場にありますし。
『浄化の結界石』は大聖堂に寄付をすれば作れますし」
「え? 大聖堂でですか?」
「はい。これも魔法道具の1つなんですが、聖職者たちの祈りを込めて作るんです。
ただ、大掛かりな儀式が必要なので、それなりにお金が掛かる……と、言いますか」
つまりは寄付という名の有料、ということか。
でもお金で買えるものであれば、お金を稼げば良いから気は楽かな。
「……とすると、やっぱりオリハルコンと竜の魂がネックですね……。
でも必要な素材が同じとも限りませんし、まずは好きなように『設定』を決めることにしましょう!」
「はぁい!」
「分かりました!」
……神器の『設定』を決める熱い夜は続く。
さぁ、これからが本番だ!
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