「それでは改めて、『神剣デルトフィング』の情報を見ながら進めましょう」
そう言いながら、以前鑑定した結果を改めて宙に映し出す。
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【神剣デルトフィング】
形状:神器<剣>
属性:水
熟練:72/100
特殊:超斬撃 全攻撃補正 不死特効 悪魔特効 炎特効 全種族攻撃UP 状態異常耐性UP 装備限定<英雄>
加護:氷の加護
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「えっと……、アイナさん。
光属性にすると、加護も『光の加護』になるんですよね?」
「多分、そうだと思います。
光属性なのに『闇の加護』とかは……逆に、付けられるんですかね?」
「ははは。思春期でしたら、そういうものに胸をときめかせますよね」
いわゆる中二病というやつを念頭に、ルークが笑って言った。
正反対の性質のものが同時に振るわれる……何とも熱い設定なんだけどね。
「その辺りは、素直な設定にしたいなぁ。
『神剣デルトフィング』は、素直に『剣!』って感じで、ここからは少しいじりづらいんですが……」
「確かに、隙が無い感じがしますよね。
何だか、このままでも良いような気がしてきました」
「ぐぬぬ、エミリアさん! オンリーワンはどこにいったんですか!」
「はっ!? ……でも、全部を変える必要は無いと思うんですよ。
良いところは踏襲して、優先順位が低いところだけ検討してみる、とか」
「ふむ、確かに健全で前向きな案ですね……。
それではそうしましょう」
ひとまず『特殊』の項目を紙に書き出して、補足の説明を追加する。
効果を踏まえてまとめると、こんな感じになった。
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①超斬撃
……切れ味が鋭くなる能力。
②全攻撃補正
……すべての攻撃方法による攻撃力が上がる能力。
③不死特効
……不死者に対する攻撃力が上がる能力。
④悪魔特効
……悪魔に対する攻撃力が上がる能力。
⑤炎特効
……火属性に対する攻撃力が上がる能力。
⑥全種族攻撃UP
……全種族に対する攻撃力が上がる能力。
⑦状態異常耐性UP
……持ち主の状態異常耐性が上がる能力。
⑧装備限定<英雄>
……持ち主を限定する条件。
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「――うん、やっぱり攻撃に偏っていますよね」
「そうですね……。『超斬撃』と『全攻撃補正』が、まず被っていますよね。
『全攻撃』の中には『斬撃』も入っているでしょうし……」
「剣には『斬る』以外の使い方もありますが、この剣の場合は『斬撃』に特化しているようですね」
「とすると、『全種族攻撃UP』と『不死特効』『悪魔特効』『炎特効』も被っていますか。
不死や悪魔には二重の特効になっているのかな……」
「ふーむ……。この剣を作った人、何か恨みでもあったのでしょうか」
「人間種族に対しての効果だったら怖いところですが、特化しているのが不死や悪魔に対してですからね。
浄化のために使いたかったのかな?」
「なるほど、そう考えると聖剣っぽいですね」
ふむふむと頷くエミリアさん。
この構成を見るだけで、何となく作り手の意思が伝わってくる気がする。
でも、果たしてどんな人が作ったのだろうか……。
「同じ感じで特化していくと、構成は大体同じになっちゃいそうですね」
「ちなみにアイナさん、『特殊』の個数を増やすことはできないんですか?」
「それなんですけど、詳しく鑑定してみたら8つが最大みたいなんです。
だから違う効果を付けたいなら、他の効果を消していかないと」
「とほー。なかなか上手くはできていないものですね……」
「とりあえず、被っているものを消してみますか」
……というわけで消したのがこちら。
よくよく見たら、2つしか消せていない。
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①超斬撃
②全攻撃補正
⑤闇特効
⑥全種族攻撃UP
⑦状態異常耐性UP
⑧装備限定<英雄>
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「……アイナさん、『超斬撃』と『全攻撃補正』が被ったままですよ!」
「何だか消すにはもったいないかなって……」
「いやいや、消しちゃいましょう」
私が悩んで残した1つは、エミリアさんにあっさりと消されてしまった。
この思い切り、羨ましい。
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①超斬撃
⑤闇特効
⑥全種族攻撃UP
⑦状態異常耐性UP
⑧装備限定<英雄>
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「……うん。
汎用的な感じを残しつつ、スリムになりましたね」
ちょっと寂しい気がするのは、気のせいだろうか。
『全攻撃補正』っていうのが足りない気がする。……個人的には、やっぱり欲しいけどなぁ。
「それではアイナさん。
消すのは一旦これくらいにして、次はどういうものを増やすか……ですね!」
「そうですね。それじゃルーク、案をお願い」
「え、私ですか?」
「もちろん! 私たちの中で、剣を一番使っているでしょ?
ルークが使うと仮定して、こんな能力があったら良いな、っていうものを教えてもらえると嬉しいな」
「うーん、そうですね……。
私は殺すばかりが剣の使い道だとは思っていないので、斬れ味が調整できると嬉しいです」
「……え? そうなの?」
「例えば人間と対峙した場合、『神剣デルトフィング』を使うことができません。
攻撃力が高すぎて、どうしても相手を傷付けてしまうのです」
「いろいろな用途に使うには難しい……と。
それじゃ『斬撃力変化』みたいな感じで入れてみようか」
「そうするのであれば、『超斬撃』ではなく『全攻撃補正』にした方が良さそうですね。
斬れ味を無くした場合は、鈍器のように使うことができますので」
「なるほど。
でも基本的には斬る攻撃になるだろうから、『超斬撃』は入れておきたいなぁ……」
そう言いながら、改めて『全攻撃補正』と『斬撃力変化』を書き加える。
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①超斬撃
②全攻撃補正
⑤闇特効
⑥全種族攻撃UP
⑦状態異常耐性UP
⑧装備限定<英雄>
⑨斬撃力変化
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「ああっ! わたしがせっかく消したものが復活しちゃいました!」
「ふふふ♪ ……さて、このままいくとあと1つしか入らないね。
あとは何かあるかな」
「そうですね……。
長期戦を考えるのであれば、HP回復や疲労回復などがあると心強いです」
「無限に戦える感じだね!」
ゲームで言うところの、いわゆるリジェネ。
効果自体はちょっと地味だけど、案外馬鹿にできないものなのだ。
現実でそれができるならなかなか良いかもしれない。多分、常時ポーションを飲んでいるような感じになるんだよね?
「……でも錬金術のアイテムとしては、未だに疲労回復のアイテムが作れていないんだよね。
神器の効果とは言え、それは作れるのかなぁ……」
「出来なければ、HP回復だけでも問題ないかと思います。
怪我さえ無ければ、あとは根性ですから!」
「そ、そう……?
出来るかどうかは分からないけど、とりあえず疲労回復も入れておこうかな?」
……そうすると、こんな感じになるか。
──────────────────
①超斬撃
②全攻撃補正
⑤闇特効
⑥全種族攻撃UP
⑦状態異常耐性UP
⑧装備限定<英雄>
⑨斬撃力変化
⑩HP・疲労回復
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「ふむふむ……。
こうして見ると、『闇特効』が少し浮いていませんか?」
「うーん、確かに。作り手の主張を感じませんね。
光属性だから、何となく入っているというか……」
「では『闇特効』を消して『全防御補正』にしてはいかがでしょう。
仲間を守りながら敵を倒す。……うん、実に良い案です」
ルークは頷きながら言う。
なるほど、『守る剣』か。それはそれで、個性が出ていて良いような気がする。
それじゃ、そこを変更して番号も振り直すと――
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①超斬撃
②斬撃力変化
③全種族攻撃UP
④全攻撃補正
⑤全防御補正
⑥状態異常耐性UP
⑦HP・疲労回復
⑧装備限定<英雄>
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……こうかな?
「これは固いね!」
「特に尖っていない分、使い勝手は良さそうですよね」
「私はとても良いと思います」
「うーん、私も結構好きな感じかな? 汎用的に使える武器が好きだから」
例えばゲームなら、汎用的なものよりも特化したものが人気なのは間違い無い。
でもそれは特化させる相手がいるためで、それがいなければ汎用的なものには劣るのだ。
今は特化させる相手なんていないし、恐らくはこれがベストだろう。
「なるほどです。なんだか優しい感じの剣になりましたね」
「優しい……ですか。
なるほど、1つ目の神器にしては良いですね!」
エミリアさんの一言に、私も強くそう思った。
……さて、それじゃひとまず『設定』はこんなものかな?
次はタイミングを見て素材を調べないといけないけど、今日のところはここで終わりにすることにしよう。
「それではお二人とも、ありがとうございました。
これで第1回、神器検討会議を終了します!」
「おぉー、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」
……そのあとは少し雑談してから、それぞれの部屋に戻った。
まずはベッドに寝転がって一息つく。
今までずっと黙っていた分、今日はみんなでお話できたのはとても良かったな。
仮に2回目の神器検討会議をやることになったら、それはおそらく最初の神器を作ったあとになるんだろうけど――
……そのとき私は何をしていて、何を考えているのだろうか。
そして、まわりには誰がいるのだろうか。
私は何となく、今はまだ見ぬ、未来の自分に思いを馳せたりしてみていた。
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