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「は?」
雑草。俗に言う猫じゃらしを持って、まふゆはこう言った。絵名は猫に似てるね──と。
「昨日テレビで見たの」
「何を?」
「猫を」
「そう。」
で、私に似ていた、と。
それで猫じゃらしを用意した、と。
「は?」
「はい、にゃーん」
「は?」
そしてまふゆは用意していたのか、ビニール袋から猫のカチューシャを取り出し、私に取り付ける。
「本当は茶色がよかったけどなかったから、黒で我慢してね」
「馬鹿にしてる?」
「絵名、猫じゃらしだよ〜」
「雑草持ってくるな!」
「…………」
なんだ、その目は、なんだ、その顔は。
優しい、のだ。目が。その、慈悲の心に溢れているような、こちらが申し訳なくなるような目。私は、人間としての価値を無くしてしまったのだろうか。いやこの一晩の間に、何故私はこんな立場になっているのだ。
「何か言われると思って。ほら、おもちゃの猫じゃらし。買ってきたんだよ」
「わーい、嬉しい〜。……ってなるわけないでしょ! なんでそんなもの買ってきてるのよ!」
「絵名が猫に似てたから。自撮りに使っていいよ」
「それ言えばいいとでも思ってるの?」
しかし、写真は撮らせて頂く。カチューシャを付けた私に価値が無いわけない。
「あ、猫じゃらしこの辺に垂らしてくれない?」
「やっぱり撮るんだ」
「うるさいわね、協力しなさい」
「じゃあ……」
またビニール袋の中に手を入れて漁る。私は取り出された物に止まる。
「え……」
「これも付けよう」
「く、首輪……?」
「うん。いるでしょ?」
「かもしれないけどほんとに?」
「付けてあげるよ」
まあ、確かに。猫に付けるなら、いるとは思うけど。コスプレ精神がまあ強いことで。でもそれってチョーカーとかと違って、人間用とかには見えないんだけど。犬用、みたいな。そもそも猫じゃらしは人間に使うものじゃないから、まふゆ理論では今更だったのかもしれない。
「最近の百均って凄いんだね、驚いた」
「そうね……」
「はい、出来た。似合ってるよ」
不意に優しい表情になるまふゆ。
私はその顔に弱い。すぐに許してしまおうという気持ちになってしまう。こんな扱いされてるのに。あれ、案外私ってちょろ……
「絵名」
名前を呼ばれたので、目線を上げる。するとパシャリという音がすぐに聞こえてきた。手に持たれているのは、スマホ。
「え、ちょっ、見せなさいよ!」
「はい」
「盛れてない! 消して!」
「絵名の盛れって別人じゃん……」
「はぁぁぁぁあ!?」
カチンときた。今はどんな顔をされても許せない自信がある。スマホを取ろうと手を伸ばすと、すぐに避けられた。私の行動を理解していたのだろう。
結局、まふゆからスマホを奪い取り、削除することはできなかった。