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「よしっ。なら、樹くんに一度チャンスをあげる」
「えっ?チャンスですか?」
「うん。超ラッキーチャンス。これをどう活かすかは樹くんに任せよう」
「えっ、なんですかそれ」
「今日。透子、このまま連れて帰ってくんない?」
「・・・えっ? えぇ!!??」
まさかそんなことを言われると思ってなくて思わず大声を出して反応してしまう。
「樹くん、声デカッ。ビックリしすぎだから」
「いや、だって、まさか、そんな・・」
さすがに自分も動揺。
「えっ、超超ラッキーチャンスでしょ?」
「いや、それは・・そうなんです、けど・・。いいんですか?親友なのに、そんな」
「いいんじゃない?透子ももうとっくに30超えてるいい大人だし、なんかあっても自分で責任取るでしょ」
「いや、そんな他人事な・・」
こういうとこ美咲さんなんか男前というかなんというか。
逆に男の当事者のオレが気を遣ってるって何。
「っていうのはまぁ冗談だけどさ。透子もなかなか素直にならないし、一度ちょっと刺激与えて、樹くん意識させるのもいいかな~って」
「まぁ、オレは嬉しいですけど・・」
「やっぱこの先透子に誰かってなると考えるとさ、私も樹くんなら安心して任せたいなって思うワケ。樹くんが透子真剣に想ってくれてるのはもう何年も見ててわかってるし。だからこの子には、そういう一途に愛されるって経験もして、ちゃんと変わってほしいんだよね」
「素直に嬉しいです」
「大丈夫。私も樹くん信じてるし。あとは樹くんに任せる」
「はい。さすがにそんなラッキーチャンス有難いですけど、さすがにそんな状況でオレも手出せないんで」
「うん。とりあえず透子の家隣だしさ、それ気付かせるいいきっかけにもなるし。それに気づいてもホラすぐ帰れるでしょ、あの子」
ちょっと面白そうに話す美咲さん。
「ですね」
「うちん家連れて帰ってもいいんだけどさ。せっかくなら樹くん一緒にいれたら嬉しいかなって」
「そりゃもちろん。今回は絶対変な事しないって誓います」
「うん。頼んだよ。この子、お酒ここまで飲むとなかなか正気には戻らないからさ。多分普通に連れて帰ってもしばらくはワケわからず樹くんとも話すかもだけど」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。多分明日目覚めた時、記憶ないと思うから。そこはちゃんと弁解してね」
「あっ・・はい。わかりました」
「まぁ家連れて帰るのもなかなか大変だとは思うけど」
「酒癖悪いとか?」
「いや・・酒癖悪いと言うか・・・。まぁ、起こしてみよっか?」
「あっ、はい」
何か言いたそうに少し苦笑いする美咲さん。
「透子~。起きて~。そろそろ帰ろっか~」
そして彼女のそばまで行き体を揺すって起こし始めた。
「う~ん・・・」
すると、ようやく彼女が反応するも眠そうにしている。
「ホラ。透子~。早瀬くん連れて帰ってくれるって~」
「えっ!美咲さん!そんなこと言ったら絶対断るでしょ!」
そうじゃなくても普段オレをなかなか受け入れようとしないのに。
こんな状況でそんなの納得するワケないだろ。
「ホラ。透子、会いたがってた早瀬くん。今日来たよ~」
いやいや、だからマズいって。
「う~ん・・。早瀬・・くん・・?」
寝ぼけ眼で目を少し開けて、オレを確認する彼女。
いや、余計アウトだろ・・・。
「ふふっ。ホントだ~早瀬くんだ~」
すると、彼女はオレを拒否するどころか、嬉しそうに名前を呼びながら笑っている。
えっ・・どういうこと?
「ふふっ。早瀬くんホントに来た~」
「ホラ。早瀬くん一緒に帰ろうって」
「うん~。一緒に帰る~」
そう言って目の前にあったオレの腕を両手で掴んで、今度はまた寝ぼけてそのままオレの腕を枕にしてギュッとしがみついてくる。
はっ?? いや、ちょっと待て。
なんだよこれっっ!
オレがあまりの衝撃に驚いて何もそのまま言えずにいると。
「ねっ?わかった? この子お酒ここまで飲んじゃうと、普段の都合悪い自分忘れて素直に甘えまくっちゃうんだよね~」
「は? いやいや、さすがにいきなりこれは・・」
いや、普通に嬉しいけど・・こんな可愛い姿オレに見せてくれるとか、正直たまんないけど。
しかもこんな自分から甘えて来てしがみついてくるとか・・・。
いやいや、ちょっと衝撃強すぎて、オレ大丈夫かな・・・。
「ここまでしてるけど、本人はまったく記憶ないから大丈夫。あっ、だからと言って変なことしたらそれこそマジで許さないけど」
「いやっ!それは逆に怖くて出来ないです!」
いや、彼女に対しても美咲さんに対してもさすがに恐れ多くて・・・。
「うん、ホント樹くんのこと信じてるから預けるんだからね? でもいい機会だからさ、透子にちょっと聞いてみな?今の樹くんに対しての気持ち。少しは酔った勢いで話すかもしれないよ」
「わか、りました。でもビックリです。こんな変わるなんて」
「うん。普段あんな感じで強がってる子だからさ、本当はこういうとこ隠し持ってるんだよね、きっと。だからお酒いっぱい飲んだ時は、たまにここまで素の自分に戻ることあって。無意識に自分でたまに解放したくなってるのかも」
初めて聞く話。
初めて知った彼女の一面。
まだまだオレの知らない彼女がたくさんいて。
どれだけ彼女は一人ツラい思いを抱えて来たのだろう。
少しでもオレがそんな彼女のツラさを無くしてあげられる存在になれたらいいのに。