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お土産は……

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お土産は……

1 - お土産は…(カミアク)

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2023年06月05日

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カミキside

【星野アイの墓】

アイ。前に墓参りの時、瑠美衣ちゃんに会ったよ。話しかけてはないけど、美人さんに育ってたんだ。アイとそっくりで、可愛かったよ。そういえば、まだ愛久愛海にはまだ会ってないね。今頃、必死に僕を捜してるって思うと、つい笑っちゃうよ。君を殺した事、後悔はしていない。これは嘘じゃない。けど、僕、アイ、愛久愛海、瑠美衣ちゃんの4人で普通に暮らしてるのも悪くないと思うんだよね。僕から遠ざかったから、何も言えないか。

カミキ)そろそろ帰るよ。それじゃあ、お元気で

愛久愛海もここに来る筈だよね。

カミキ)…少し、良いことを思いついた

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アクアside

【アイの墓】

アイ、暫く来れなくてごめん。忙しかったってのは言い訳になるな。きっとアイは俺の復讐のなんて望んでないと思う。

『元気に育ってください。母の願いとしては、それだけだよ』

ルビーは元気に育ってるよ、アイ。

アクア)俺はアイを母親として見れていたか分からない…どちらかと言うと、見ていなかった方だと思う。そんな俺でも、『愛してる』って言ってくれてありがとう

?)僕も、愛久愛海に『愛してる』って言ってあげようか?

アクア)っ!?

聞き覚えのない声に何故かゾッとした。振り向こうとしても身体が動かない。

?)ほら、こっち向いて

頬に手を添えられ、無理やり動かされた。

アクア)っえ……

アイと同じ、星が入った不思議な瞳。独特でありながらも、目が離せなくなるような、目が奪われるような瞳。俺やルビーと違い、両目にある。

アクア)カミキ、ヒカル……?

カミキ)僕の名前、知ってたんだ…嬉しく思うよ。『星野愛久愛海』

アクア)っ、離せ!!!!!

瞳、瞳、瞳。それ以上に目を奪われたのは、容姿。俺とそっくりだった。今まで母親似だと思っていた分ショックが強い。俺は…『父親似』だったのか。

カミキ)あはは。愛久愛海って、本当に僕のことが嫌いなんだね

アクア)今更、父親面か…アイを殺した癖に、俺に何の用だ。ルビーに手は出させないぞ

カミキ)僕が君たちの父親だって、確信してるんだ

アクア)その容姿、俺に似すぎてる…俺は父親似、なんだろ?

カミキ)うん。まさか、ここまで僕に似るとは思わなかったけどね

アクア)胸糞悪いな……

カミキ)話を戻すけど、僕は君に用があってここに来たんだ

アクア)……

コイツは俺に用があると言っているが、ただ話をしに来たわけじゃないのは分かる。最悪な事に、墓場であるここは滅多に人が来ない。アイは生前アイドルだった為、普通の墓場とは違い荒らされないように芸能人専用の場所に置かれた。

アクア)ぐぁっ!!!!!

突然、首筋に痛みが走った。何が起こったのか、分からないまま地面に頭をぶつけた。幸いな事に強くは打たなかったが、痛いものは痛い。痛みに耐えていると、上からアイツに話しかけられた。

カミキ)考え事でもしてた?変な所で油断するの、アイと似てるね

スタンガン。最初から俺をこうするつもりだったんだろう。事前準備が良すぎる。それに比べて俺は武器どころか荷物すら持っていない。唯一持っていたのは花束で、今はアイの墓に置いてある。

アクア)っ、はっ、ぐっ…!

ダメだ。意識が……

カミキ)おやすみ、愛久愛海

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ルビーside

【ルビーの部屋】

お兄ちゃんが行方不明になってから二週間経った。学校でも、事務所でも、みんなからお兄ちゃんについて聞かれる。最近はそれも減っちゃったし、クラスメイトはもう別の話題の方に持ち切り。

みなみ)ルビーちゃん、大丈夫?

ルビー)みなみちゃん……

みなみ)お兄さん、心配やなぁ……

ルビー)うん…なのに、他のみんなはお兄ちゃんの事なんて忘れてて、違う話題に行っちゃうし…!

みなみ)ルビーちゃん

ルビー)っ!

みなみ)落ち着いて…落ち着いてなぁ

ルビー)ご、めん…みなみちゃん……

みなみ)えぇよ。うち、こんな事しか出来へんから

ルビー)そんなことない!みなみちゃんには、いつも助けられてるよ!

みなみ)ほんま?ありがとう、ルビーちゃん

ルビー)…うん!

早く帰って来てよ、お兄ちゃん。

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アクアside

【???】

あれから、どれくらい経ったんだろう。

アクア)んっ、ふぁ、んぅ…///

カミキ)ふふ、そんなに睨まないでよ

悔しい。気持ち悪い。

アクア)だれの、せいで…んぁ!

カミキ)本当に君は、可愛い反応してくれるね

アクア)やめ、っあぁ!はっ、あっ、も、むり…!

カミキ)でもなぁ、これだけじゃ僕がつまらない

いきなり何言ってんだコイツ……

カミキ)愛久愛海くん、僕を『パパ』って呼んでよ

アクア)……

もう一度言う。

『何言ってんだコイツ』

息子の身体をぐちゃぐちゃにしてる癖に、父親面しやがって。

アクア)っ、嫌に決まって……

カミキ)ふーん。じゃあ、こうしよう

アクア)っ!!!!!

カミキ)はい、終わり

アクア)っ、げほっ!ごほっ、はぁっ…!

首を絞められた。すぐに手を話してくれたけど、疲労がヤバい。さっきまでの快感と、コイツに首を絞められた時の苦しさで吐きそうだ。

やっぱりコイツ、ヤバい奴だ…!

カミキ)なんなら、『父さん』でも良いよ?

アクア)…と、とう、さん……

気持ち悪い…気持ち悪い、気持ち悪い!!!!!アイを殺した相手に『父さん』って呼ふ日が来るなんて……

カミキ)絶望してるね。そんなに僕を父親だって認めたくないんだ?

アクア)当たり前、だろ…こんな事されて……

カミキ)慣れるの速すぎるよ愛久愛海。最初の日はあんなに『も、やめっ…!』って言ってた癖に

アクア)地味にクオリティー高いのやめろ。余裕がなかったんだから、当然だろ……

カミキ)今は開発されて、別の意味で余裕ないのに

アクア)んぁ…っ、誰のせいだと…!

カミキ)まだ、最終段階があるからね

アクア)……は?

まだあるのか、これの続きが。冷や汗が流れる。

カミキ)あっ、因みに『父さん』呼びも段階に入ってるから

アクア)誰も聞いてねぇよ……

そろそろここから出ないと…俺が壊れる。

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フリルside

【楽屋】

フリル)こ、れは……

あかね)不知火さん、どうかしたの?

フリル)黒川さん

あかね)なにこれ、手紙?

フリル)はい。アクアさんを誘拐した犯人から送られてきた可能性が高いです

あかね)っ、見せて!

『星野愛久愛海のお友達へ大切な僕の子は預かっるよ。愛久愛海が顔を歪ませているのを横目に、この手紙を書いてるから、短いのは許してね。それにしても可愛いよね、愛久愛海。まだ君たちには返してあげない。殺しはしないから安心して。愛久愛海にはお土産を持たせて返すから、もう少し待っててね。星野愛久愛海の父親より』

あかね)父親…カミキ、ヒカル……?

フリル)カミキヒカル?

あかね)あっ、ううん。なんでもない!それより……

フリル)アクアさんの事、ですよね

あかね)うん。これを、早くルビーちゃん達に伝えないと!

フリル)…カミキヒカル、ね。

黒川さんのあの反応。カミキヒカルという人物がルビーさんとアクアさんの父親の可能性が高い…のは分かったけれど、私に何が出来るの?アクアさんを三週間も誘拐して、手紙から察すると監禁もしてる。良い人とはとても言えない。

-私は、なにもできない。探偵並の推理力も、アクアさんを誘拐できる人に勝てる戦闘力もない。けど……

フリル)私なりに、出来ることはある筈だから

あかね)不知火さん!立ち止まってどうしたの?ほら、急ごう!

フリル)は、はい!

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カミキside

愛久愛海を監禁し始めてから1ヶ月が経った。可愛い息子を手放すのは惜しいけど、仕方ないか。いい具合に壊れてくれたし、あの子達に返してあげよう。

カミキ)おはよう、愛久愛海

アクア)おはようございます…父さん

『父さん』だって。最初はあんなに嫌そうに言ってたのに、それもなくなった。

いつも通りに愛久愛海にキスをする。口にそっと、優しくキスした後、舌を入れて深く。

アクア)んぅっ……

愛久愛海は抵抗をしない。僕が時間をかけて彼にトラウマを植え付けたからだ。本当は嫌なのに、トラウマという大きな恐怖が思考を停止させる。それが復讐相手だろうと、怖いものは怖い。感情がぐちゃぐちゃになって、最近はよく泣くようになった。

カミキ)…そろそろ、お別れだね

アクア)っ、やだ!いや、です…っ、おねがい、ころさないで……!

カミキ)……

『殺さない』なんて言ってあげない。その方が面白いから。その方がゾクゾクするから。

カミキ)またね、愛久愛海

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みなみside

【星野家キッチン】

お兄さんがいなくなってから、1ヶ月が経った。あれから、ルビーちゃんの元気が痛々しく感じるようになった。ルビーちゃんが壊れるのを心配したうちは、ミヤコさんに頼み込んで星野家に居させてもらった。勿論、両親の許可も得とる。

みなみ)お兄さん、無事やろかぁ……

思わず弱音を吐いてしまう。うちも、お兄さんにはかなりお世話になっとるし、ルビーちゃん程ではなくても、心配や。

みなみ)お兄さんならきっと無事や。うちが不安になってどうすんねん!

手で頬をペチンと叩く。これでもグラビアアイドルやから、1回だけやけど。

みなみ)いひゃい……

強く叩きすぎた。でも、少し元気が出てきたかも。ルビーちゃんの笑顔が見たいし、頑張るか!

みなみ)今日のご飯、どないしよ……

ピーンポーン

チャイムが鳴る。

みなみ)……

ルビーちゃんもうちも芸能人や。もしストーカーが居てもすぐ対処ができるように、予めドアにチェーンを掛けておく。

【玄関】

ガチャ

みなみ)…え?

自分の目を疑った。そこには、『お兄さん』がいた。目は虚ろで、ボーッとしてる。嫌な予感がしたうちは、慌ててドアチェーンを外して、お兄さんを家に入れた…のは良いんやけど、お兄さんが動かないんや。

みなみ)お兄さん?靴脱ごうや。じゃないと、入れないんよ?

アクア)……

うちがそう言うと、お兄さんは靴を抜ぎ始めた。もしかして、何か言わへんと動けないんか。そんなお人形さんみたいな事あるんか…?

みなみ)こっちやで、お兄さん

お兄さんの手を取って、ゆっくりと歩かせる。ここが外だったら炎上してまうかもしれんけど、ここは家や。プライベートに邪魔は入らんやろ。

【リビング】

アクア)寿、さん……

お兄さんをテーブルに座らせ、お茶を用意しようと思ったら話しかけられた。星が入っている、独特だけど、綺麗な瞳がゆらゆらと濡れてる。

アクア)た、すけて……

みなみ)えっ…?

アクア)こわい…ひとりに、しないで……!

みなみ)っ!

驚いて目を見開く。お兄さんが弱音を吐いたこともそうやけど、それより、泣いていることに驚いた。うちはお兄さんに優しく抱きついた。

みなみ)お兄さんを1人になんてせんよ…うちだけやない。ルビーちゃんも、ミヤコさんも…みんな、お兄さんのことを大切に思っとる

アクア)っ……

みなみ)だから、何かあったら言ってな?

アクア)…ありがとう、寿さん

みなみ)ふふ、どういたしまして

今はまだ本調子とは程遠いけど、うちらがお兄さんを支えて行くんや。時間が掛かったとしても、きっといつものお兄さんになってくれる筈やもん。

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かなside

星野兄妹の家に行ったら、あのグラビアアイドルの寿みなみがいた。

みなみ)い、いらっしゃ〜い…有馬先輩……

冷や汗ダラダラじゃない。目も泳いでるし、嘘をつけないタイプね。

かな)で、なんでグラビアアイドルの寿みなみがここにいる訳?

みなみ)えぇと……

ルビー)あ、ロリ先輩

かな)ルビー!なんでここ最近、私のメールに返信してくれなかったのよ!

寿みなみを押し退けて、ルビーに質問…いや、尋問をする。少し元気がないように見えるのはきっと気のせいなんかじゃない。アクアが行方不明になったから、気が滅入っているのよ。

ルビー)メール?

かな)そう!あんなに送ったのに、全く反応しないと思って、今日ここに来たの!

ルビー)そうなんだ、気づかなかった

大分やられてるわね。いつもの天真爛漫なルビーらしくないわ。私にできる事はあるのかしら…。

ちょっと待って。さっきからリビングの方をチラチラ見てるけど、もしかして、誰かいるの!?

みなみ)先輩、取り敢えず中に入りましょか。飲みもの、お出ししますんで

ルビー)ちょっと、みなみちゃ……

かな)えぇ。お邪魔させて貰うわね

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あかねside

アクアくんは約1ヶ月前に誘拐された。誘拐されたのがその前日…時間帯は分からない。その後は監禁された可能性が高い。あの手紙から、犯人はカミキヒカルの可能性がかなり高い…確定しても良いと思う。でも、なんの為に誘拐したのかは分からない。カミキヒカルの心理は読めない。普通の人じゃないのは確か…私のプロファイリングでのトレースも意味がない。きっと見当違いな人格が出来上がる。

フリル)黒川さん

あかね)っあれ、不知火さん?

フリル)先程から呼んでましたけど、反応がなくて

あかね)ご、ごめんね!考え事に集中しちゃって……

アクアくんの事を考えていたなんて言えない。言わなくても、不知火さんなら気づくかもしれないけど…それでも言わない。あまり心配かけけたくないのもそう。でも、それ以上にアクアくんの事は私だけで解決したい。

-って思ってたんだけど……

フリル)それより、見つかりましたよ

あかね)見つかったって…何が?

フリル)アクアさん

あかね)…アクアくん!?

フリル)はい。みなみさんからメールが届きまして…今、アクアさんは自宅にいるようですよ

アクアくんが見つかった?1ヶ月間行方不明だったアクアくんが?誘拐されて、監禁もされたアクアくんが?カミキヒカルに接触したアクアくんが?

フリル)黒川、さん…?

アクアくん、アクアくん…アクアくん……アクアくん、アクアくんアクアくんアクアくん!!

あかね)不知火さん。私、ちょっとルビーちゃんの家に行ってくるね!

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姫川side

【自宅】

星野が行方不明になったとニュースで知ってから約1ヶ月が経過した。俺は何も触れなかった。別に心配していないわけじゃない。あれでも異母兄弟だからな、心配くらいする。本人には絶対に言ってやらないけど。

スマホの着信が鳴る。少し面倒だと思ったが、もし金田一からだったら後でさらに面倒になる。スマホを手に取ってボタンを押す。名前を見ていなかったが、なんとかなるだろう。

姫川)はい、もしもし

『姫川さん、お久しぶりです』

姫川)星野…!?

相手は星野だった。電話口の奥の方から騒ぎ声がするから、多分家に居るのだろう。

『監督にも同じような反応されましたよ』

姫川)40過ぎたおっさんと一緒にすんな

『おい聞こえてんぞクソガキ!』

姫川)いたんすか…で、星野は?

『早熟なら、今来た黒川あかねに抱かれてるぞ』

言い方。嫌な妄想をしてしまっただろ。あの言い方だと星野が黒川に…これ以上はやめておこう。

姫川)まぁ、何事もなければ良いんすけど

『それが、そうもいかない』

姫川)と言うと、まだ犯人が星野の近くにいるって感じか?

『…早熟の部屋に、盗聴器が見つかった』

姫川)っ!

ひゅっと息を呑むのを、どこか他人事のように感じた。

姫川)…星野は、何か言ってましたか

返事はない。どうやって言おうか迷っているだろうと思い、しばらく待つ。

『…早熟がな』

重々しく、五反田監督は口を開いた。

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アクアside

家に帰ってくると、何故か俺の部屋にルビーとミヤコさんがいた。2人とも重々しい顔をして、こっちに目を向けてきた。

アクア)なぁ、どうし……

ルビー)お兄ちゃん、なにこれ

震えた声で話すルビーが、何か見せてきた。俺はそれを見て、思考が停止する。

『盗聴器』

ミヤコ)一体、誰がこんな事を……

ファン…は違う。アイの事件が起きた後、苺プロは所属タレントのセキュリティーレベルを高め、今ではセキュリティーの万全さには他の事務所にも負けないくらいに成長した。だから、一般の人には盗聴器を仕掛けるなんて到底できない。それに『前世の僕』の経験も含めるが、俺は頭が切れる。気づかない筈がない。

-もしかしたら

アクア)…父さん

ルビー)えっ?

父さんなら、俺の部屋に入れる。

アクア)なんでもない

ルビー)なんでもない訳ないでしょ!?『父さん』って何!お兄ちゃん、アイツに何されたの!

ルビーは俺の肩を強く捕み、後ろの壁にぶつけた。痛みに顔を歪めるが、それだけだ。どうしてルビーが怒ってるのか分からない。

アクア)何をされ、た、って……

言えるわけない。身体を好き勝手に触られて、キスされて、恐怖を植え付けられたなんて。そんなの、妹に言えるわけない。

-嘘をつかないと

アクア)っ、それ、は……

言葉が詰まる。ダメだ、早く何か言わないとルビーに怪しまれてしまう。俺を見るルビーの目が怖い。怒ってる…嫌われる。

アクア)っ、ごめ、なさ……!

ひゅっと息が詰まり、生理的な涙が溢れてくる。父さんに色々されてから、泣き虫になってしまったなと場違いな事を考える。

ルビー)お兄ちゃん

アクア)っ!

反射的にびくっと肩が震える。ルビーもそれを感じ取ったのか、そっと肩から手を離した。俺はルビーの目を見るのが怖くて俯いた。

ルビー)私はお兄ちゃんの事を何も知らなかった。お兄ちゃんってば、私に何も教えてくれないもん…でもね、それは私のことを守ってくれてるんだって分かった!

頬に手を添えられ、顔を上げさせられる。ルビーの手は暖かった。父さんとは違う。父さんになかった暖かさがルビーにはある。

ルビー)だから、私にも守らせてよ!お兄ちゃんだけ傷つくのはもうみたくない!いつも守られてるだけじゃ嫌!

ミヤコ)ルビー……

ルビーは強い。アイと似ているようで違う強さを持っている。前に進む力を持っている。

アクア)…ありがとう。ルビー

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姫川side

『…って事があったらしいんだよ』

星野の奴、かなり囚われてるな。俺は星野の父親について何も知らないし、知る気もない。

姫川)…そうか

『言いたいことはそれだけか?』

『うおっ!?』

ガチャガチャと不快な音が受話器の向こう側から聞こえる。しばらくすると終わったのか、音が鳴り止んだ。

『すみません、姫川さん』

姫川)いや、大丈夫だ

どうやら星野が奪い返したようだった。少し話しすぎたか。

『…監督と、何を話してましたか』

少し声を潜めて質問してきた。星野は自分が周りに心配されている事を自覚しているのだろう。誘拐だけじゃなく、監禁もされたそうだし、そりゃそうだろとも思う。

姫川)別に大した話してないけど。

『…そうですか』

本人は不服そうだな。俺から見てもアイツらは星野に対して過保護のような気がする。だったら俺は…

姫川)星野、今週空いてるか?

『え?あ、空いてますけど』

姫川)いい店があるんだ。2人で食べに行かないか?1人で行く店じゃなくてな。まさか、女性を誘う訳にもいかないだろ?

『確かに、スキャンダルに関わりますからね。良いですよ。しばらく活動は休止してますので、曜日はいつでも大丈夫です』

姫川)ん。じゃあな

『はい。失礼します』

スマホの画面を消し、近くに置く。カレンダーに軽くメモを残すのを忘れないうちに済ませる。

姫川)曜日は…後で決めるか

そういえば、この前届いた不思議な手紙。不思議というより、不気味といった方がしっくりくる。

姫川)名前は書いてないし、俺の住所だけ把握してるのが最高に気持ち悪いな。それに、この手紙の最高の文……

『お土産はどうだった?』

姫川)…面倒な事に巻き込まれたな

終わり

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