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目に映る何もかもが新鮮で、輝いて見えた。ヴィオラはレナードに、抱えられ大広間へと入場した。一歩踏み入れた瞬間そこはまるで別の世界の様に、ヴィオラが想像していた何倍も光り輝いている。
「これが……舞踏会」
思わず感嘆の声が洩れた。
豪華過ぎるシャンデリア、沢山の酒、煌びやかな宝石やドレス、衣を纏う沢山の人々。ヴィオラは、こんなにも大勢の人間を見る事すら初めてであり、少し臆してしまう。
しかも何故だか、人々からの視線を一身に浴びている気がした……。
「レナード様……」
ヴィオラは先程までの緊張が嘘の様に、大広間に入った瞬間笑顔になったが、再び表情は曇っている。
「ヴィオラ、どうしたの」
「あの、私どこか……おかしいですか」
落ち着かない様子で不安そうなヴィオラにレナードは、優しく笑みを浮かべた。
「おかしい所なんてないよ」
「ですが、皆さんコチラを見ています……」
「それは君が余りにも美しいからだよ」
◆◆◆
舞踏会が始まってから、大分時間が過ぎた頃、大広間の扉がゆっくりと開いた。その扉から颯爽と姿を現したのは、この国の王太子であるレナードと見慣れない令嬢だった。
周囲はその瞬間、賑わいとは別にざわざわと騒がしくなる。それもそうだろう。何しろ王太子はその見慣れない令嬢を横抱きにしているのだから。所謂お姫様抱っこだ。
人々からの注目を浴びる中、レナードはまるで気に留める素振りは見せずに颯爽と歩いている。
「王太子殿下とご一緒の御令嬢は……」
「女性を抱き抱えたまま入場されるとは」
「王太子殿下には、婚約者の」
様々な憶測や訝しげな声が飛び交う広間。誰もがレナードと令嬢へと奇妙な目を向けている。周囲が遠巻きに眺めていたそんな中、2人へ近づく1人の男がいた。
「レナード、お前にはいつも驚かされる」
「そうかな」
親しげに話しかけた男にレナードは笑って応えた。
「で、その御令嬢は」
突然登場した見知らぬ男にヴィオラは目を丸くし、戸惑っている。そして自分の事を言われた瞬間身体をビクッとさせると、レナードへと身を縮こませた。
「ヴィオラ、大丈夫だよ。彼は人相は悪いけど、悪人という訳ではないからね」
「おい、人の事をなんつう言い方するんだよ」
「聞いての通り口も悪いけど、悪人じゃないんだよ?」
2回も「悪人」じゃないと念を押された男の人相は確かに目は釣り上がり無愛想で、身体つきはガタイはいいが、割とスラリとした長身の男だった。
レナードの物言いに、アランは舌打ちをしたくなるが目前の少女を怖がらせてしまう故、耐えるしかない。
「お嬢さん、俺はレナードの友人で、名はアランだ。……その、お嬢さんの名は?」
アランはヴィオラを怖がさせない様に、必死に笑顔を作る。口角を上げるが口元がピクピクとしている。
クスッ。
そんなアランの姿にヴィオラは思わず笑ってしまった。
「ごめんなさい、アラン様?余りにも必死でいらっしゃるので、つい。初めましてアラン様、私はヴィオラと申します」
ヴィオラはアランに、はに噛んだ。