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離婚します  第一部

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離婚します  第一部

50 - 第50話 離婚準備は保険

2024年11月01日

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新婚さん2人を囲んで写真を撮る。

ガヤガヤと騒がしい中、ニシちゃんの耳元で小さく話す。


「結婚するって言ってなかったじゃん!」

「職場ではちょっと言えなくて。離婚しようとしてるマユちゃんがいたりするから…」

「そっか。じゃあ、バイト辞めるの?」

「辞めませんよ、面白いですから。バイトを続けることも結婚の条件です。あ、貴さんと同じ職場だったんですね?バイトのことは内緒にしときます」


ニカッと笑うニシちゃんは、あのニシちゃんだった。

次のグループが写真を撮りにきたから、そこで私は離れた。

なんだ、いい子でよかった、なんて親心のような心境だった。


私と貴君の関係も、私とニシちゃんの関係も、知っているのは私だけ。

大丈夫だ、これならきっと上手くやっていける。

私は貴君の幸せを願うし、ニシちゃんにも幸せになって欲しい。

2人並ぶ姿を見ていたら、ストンと気持ちが落ち着いた。


披露宴が終わって、二次会へ移動する。

参加するつもりはなかった二次会だったけど、ニシちゃんがお嫁さんだとわかったら、参加したくなった。


柔らかいピンク色のスーツのニシちゃんに確認してみる。


「ね、結婚してもニシちゃんて呼んでいい?」

「もちろん!戸籍上の名前が変わって、ニックネームも変わってしまったら、私という人間が消えてしまいそうだから、ぜひ、そのままで」

「わかった。じゃ、改めて、乾杯!おめでとう」

「ありがとうございます」


シャンパンが冷たくて美味しい。

そこへ新郎がやってきた。


「あれ?なんか2人とも親しげだよね?」

「え?あ、職場での貴君の失態とか、教えとこうと思って…」

「マジか、警戒しなきゃいけないのは田口さんだけじゃなかったか」

「なんだよ、俺がどうしたって?」


グラスとビール瓶を持った田口さんも加わった。

わいわいと話が盛り上がる。

その盛り上がりを避けて、ニシちゃんが小声で言った。


「未希さん、私に教えてくださいね、上手な離婚の仕方ってやつを」


ぶっ!とシャンパンを吹き出した。


「え?そんなこと今?」

「前から詳しく聞きたいなぁって思ってたんですよ、上手に離婚して今は幸せだ、みたいなこと言ってたから」


あ、確かに。

旦那が料理をするとか、家はシェアしてるとか、休憩時間にしゃべってた気がするけど。


「でもまたなんで?もう不満があるの?」

「いえいえ、保険です。いざそんなことになった時は、こうすればいいんだってわかっていれば、気が楽だなと。それだけなんで」

「まぁね、お嫁さんって束縛が多い、特に貴君みたいに、旧家の後継に嫁ぐとね。少しずつ教えてあげるね」

「何を教えるんだよ、未希ちゃん、あっちの方か?」


赤い顔して下ネタに走る田口さんは無視しておいた。


「そうだ、私、離婚したこと会社に話してないんだよね。事務手続きはしたけど、知ってるのは事務員さんだけ。あれこれ言われたくないし、名前変わるのめんどくさいから」

「あー、わかる気がする。夫婦別姓にしとけばよかった」

「そんな、離婚前提に話さない!!」


あははと笑い合う。


ニシちゃんと話しながら考えていた。

私が貴君に抱いた感情は何だったのか?

それが今は何故、こんなふうに落ち着いてしまったのか?



ぴこん🎶

《何時ごろ行けばいい?》


旦那からのLINEだった。

タクシーで帰るつもりだったけど、迎えに来てくれると言うので甘えることに。


〈後30分くらい、楽しんでもいい?〉


ぴこん🎶

《オッケー。タロウの餌を買いに出てるから、終わりそうになったら連絡して。あ、時間は気にしないでいいよ、たまには楽しんできて》


〈ありがとう。また連絡するね〉



スマホをしまって、もう少しお酒を飲むことにした。


そっか。

私、旦那に満たされない何かを貴君に求めてたんだ。

それが何だったのか?

セックスとか、ドキドキとか、優しいとことか、面白いこととか。


今はそのほとんどが、満たされている気がする。

離婚したことで、誰となにをしても自由だし、程よい距離でお互いに穏やかでいられる。


結婚もいいけど、離婚もいいよって、ニシちゃんに教えてあげなきゃ。


「あ、そうだ!ニシちゃん、バイクは乗る?」

「私、免許ないんですよ」

「免許とってさ、ツーリング行こ、気持ちいいよ」

「そうですね、考えてみます」


そこに貴君がやってきた。


「何の話?」

「ん?花嫁さんもバイクに乗ろうよって話。一緒にツーリング行ったら楽しそうじゃん?」

「あ?う、うん、そうだね、免許とってみる?ちょっと難しいかも?だけど」


なんだか歯切れの悪い返事。


「大丈夫!私ができたんだから。なんならサポートするからね」

「はい、よろしくお願いします」


貴君は、ニシちゃんがバイクに乗るのは反対なのかな?ふとそう思った。


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