どうも、へびまるです。
「あの夏(以下省略)」の、その後です。
主役はrdy。
見方によってはwesrdy。
cpなしとも言える。
見る人次第です。
曲パロではありません。
世界観をお借りしているだけ、といった感じです。
rdoがいなくなったあと、rdyがどうしたのか、というお話。
続きなんで、前のやつ見た方が楽しめるかもです。
ぜひ曲の方も聴いてくださいね。いい曲ですよ。
まあまあ長い。(約5000字)
だし、暗い。かも
嘔吐表現あり(軽め)
独自解釈注意
ではでは、どうぞ
<Prologue>
兄貴が死んだ。
人を殺したから、自殺した。
死体は、見つかっていない。
たくさんの人がその死を悲しんでいる。
そんなことを、今日の朝、聞いた。
兄貴は、たくさんの人に愛されていた。
俺とは違って。
現に、兄貴の友達で警察官をしている者だと名乗る電話の向こうの男は、今にも泣き出しそうな声をしている。
ずっと妬ましかった。羨ましかった。
兄貴のようになりたいと思った。なれなかった。
声も、顔も、身長も、ヘリの腕前だって、同じだったのに。むしろ、俺の方が上手かったのに。
いつしか俺は、兄貴が嫌いになった。
兄貴と比べられるから、髪を変えた。仮面をつけて、医者の知識を身につけた。
それでも叶わなかった。
でも、兄貴がいなくなったら?
その空いた椅子に、俺が座ったら?
みんなの愛、尊敬の眼差し、兄貴に注がれていたもの。
全部独り占めになる?
あぁでも俺は、一生兄貴で有り続けることはできない。
“それなら、全部壊せばいい”と俺の中の何かが叫んだ。
ーーーーー
俺は、兄貴のことを調べた。服装、喋り方、友人の呼び方、癖、好きな食べ物、などなど。
兄貴になるために。
そうして二ヶ月ほど経った。
そろそろ行こうか。
俺は兄貴のと同じ仮面をかぶり、兄貴が着ていた服を着て、警察署に向かった。
警察署の前で、声をかけられる。
「rdo?なぁお前、rdoなのか?」
誰だ?
ペンギン頭…あぁ、nrsか。
残念、俺はrdyだよ。
なんてことは言わない。
「なーるせ、おれ、生き返ったよ」
「っあ“ぁぁ……ら、だッ…うゔ、遅い“だろッぅが」
泣き出してしまった。我ながら完璧な変装である。
「ごめん」
「待“っでた、ずっど。おかえり“」
「ただいま」
あぁ、“おかえり”なんて言ってもらえるのは、いつぶりだろうか。
ペンギン頭が無線に向かって何かを言う。
たちまち俺は人に囲まれた。
「rdo君!」
「アオセン!!」
「rdoー!」
「rdo先輩、」
「rdちゃん先輩!」
みんな、おれの名前を呼ぶ。
みんなが俺のために泣いている。俺のことを愛している。
なんていい気分なんだ。
今俺は、兄貴に復讐している。
兄貴がなにを思い悩んでいたとか、どうでもいい。
なぁ兄貴、お前は無様だ。
なんの意味もなく死んで、血を分けた兄弟にすら、積み上げたものを奪われようとしている。
「顔を見せてよ。ほら、仮面だとさ、どうしても信じられない」
誰かがそういった。
やっと双子の本領発揮だ。
親でさえ見分けられないんだから、二ヶ月間も会わなかった兄貴の顔がわかるわけがない。
そもそもこいつらは兄貴の顔を見たことがあるのだろうか。
仮面を外す。
「ほら、おれはrdoだよ、正真正銘」
ついでに首も見せる。そこには傷跡のタトゥーが入っている。
「傷跡もあるよ…」
どうやらこいつらは本当に俺のことをrdoだと信じたようだ。
さて、こいつらをどうやって裏切ってやろうかな。
復讐はここからが、1番大事だ。
兄貴も、兄貴を愛した奴らも、兄貴を助けてくれなかった奴らも、兄貴を虐めた奴らも、俺も、おれも、ぶち壊す。
ーーーーー
「なんで今まで来なかったんですか!ちょっとでもいいから連絡、欲しかったです」
「ごめんね、生きてるってわかってからも、みんなに合わせる顔がなくって。街に戻ろうと思うまで随分時間かかっちゃった」
「いいよ、戻ってきてくれただけで嬉しいもん」
「ありがと」
「ねぇ街のみんなにも、知らせないと」
「そうだね。今から、行く?」
「行きましょう!」
かくしておれらは色んなところへ挨拶へ行くことになった。
救急隊や、メカニックのところ、それからギャング。
みんなおれの生還を泣いて喜んだ。
あのvand-m-ですら鼻を鳴らしていた。多分。
最後は赤色のギャングだ。
そこには、wesk-がいる。兄貴の最後を見た人。
どんな反応をするだろうか。バレたりしないだろうか。
連絡先を持っている人が、そいつを“緊急で話し合わないといけないことがある”とか言って呼び出した。
程なくして、警察署の前に真紅の車が現れた。
同じ真紅の服を纏ったオールバックの男がその車から出てくる。
前に一度会った時よりも少しだけやつれているようだ。
おれは、一歩前に踏み出して名前を呼んだ。
「wesっさん」
「…は?」
「ごめんね」
「…」
サングラスで表情が読めないが、注意深くこちらを伺っている。
俺が本物のrdoかどうか、調べている。
「rdo?」
「そうだよ」
「ほんとに?」
「うん」
「嘘じゃない?」
「おれは嘘つかないよ」
「ドッキリとかでもなく?」
「こんなタチ悪いドッキリ誰もしないって」
「rdoくん、仮面とって」
「いいよ……はい、」
「rdoくん、でも君はあの時…」
「実は、生きてたんだ。別の街に流れ着いて、でも合わせる顔がなかったから、今まではその街で過ごしてたんだけどさ、ほら、首の傷もあるよ」
少し早口だっただろうか。息がもたないくらい一気に喋ってしまった。
ゆっくりと空気を吸い込む。
怪しまれていないだろうか。
「なんだよ、っ!rdoッ」
信じてもらえたらしい。涙を溢し始めた。
「寂しかった?」
「そりゃそうだろ!誰だって好きな人がいなくなったら悲しくなる」
あぁ、この男も兄貴が好きだったのか。当然のことを再び思い知らされた。
その“好き”の中に、“俺”はいない。いつもそうだった。
「ごめん、wesっさん」
「許さない」
「えぇ?そこは許す流れじゃない?」
「じゃあウチのギャングに入ってもらおうか」
「それはできませーん」
「なんでよぉ」
「おれは警察…の、予定なんで」
一度人を殺したおれは、しばらく警察はできないらしい。
「…警察続けるんだ」
「そうです。ちゃんと罪は償います。すぐに復職してやりますよ」
「じゃあまた勧誘しようかな」
「んは、なんでぇ?」
警察達も空気を読んでいつの間にかいなくなっていた。
しばらく駄弁ったあと、おれたちは別れる。
「じゃーね、rdoくん」
「うん、またね……悪いことすんなよー!」
“するぞー”と言い残して赤い車は去っていった。
ーーーーー
街はすぐにいつも通り…にはならなかった。
それも全て、おれが生き返ったからだ。
普段のように犯罪が起こるまで、3日かかった。
毎日毎日おれを訪ねては、嬉しそうに帰っていく人々。
…本当のおれはもういないのに。神様になったような気分だった。
ーーーーー
4日目。
街はもう、ほとんどが正常に回り始めていた。
今日、おれはrdyに戻ろうと思う。
俺の物語は佳境を迎えた。
犯罪が落ち着いた後の警察署には色んな人が溢れ、賑やかだった。俺はこういう場所は嫌い。
ゆったりとした動作で拳銃を取り出す。
拳銃。まだ警察に復職できていないおれが持っているはずのないもの。
猫仮面がこちらを不思議そうに見ている。
1番近くにいたペンギン頭に向けて、引き金を引いた。
パァン!
本来ここで鳴るはずのない声が、みんなの視線を集める。
「襲撃!?」
「違う!rdoが、rkjを撃った!」
「rd…o?な、んで」
「ッふ、ふふ、あっはははは、俺はrdoじゃない、rdyだ!あぁ兄貴、今俺、さいっこうの気分だよ!!」
警察どもに鉛玉を打ち込み続ける。グレネードもたくさん投げる。
和やかな雰囲気は一転。警察署は叫び声と銃声と爆発音が響く地獄と化した。
邪魔な鬼の仮面を殴り捨てる。
「全部壊してやる!!全部!」
そういえば、なんで壊そうと思ったんだっけ。
逃げ惑う市民達や、立ち向かってくる警察官達をどこか遠くにいるように感じながら眺める。
俺が暴れている。
やめてくれ、と警察官の誰かが叫ぶ。
俺も叫び返す。
「やめろだと?誰がお前らなんかのいうことを聞くか!お前らは兄貴を殺したくせに!」
「そうだ、お前らは兄貴を殺した!救ってくれなかった!」
「だから嫌だったんだ、俺は反対した!!こんな街になんて、行ってほしくなかった!!!」
「兄貴のことだから、無理をするに決まってたんだ!それで疲れちゃうってことも、俺は、わかってた…のに……」
吐き気。
フラフラしながらその場を離れる。
ついてくるやつはいないと思ってた。
1番近い公衆トイレへ向かう。
「ゔ、おえ゛……」
便器に顔を近づけて吐いたけど、何も食べていないせいで胃液しか出なかった。
ビシャビシャと水音が聞こえる。
喉が焼けたように痛い。
もういいか。もう終わりにしよう。
この世界は、嫌なことしかない。
自分が嫌い。
兄貴も、この街も、住民も、全部。
嫌い。
鏡の前で、こめかみに銃口を当てる。
微笑を浮かべた兄貴がそこにいた。
その時、誰かに胸ぐらを掴まれた。そのせいで弾は目標を外れ、鏡の真ん中に直撃する。
ガシャン、と大きな音を立てて兄貴が砕け散る。
“誰か”はwesk-だった。
「やめろ!」
「なんでお前がそれをいうんだ」
「死んでほしくないからに決まってんだろ!!」
「これは俺が決めることだ、俺の好きにさせてくれ」
「確かに、そうかもしれない、でも、自分で自分を殺すのは悪いことだと思わないのか!」
「犯罪者が善悪を語るなよ」
「我儘でも、偽善でもなんとでもいえばいいッ、頼む、もう2度と目の前で人を失いたくない…」
「じゃあお前を殺して、俺も死ぬ」
「私が死ぬのはいい、でもお前が死ぬのはだめだ」
「は?矛盾してるだろ」
なんで、なんでこいつはこんなにも俺に食い下がってくるのだろう。
俺が死のうと生きようと、お前には関係ないだろうに。
こいつが好きなのは、兄貴で、俺はその兄貴と同じ顔、同じ声をしただけの、ただの根暗な人間だ。
どうせお前も、俺に兄貴の面影を見て、失いたくないと言っているだけなんだろ?
目の前のこいつを殺そうと思ったのに、銃は弾切れだった。
「……くそ、」
俺がこいつを殺す方法を画策する一方、こいつは俺に質問を浴びせてくる。
目を伏せて悲しそうな顔をしている。
その表情、兄貴みたいで嫌い。
見たくない。辞めてくれ。
「rdyくんは、なんで死にたいと思ったの?」
答えるわけないのに、考えてしまった。
世界が嫌いだから。
じゃあなんで嫌いなんだろう。
誰も俺を見てくれないから。
じゃあなんで、誰も俺を見てくれないの?
それは、俺がみんなを否定してきたから。
「これはただの推測だけどさ、rdyくんは自分のこと、嫌いなんじゃない?」
当たり。
「そんでさ、rdoくんが、君をちゃんと見てくれてることが、嫌だったんじゃない?嫌いな自分を見て欲しくなかったから」
これも当たり。
「rdoくんが好きだったから、rdoくんが嫌いになった」
「あぁ、その通りだよ。たぶん」
自分が1番大切だと思ってた。そんな自分を兄貴と比べた。
いつもみんなと笑ってる兄貴より劣ってるのは、当然、
俺だ。
とん、と背中が壁とぶつかった。
いつの間にか追い詰められている。もう逃げ場はないぞ、とwesk-の目は語っていた。
「私が君のことをちゃんと見てあげようか?」
口から息が漏れて、俺はあまりの可笑しさに口角をあげる。
「は、できるわけないだろ。俺は、rdoじゃない」
「できるよ」
「馬鹿じゃないの?なんでそうやって言い切れる?」
「この街なら、なんでもできるから」
縋りたくなった。
貴方の言葉に。この街に。希望に。光に。
こんな俺でも、愛してくれるなら、
兄貴を、好きになれるなら
ーfinー
“好きなのに嫌い”という、わけのわからない
でもよくある心情を、
文字通り死ぬほど拗らせたrdyのお話でした。
…ちょっと解説を。
一人称について。
rdo→おれ
rdy→俺
使い分けてます。
暇なら、確認してみても楽しいかも。
これ以上は感想になってしまうので、つぶやきにて。
それでは、また。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!