テラーノベル
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達磨ノ目高校では中間テストの期間と平行して、体育祭の準備も行われる。
そのため先生たちはもちろん、生徒たちも慌ただしくなる。
円たちが体育祭のためのクラス旗を作っているように、各学年、各クラスでクラス旗の作成が行われる。
4月に入学式、在校生の場合は進級、クラス替えが行われ、4月は大抵クラスメイトの把握
仲良いグループが自然と作られ、クラス全体で仲を深めたりといった、馴染む作業の段階。
そして2、3年生は、1年生の頃の経験があるため、早いクラスは4月から体育祭の旗の構想を話し合う。
なにも知らない1年生には担任の先生から、だいたい4月の終わり頃に旗作りについてが告げられる。
しかし5月には中間テストがあるため、1年生は右往左往してしまう。
達磨ノ目高校は偏差値は高くない。むしろ低い方だ。
なのでそもそもテストを重視していない生徒が入ってくるのだが
一応内申書にも影響があるので、テストを頑張る生徒も少なくはない。
いくら「祭り事(行事)」を重視する達磨ノ目高校に入学した生徒だからといって
「テストなんてどうでもいいやぁ~」なんて生徒は少ない。少なからずテスト前はみんなそわそわし始める。
その理由の1つに、赤点を取ったら「補修」があるというものがある。
単純に補修がめんどくさいからという理由もあるだろうが
自称「旗作りのリーダー」である円(まどか)のように
「旗作りのリーダーがいないと旗作りが始まらないから」
という謎な理由もある。円は、放課後、万尋(まひろ)と虹言(にこ)とファミレスでテスト勉強をしていた。
「…」
しかし、そもそも勉強する習慣のない円。集中力が2分も続かない。
「休憩せん?」
「休憩って。さっきもドリンクバー行ってたじゃん」
「え。ドリンク補充は休憩とみなされるんすか」
「知らんけど。円休憩するほど集中した?」
「…しーまーしー…」
「その流れは「た」しかなくない?」
「たしかーにー?」
という間も黙々と勉強する虹言。
「虹言ちん?」
「ん?」
「なんかテストの必勝法とかない?」
「…ないね」
苦笑いで返す虹言。
「ないかぁ~…」
と言いながらソファー席の背もたれに、溶けるように寄りかかる円。
「あったら私が知りたいくらいだよ」
と苦笑いする虹言。
「それもそうかぁ~…」
ともはや背もたれではなく、座面に背中をつけるようにして
背もたれには後頭部部分しかついていない状態の円。
勉強つまらん
と思いながら天井を見ていると、視界の中に金髪美女の顔が入ってきた。
「お。やっぱ円だ」
「え。ルビー?」
それは1年生の頃、円と同じクラスだったルビーだった。
「なんか聞き覚えある声だなぁ~と思ったら、まさか真後ろにいるとは」
起き上がり、ソファーに膝立ちで乗っかる円。
「ルビーなにしてんの?」
「テス勉」
「嘘。うちらも」
「あ、やっぱ?」
「でもルビーたちはルビーん家(ち)でやればよくね?広いんだし」
「ヒロイン?私が?まあぁ、そうか。こんな美貌ならヒロインだわな。負けない側のヒロインね。
常勝ヒロインルビー様!いいじゃんいいじゃん?誰か描いてくれないかな」
「理解不能だけど。ヒロインじゃなくて広いね。…英語で言ったら…Wide(ワイド)!」
「おぉ~。円が英語知ってた」
「合ってた!?」
「まあぁ~…通じなくはないかな」
「っしゃ」
拳を握る円。
「てかそっち誰いんの?」
「ん?詩衣(うたい)と円の相棒」
「まよか…」
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」
陽気なセリフとは裏腹に、言い方に抑揚のない真夜衣(まよい)が、ルビーの横からひょこっとっと顔を出した。
「出たな」
「出ました」
「まよはテス勉なんてしないだろ」
「円と一緒にすんな」
「はーぁ~?」
「ちゃんと詩衣先生に教えてもらってるから」
「ふうぅ~ん?…つかいいの?」
「なにが」
「彼氏。一緒に勉強しなくて」
「ん?するけど」
と真顔で言う真夜衣に
「ハーイ。爆発してくださーい」
と言う円。
「でもあれ。向こうと進み違うから、詩衣先生に教えてもらうほうがいい」
「彼氏に言っちゃおー」
「知らんだろ。私の彼氏」
「あ。ちなみにね。私の後輩ーってか、吹部の後輩もいるよ」
と言うルビー。
「ま。高校から近いしね」
という声にひょこっと顔を出した女の子。
「あ。呼びましたぁ~?」
「いや、呼んでないし、呼んだとしても私が呼んだの美休(みき)ちゃんだし」
と言うルビー。
「ちなみに」
と言う真夜衣。
「この子は私の中学の後輩」
とひょこっと顔を出した子の頭に手を置く真夜衣。
「まよパイセン、ちーす」
「ん。名前めっちゃ珍しいよ」
「初めましてぇ。仲鏡(なかがみ) 星空(ステラ)です」
「ステラ!?」
驚く円。
「星空(ステラ)ですぅ~」
「マジ?カタカナ?」
「星空って書いてステラですぅ~」
「やっば。イマドキの名前すぎん?」
「えへへぇ~」
「あと癖強くね?」
と真夜衣に向けて言う円。
「うん。私もうち(達磨ノ目高校)に入学してくるまで同じ中学だったってこと知らんかったから」
「あ、そうなのね」
「まよ先輩は有名でしたけどねぇ~」
と言う星空に
「え。なんで」
と食いつく円。
「当時からギャルでしたからねぇ~。お友達もギャルで、先輩たちのマネする子も多かったですよ。
ファッションアイコンみたいなお2人だったので」
「マジか」
なんて話す円を見て
「勉強する気ゼロかよ」
と軽く笑いながら呟く万尋。
「やる気ゼロかよっ!ね。叩いて被ってじゃんけんぽんの麻衣ちゃん状態ね」
と呟く虹言。
「とんだピエロだよ。ね」
とさらに呟く虹言。
「ほいでほいで」
と某魚の名前の大物司会者の方ばりに話を振る円。
一方のアイビル、士、葉道(はど)、蘭(らん)の男子4人はと言うと
テスト勉強という名目で世界的ファストフード店「ワク・デイジー」に集まり
アイビルと蘭はテスト勉強をしており、士と葉道は、一応ノートを広げているものの
「はいカッキーン!ホームラァ~ン!あざす」
「…。ま、まだ2機(残機)あるからな」
とサティスフィーで「大騒乱スパイクファミリーズ」をプレイしていた。
「葉道。そんな遊んでるとまた赤点取るよ?」
と蘭が言う。
「…待て。今話しかけんな」
必死に、でも楽しそうに大騒乱スパイクファミリーズをプレイする葉道。
「…」
ジト目で葉道を見る蘭。そしてテスト勉強を再開する。
蘭は達磨ノ目高校の中では真面目なほうの部類に片足を突っ込んではいるが
そこまで勉強が得意ではないので、アイビルに教えてもらいながらテスト対策を進める。
しかし
「…めっちゃ丁寧に教えてくれるのは嬉しいし、ほんとありがたいんだけど
アイビル天才肌なのかわかんないけど、バカなオレにはさっぱりだわ」
と笑う蘭。
「いやいや。単純にオレの教え方が下手なだけだよ。教えるのうまい人とかってどうやって教えるのかな」
と言うアイビルに
「…うぅ~ん…」
「…んん~…」
と蘭も一緒に悩む。すると
「円に電話してみたら?あいつも勉強するとか吐(ぬ)かしてたでしょ」
とゲームをしながら言う葉道。
「ま、どうせ勉強はしてないだろうけどね」
と言いながらLIMEを開き、円のプロフィールを開き、音声通話という部分をタップする。
蘭がスマホを耳にあてる。呼び出し音が鳴り、しばらくしたら
「…ん?蘭姉」
「兄ちゃんな?」
と「もしもし」すらなくいつもの流れをする円と蘭。
「どしたん?」
「いや」
と話し出そうとしたら、円の奥の方で
「お?彼氏か?」
と声がして
「違いますー。バンドメンバーですー」
と、おそらく先程の声の主に言うため顔をスマホから逸らしたのだろう
先程よりも少し離れた円の声が聞こえる。
「勉強してないわ」
と蘭もスマホから顔を離した上で、苦笑いしながら小声で言う。
「もしもーし。もしもし?」
と円の声でスマホを耳にあてる蘭。
「もしもし?」
「あぁ。で?どーかした?」
「いや、勉強のほうはどうかなぁーって電話したんだけど、どうやら勉強はしてないみたいで」
「は?してますけどぉ~?」
「てか誰かいんの?雨上風(はれかぜ)さんと遠空田(とおくだ)さん以外に」
「え。なんでわかった?」
「いや、「彼氏ー?」みたいなこと、あの2人は言わないでしょ。たぶん」
「あ、聞こえてた?」
「まあ」
「たまたまさ?ルビーとまよと詩衣も一緒んとこで勉強してたらしくて」
と言う円の声が聞こえたのか
「え。誰?蘭ちゃん?」
という声がまた円の奥から聞こえる。
「そそ」
「蘭ちゃーん。ルビーだよー」
「蘭ちゃーん」の声は遠かったが、おそらく円がスマホを渡したのか「ルビーだよー」の声は近かった。
「おぉ袴田」
「よっす」
「よっす」
「どしたの?」
「ん?いや、円勉強してるかなぁ~って」
「してないしてない。私らと話してばっか」
とルビーが言うと
「言うなし」
と言う円の声が遠くで聞こえる。
「だろうね。いや、こっちもテスト勉強しててさ?
勉強教えるのうまい人って、どんなコツあるんだろうね。みたいなこと話しててさ?」
「あーね?うちの詩衣とか教えるのうまいよ」
「どんな感じ?」
「どんな感じ?…説明ムズイな。暗記系は無理。とりま覚えるしかない」
「ま、だよね」
「数学とかはー、たとえばまよが解いて、それを詩衣が見てて、止まったらその都度教えてくれる。みたいな」
「なるほど」
「そうそう。…あ、今度詩衣に教えてもらえば?」
「…あんま面識ないのに?」
「あれ?ないっけ?」
「ないことはないけど、あんまない」
「ん~。まっ、頑張って、蘭姉」
「兄ちゃんね?袴田まで言うようになったか」
「言ってみたかったやつ」
「まいいや。ありがと」
と蘭がお礼を言った後
「ほい」
とルビーの声が遠くなって
「なに話してたん?」
とこれまた遠くで円の声がする。
「ん?勉強のことー」
「キモー」
という円の遠い声の後
「もしもし?」
と円の声が近くなる。
「あ、もしもし?」
「勉強会してんのに勉強の話すんなよ。具合悪くなるわ」
「円も話してないで勉強しろよ」
「オカンかよ。はいはーい。用そんだけ?」
「うん」
「じゃ。またのー」
「はい、またのー」
ティロリンッ。っと円側から切られた。
「なんだって?」
と葉道がゲームをしながら聞く。
「ん?勉強はしてなかった」
と蘭が言うと
「ふっ。だろーな」
鼻で笑いながら言う。しかしそこで油断したのか
「…」
「はい、これでタイ」
士に負けたらしい。
「…くっそ…」
「はい。区切りいいね?勉強するぞ」
と蘭が言うと
「いや!2対2で決着がまだだ!」
と葉道が言う。
「決着つけなきゃ勉強も手につかん」
「それな」
士もやる気のようだ。すると
「お。士じゃん」
と士に声をかけてきた達磨ノ目高校の生徒。
「おぉ。気李人(ケイト)」
士と同じサッカー部の夏元(なつもと)気李人だった。
「なんしてんの?」
「勉強」
葉道が答える。
「どこがだよ。ガッツリサティスフィー握って」
と笑う気李人。
「なにしてんの?」
「あぁ、これ?」
と葉道がサティスフィーを軽く持ち上げる。
「そ」
「スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)」
「マジ?オレも参戦したいわ」
「やる?」
「やる」
「てか気李人はなんでいるん?」
「いや、祭に、友達に勉強教えてもらっててさ?ほら、赤取るなよって顧問に言われてんじゃん?オレ」
「あぁ~。オレもだわ」
と言う士に
「じゃあ勉強しろや」
と笑いながら言う気李人。
「いや、気李人もどっか行こうとしてただろ」
「追加注文行こうとしただけですぅ~。あ、そうだ。虎(とら)もいるから4人でやろや」
気李人が言う「虎」とは、達磨ノ目高校の1年生の八森(はちもり)虎空之(とらの)のことで
虎空之は士と気李人と同じサッカー部の後輩である。
「あ、虎いるんだ?」
「あいつも勉強してるっぽいよ。ま、してないだろうけど。
ま、とりまオレ注文行ってくるから、LIMEでルーム教えといてや」
「あ、オレも行くわ」
と葉道も席を立ち、2人で話しながら注文へ向かった。
「…数学のテスト作り終わった?」
職員室で鳥愛(とあ)が我希(わき)に聞く。
「ま、粗方。あとは微調整したり、どうせ赤点の生徒は出るんで
補修のための問題も、テストの問題の数字変えて作るって感じですかね」
「なるほどね。数学のテストって自分で作るの?今だとAIにまかせたりもできるよね?」
「できますね。AIについては校長先生にも聞いたことあるんですよ。
テスト作りってAIにまかせてもいいんですか?って」
「なんて言ってた?」
「いいけど、でもちゃんと自分でも解いて確認したりしてね?って言われたんで
なんか自分で作っても変わんないかなって思いましたね。どうせ自分で解いて確認しないといけないなら」
「まあぁ~そうか。私たちより遥かに賢いAIが作った問題とはいえ
確認なしにテストにして、難しすぎたり、解けなかったりしたら問題だもんね」
「そうっすね。もういっそのこと教員も生徒も保護者もAIになれば、こんな苦悩しなくて済むんすけどね」
「まー。気持ちはわかるけど、そしたらそもそも教員という仕事なくなるんじゃない?」
「…たしかにっすね」
という教員の苦労も知らず
「…っ!あいつ(気李人)マジ!」
「気李人はスパファミ強いよ」
「部活しろや」
「あと虎も先輩にも容赦ない」
「サッカー部どうなってんだよ」
「ふっふぅ~。葉道ウケる。画面に飛んできた。祭(まつり)も休憩がてらやろうぜ?」
「あ、うん。じゃ、次参加するわ」
「よしきた。覚悟しろよ?オレ強(つえ)ぇから」
「そっか」
「なんかよゆーそうなの腹立つな」
と結局テスト勉強など捗らずに解散となった。
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