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【天使】
「…………」
しばらく沈黙した後、彼はおもむろに口を開くと、こう言った。
『実は、私は人間ではないんです』
私は目を丸くする。
『えっ?』
思わず声が出てしまった。
目の前にいる男は、確かに人間にしか見えない。
だが、本人は人間ではないと言う。
どういうことだ? 混乱する私を見て、彼は言葉を続ける。
『驚かれるのも無理はないと思います。ですが事実なのです。私は……この世界とは違う世界で生きていた記憶を持っています。そこでは魔法があり、魔物が存在していました。貴方の想像を超えるような技術もありましたよ。例えば……空を飛ぶ乗り物とか』……空を走る車があるということだろうか? ますますわからない。
そもそもこの男は何者なんだ? 異世界の記憶を持つと言ってるが、本当なのか? その証拠はあるのか? いや、それ以前に何故そのことを私に打ち明ける? やはり目的は金か? 私が黙っていると、彼は少しだけ悲しげな表情を見せる。
『信じてもらえませんよね……。当然の反応ですよね。わかっています。ただ……どうしても話さなければいけなかったのです。私の目的を果たすためには。お願いします! どうか、お金はいらないので話を聞いていただけないでしょうか!?』
そこまで言われて断る理由もない。
ただでさえ不安定な天秤宮様の運勢を更に揺るがせるような出来事が起きてしまった。
天秤宮様が、亡くなったらしい。
なんでも、何者かに襲われて殺害されたとか……。
一体誰が犯人なのかわからない状況のまま捜査が進められる中、天秤宮様に近しい人物が次々に殺され始めた。
そして、ついにはあたしも狙われるようになった。
殺される前に何とか逃げ切ったものの、あたしは恐怖に怯えながら日々を過ごすしかなかった。
いつまた襲われるか分からない以上、外に出るのは危険すぎるからだ。
それにしても、どうして天秤宮様が殺されたのだろうか……? そもそも、あの人は誰かに恨まれるような人だったのかなぁ……。
あたしの中で、疑問だけが膨らんでいった。
そこでふと、天秤宮様の部屋に置かれていた絵画のことを思い出す。確かあれって、誰かが天秤宮様に送った絵じゃなかったっけ? その送り主について調べてみると、意外なことに、すぐに名前が出てきた。
そこには、「M・Y(本名不明)」と書かれている。
その名前を見た瞬間、私の脳裏に嫌なものが過った。……まさか、あの絵を送った人が犯人なんじゃないよね? しかし、仮にそうだとしても証拠がない。
天秤宮様を殺した真犯人を捕まえるために、今あたしがすべきことは何だろう?……考えるまでもないことだ。
あの男について知っていることを全て吐かせるためにも、絶対に逃してはならない!
その思いは、全員同じようでした。
あたしは、その提案に賛成しました。
他のみんなも、すぐに賛成してくれました。
今こそ一致団結し、あの男を捕まえるべきです。
しかし……
一体どうやって捕まえるんですか!? 相手は空を飛べるんですよ!! そうだ……。
ここはやはり、空から追いつめてやるしかない。
しかし、問題はそれだけではありません。
奴を捕らえるためには、大量の銃が必要になります。
ですが、あたしはそのようなものを持ち合わせておりません。
そこで私は考えました。
この国には、たくさんの武器があるではありませんか! それも安価で大量に手に入るような代物がね……。
さあ、楽しい時間の始まりですよぉ……。
ある国の、とある刑務所にて。
囚人たちが暮らす棟の一室で、看守たちの会話が聞こえる。
「おい、知ってるか?」
「なんだ?」
「最近、あの女がまた現れたらしいぞ!」
「本当か!?」
「ああ! なんでも、この刑務所内にいるっていう話だぜ……」
「マジかよ……一体どこで捕まったんだ?」
「さぁ……とにかく、俺たちの知らない間に突然現れたそうだ」
「なんで今まで見つからなかったんだろうな……?」
「知らん……ただ、あいつは危険だ。見かけたらすぐ逃げろって言われてるくらいだからな」
「そうなのか……。まあ、とりあえず用心しておくことに越したことは無いけど……」
「はい、私も同意見です」
僕はとりあえず、話を合わせておくことにした。