TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する



[  耐  え  る  。 ] ◀




もう少し、もうちょっとだけ…希望を抱こう、大丈夫、きっと何か希望が見える…筈。体に力を入れて、じっと耐える、ただ耐える。声を出す事も辞めた、別に良いかなって、無駄な行動は減らそうって考えたから。偶に意識が飛びそうになるのも耐えて、大丈夫だって言い聞かせる、繰り返し。そんな時だった。



「___景くん!!!」



「長尾さん!!大丈夫ですか?!」



聞き慣れたその声と、なんだ…誰だ?聞き覚えのある声…。バチッという音と共に、魔は俺の傍から引き剥がされて少し遠くへ飛ばされていた。視界はボヤけていて、あんま見えないけど…取り敢えず弦月が俺の傍に駆け寄って、頭を支えてくれているのがわかる。


「景くん?大丈夫?意識有る?」


「おぉ…あるあるー、お弦助けに来てくれたん…?」


「当たり前でしょ?助っ人も呼んでるから。」


「助っ人…?」


腹痛いなぁ、と考えながら、ゆっくりと上体を起こして。ん”ん、と声を漏らしては晴の方へ視線を向けてみる。大丈夫、寝てるだけ。


「…晴くんは大丈夫だよ、魔も大丈夫。フミ様が居るから。」


「へぇ…フミ様…ん?フミ様ァ?!」


一気に目が覚めた。なんでフミ様が?! 飛んで行った魔の方を見たら、一体一で魔と向き合っているフミ様が見える。うわー、雰囲気がいつもと違う…。ていうか任せてて良いんかな。若干不安がこもった瞳を弦月へ向けると、彼は大丈夫。というように頭を撫でてきた。


「僕らは回復に専念してってさっき言われたからさ、

それに結構怒ってらっしゃるから一瞬だと思うよ…?」


神同士となると彼奴も下手に攻撃出来ないのか、そうなると確かに一瞬で終わるかな。

奥の2人を眺めていると、フミ様が魔を連れ去るように首根っこを掴んで違う部屋へ連れ去って行った。


「…えぇ…フミ様こっわ…」


「あはは…」


少し引き攣った笑みを2人で浮かべては、足にぐっと力を入れて、晴の元へ向かって顔をのぞき込む。大丈夫、守れて良かった。彼の頬へ手の甲をスルりと当てて、安堵の息を零す。


「…景くん、晴くんの心配も良いけど、後で傷全部見せてもらうからね…?」


「…うっす。」


圧を感じるその優しい声色と笑みに、静かに息を吸って返事をする。あーやだな説教。そう考えていると、晴の瞼がピクリと動きを見せる。そして瞼が上がって、俺らと目があわせられた。…と、思ったら。


「…弦月ぃ長尾ぉ…」


「…え、お、おぉ晴ー?wどしたー?w」


俺らの名前を呟いて急に涙を流し始めた。結構驚いちゃって、1度弦月に目配せをする。どうやら弦月も動揺してるらしく、ちょっと挙動があれだった。晴の背中を支えて体を起こしてあげて、背中を擦りながら問い掛けてみる。すると彼は雑に涙を拭いながら、ゆっくりと事情を話してくれた。

取り憑かれるまでの経緯。取り憑かれている間にも意識はあったこと。視覚と聴覚も共有されていたこと。その意識の中で魔がいて、何をしても反撃が出来なかったし、物理攻撃を受けたこと。そりゃ泣いても仕方ないわなって思った。仲間を自分で傷付けてるように感じるだろうし。


「いやでも…防音室壊されたのはちょっと…いや僕が壊したに近いけど…うん…」


「まぁまぁ、皆で協力して直そ?」


頭を撫でながら、少し笑っていた時だった。扉を開ける音と共に聞こえてきたフミ様の声。


「ただいま戻りましたー。」


「…え?!フミ先輩?!」


おっとぉ晴も同じ反応。ふは、と笑っていると、フミ様がちょいちょいと手招きしていたもんで、俺?と自分に指差して首を傾げる。勿論というように彼女は頷いてきたので、彼女の方へ近づいて問うてみる。


「なんすかフミ様…?」


「此奴、神だったけどなやかんやで魔に染まっていたらしいです、我が戻しておいたので大丈夫だと思いますが…まぁ、取り敢えずこの魔だけ切って頂けます?神は元の場所へ送っておきますので。」


「あー…OKです、ありがとうフミ様。」


「いえいえとんでもない。」


彼女は手の平サイズに小さく、弱った魔を摘んで俺へ渡してきた。ホントちっさ過ぎて害がないんじゃないかと疑う程だが、先程まで俺此奴に蹴られてたからな。容赦なく刀で魔を切ると、其奴は弱々しく鳴きながら消えていった。…出来れば二度と来ないで欲しい。


「ありがとうフミ様。」


「いえいえとんでもない。…ですがしっかりと、

我が事務所に伝えて傷が癒えるまで休暇を与えて頂きますのでね。」


「…げっ、w」


ぺし、と軽くゲンコツをされて、圧のある笑みを浮かべながら淡々と言葉を並べてきた。うわぁ弦月と似てるーなんて思いながら、頷いた。…やっぱり、何だか視線を感じる気がする。まだ魔が残ってるのか?


「…長尾さん?」


難しい顔をしてたのがバレたのか、フミ様が顔を覗き込んで名前を発してきた。気の所為な筈だ、そう、気の所為。


「何でもないっすよ!」


…まぁ、皆が無事なら良かった。


「おーいハルーとーじろー!!お菓子一緒に食おうぜー!」


「はぁ?!おま…今?!馬鹿じゃねぇの?!まず治療だよ!!」


「そうだよ景くん、ちょっと上半身見せて貰って…ね!」


「うぉあぁ嫌だぁぁぁ!!w」



____________________________



[ H a p p y E N D ]



1 思わぬ助っ人。




次回 、


TrueEND。

魔による乗っ取り

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

139

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚