~💚~
🖤「大丈夫。康二くんはもう死ぬよ。来世では幸せになれるといいね」
耳元でそう囁かれ、胸を刺された康二の呻き声が聞こえなくなり、俺はこの世の終わりに思えて絶望した。
引き裂かれた左腕が麻痺して、痛みも感じなくなってきた。
頭もぼんやりしてきた。もう俺も終わりなんだな、と自嘲した。どうせ自業自得なんだ。
死んだ二人に恨まれるのは俺だ。
蓮を欺き、康二と照を殺した。このまま逃げ出せても、何回生まれ変わっても、きっとこの罪は許されない。もう後悔も未練もクソも無い。
🖤「阿部ちゃんも、そろそろ死のっか」
そう言って、蓮がナイフを振りかざした。
💚「待って」
俺は残された右手で、ナイフの刃を掴んだ。予想外の俺の動きに、蓮が目を丸くする。
俺は、実は康二と照が襲われている時に、慎重に拘束を解いていたんだ。
俺は蓮に言い聞かせるように、内心穏やかでは居られないが、懸命に語りかけた。
💚「一緒に死のうよ」
🖤「…!?」
💚「目の前で友達と恋人を殺されて、腕も斬られて。今更生きたいだなんて、もう思えない」
ナイフの刃が俺の肌を裂いて、掌を血が伝う。
💚「蓮。一緒に、地獄に堕ちようよ」
【これが、俺が蓮に捧げられる最期の愛だ。】
俺は椅子から立ち上がり、残された右手で、蓮の顔を思い切り殴ってナイフを奪った。
🖤「何、するんだ!」
蓮が顔を押さえて、よろよろと立ち上がる。今度は背中をナイフで一突きして、動けなくさせた。
🖤「う”ぁぁっ!!」
悶える蓮の髪を掴んで、俺は階段へと走った。
途中で蓮が、逃げ出そうと俺の服を掴んできたから、左腕を切り落とした。
🖤「あ”ぁぁあ!!くそっ!放、せ…!」
💚「何言ってるの?俺とお揃いだよ?嬉しくないの?」
俺の瞳を見た蓮が、諦めたのか啜り泣き始めた。痛がる蓮を引き摺る様にしてひたすら階段を上って、ようやく屋上に着いた。
9階建ての古いビルの屋上からは、夕陽が綺麗に見えた。
まるで、太陽が血を流しているかのように真っ赤な夕陽に向かって、俺は蓮を連れて走り出した。
💚「蓮!また、来世で会おうね」
🖤「阿部ちゃん…」
俺は、蓮を力一杯抱き締めた。死ぬほどの愛が、ちゃんと伝わるように。
二人分の体重を乗せてフェンスに寄りかかると、錆びた金網は音を立てて倒れた。
俺たちの体は宙に浮き、俺は蓮を抱き締める腕に一層強く力を込めた。
手を繋いでいた蓮が、俺を抱き締め返して目に涙を浮かべた。
🖤「阿部ちゃんは、俺のこと好き?」
💚「もちろん!ずっと愛してるよ。絶対に嘘じゃない」
二人の体が落ちていく恐怖の中、蓮は俺の答えを聞いて安堵したような笑顔になった。
🖤「やった。来世でも一緒になろうね」
蓮がそう言い終わると、俺たちは地面を覆うアスファルトにぶつかって意識を手放した。
次回に続きます。
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すげぇ!