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ああもう、めっちゃ良かった……!🥀🤍 紅茶淹れるシーン、指が触れた瞬間の空気の止まり方、めちゃくちゃドキドキした……「マナ様」じゃなくて「マナ」って呼んじゃったライの耳が赤くなるところ、反則すぎるでしょ。二人きりのときだけのタメ語、ずるいよなあ。 しろまるさんの書く距離感の縮め方が本当に繊細で、読んでてこっちまで照れる。続き、絶対読みたいです🌙
「まずい」
昼下がりのティールームで、緋八マナは一口紅茶を飲んでそう言った。
向かいに立っていた伊波ライの肩がぴくりと動く。
「……申し訳ございません」
「うん、まずい」
「そんなにはっきり仰います?」
「だってまずいんだもん」
ライは静かにカップを見下ろした。
今日の紅茶はライが淹れたものだった。
護衛や剣術は屋敷でも一番。
けれど細かい作業は壊滅的。
紅茶もその一つだった。
「苦い」
「……」
「なんか葉っぱの味する」
「紅茶ですので」
「そういう意味じゃなくて」
マナは笑いながらカップを置く。
ライは真剣な顔で考え込んでいた。
「何でそんなに落ち込んでるの」
「マナ様にお出しする以上、完璧でなければなりません」
「別にいいじゃん」
「よくありません」
「ライらしいなあ」
ライは昔からそうだった。
自分に厳しい。
失敗を許さない。
だから少し失敗しただけでも必要以上に落ち込む。
そんなところが面白くて、可愛くて。
マナはつい意地悪したくなる。
「じゃあ命令」
「またですか」
「僕に美味しい紅茶を淹れて」
「努力いたします」
「今日中」
「厳しいですね」
「執事でしょ?」
「便利な言葉ですね、それ」
少し呆れたような声。
けれど嫌そうではない。
マナは椅子から立ち上がる。
「よし」
「どちらへ?」
「一緒に淹れる」
「え?」
「教えてあげる」
ライが珍しく目を丸くした。
「マナ様が?」
「何その反応」
「勉強以外で何か教える姿が想像できません」
「失礼だな」
「事実です」
「減給」
「給料を頂いておりません」
「くっ」
言い返せない。
結局二人は厨房へ向かった。
使用人たちがいない時間を見計らい、こっそり紅茶の準備をする。
ライが湯を沸かし、マナが茶葉を選ぶ。
「それ違う」
「え?」
「そっちじゃなくてこっち」
「見た目同じでは」
「違うの」
マナが手を伸ばす。
その瞬間。
指先が触れた。
ほんの一瞬。
けれどライは動きを止める。
マナも少しだけ固まった。
「……」
「……」
先に視線を逸らしたのはマナだった。
「ちゃんと見て」
「はい」
なぜか少しだけ気まずい。
いつも通りのはずなのに。
「次は?」
ライが聞く。
「お湯を入れて」
「これくらいですか」
「多い」
「え」
「だから多いって」
「すみません」
「もう、貸して」
マナが横からポットを持つ。
自然と二人の距離が近くなる。
肩が触れそうなくらい。
ライの方が背が高いから、少し見上げる形になる。
その距離が妙に落ち着かなくて、マナは慌てて離れた。
「よし、これで待つ」
「なるほど」
「簡単でしょ?」
「マナ様は案外器用ですね」
「案外は余計」
「褒めているのですが」
ライが少し笑う。
その顔を見て、マナは思わず見惚れた。
ライは普段あまり笑わない。
だからたまに見せる笑顔は反則だと思う。
「何ですか」
「いや」
「変な顔しています」
「失礼」
「事実です」
「減給」
「だから給料は――」
「それ禁止」
ライは吹き出した。
今度ははっきり。
声を出して笑った。
マナは目を瞬かせる。
「ライが笑った」
「笑いますよ」
「珍しい」
「そうですか?」
「うん」
ライは少しだけ視線を逸らした。
「……マナの前だと、わりと笑ってる気がするけど」
一瞬。
空気が止まる。
マナも固まった。
ライも固まった。
「……今」
「……」
「マナ様って言わなかった」
ライが片手で顔を覆う。
「忘れてください」
「無理」
「忘れてください」
「絶対無理」
耳が赤い。
珍しい。
こんなライを見るのは。
マナはなんだか嬉しくなった。
「もう二人きりなんだから別にいいじゃん」
「よくありません」
「何で?」
「主人ですので」
「でも僕たち昔から一緒じゃん」
ライは黙る。
確かにそうだった。
幼い頃からずっと。
執事と主人という立場になる前から。
ずっと隣にいた。
「……そうだね」
今度は自然なタメ語だった。
マナが笑う。
「やっぱそっちの方が好き」
ライは困ったように眉を下げた。
「外では無理だからな」
「二人きりなら?」
「……たまになら」
「やった」
まるで子供みたいに喜ぶマナ。
ライはその姿を見て優しく笑った。
数分後。
出来上がった紅茶を二人で飲む。
マナは一口飲んで目を輝かせた。
「美味しい!」
「本当ですか?」
「うん!」
ライも飲む。
確かに前よりずっと良かった。
「……成功か」
小さく呟く。
するとマナが得意げに胸を張った。
「先生が優秀だからね」
「そうですね」
「認めた」
「認めます」
ライが素直に言う。
マナは嬉しくなった。
そしてふと気付く。
こうして二人でいる時間が、最近前より楽しいことに。
ただからかうだけじゃない。
一緒に笑う時間が増えている。
それがなぜなのか。
まだマナ自身も分かっていなかった。
ただ一つだけ分かることがある。
ライと過ごす時間は、退屈なんて言葉を忘れてしまうほど楽しいのだった。