テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夕暮れの街角
放課後の街は、夕暮れ色に染まっていた。
コンビニの前、愛梨は手にしたガリガリくんを小さく舐める。
「んっ……」
その何気ない仕草には、まだ子どもらしい無邪気さが残る。
だが、視線は少しだけ遠くを見つめていて、その奥には言葉にできない寂しさが混ざっていた。
──同じ時刻、数百メートル離れた高層ビルの屋上。
黒いローブをまとい、風になびく長い髪を押さえるように、アオメは丸メガネを指先でクイッと上げた。
「なるほど……あれが例のマジカル・アイリーンですか」
その声は低く、静かだ。
しかし、その瞳には冷静な光と、計算された知性の輝きが宿っている。
ビルの影が長く伸び、夜の帳が街を包み始める。
ネオンが揺れるコンビニ前──そこへ、見えない闇色の鼓動が、じわじわと響きはじめた。
「……さて。あなたの戦い、見せてもらいましょうか。マジカル・アイリーンさん」
冷たい声とともに、アオメは指を鳴らす。
──パァンッ!
宙に現れたのは、青のにじみを帯びた漆黒の鍵。
それは希望を象徴する鍵とは真逆の、絶望の象徴だった。
「*……ロック・青眼(アオメ)*」
地面が低く唸るように軋み、アスファルトの隙間から闇が盛り上がる。
やがて、青黒いフォルムの怪物が這い出た。
「ゼツボウゥゥゥ……!」
モングーの咆哮が、夕暮れの街を裂く。
「……!」
愛梨は驚きのあまり、手に持っていたガリガリくんを落としてしまった。
胸が早鐘を打つ。ついこの間、同じような怪物を倒したばかりなのに。
「ま、また……!?」
震える手を制服のポケットへと差し入れ、そこに隠していた一本の鍵を握りしめる。
──光が弾けた。
ピンクのリボンが舞い、ハートのきらめきが宙を彩る。
フリルのドレス、輝くステッキがその手に現れる。
「……マジカル・アイリーン、見参っ!」
夕暮れの街に、希望の光が差し込んだ。