「……マジカル・アイリーン、見参っ!」
夕暮れの街に、ピンクの光が花開き、希望の粒子が舞い散る。
その瞬間だけ、ビルの影さえも色を失い、少女の姿を引き立てていた。
愛梨は一歩、前に出た。
「悪いことは……」
舌がもつれながらも、震える声で叫ぶ。
「ゆ、ゆるさないからっ!!」
ビルの屋上から飛び降りるように、黒いローブの影が地面へ降り立つ。
アオメ――その丸メガネが夕暮れの残光を弾き、冷たい光を瞳の奥に宿す。
「来ましたか、魔法少女。」
声色は淡々としている。だが、その目の奥には、研ぎ澄まされた刃のような光が走った。
「あなたの“正義”とやら……この絶望の鍵が、試してあげますよ。」
愛梨は眉をひそめる。
「あ、貴女……敵なの?……」
警戒の色を見せながらも、なぜか人懐っこさが残る響き。
アオメは薄く笑みを浮かべ、静かに答えた。
「えぇ。この前、貴女の前に現れた……“あの人”と同じです。」
その名前は出さない。だが、脳裏にあの金髪の姿――ミミカが浮かぶ。
愛梨の表情に、不安の影が走った。
「えっ……あの金髪の……」
その一瞬の油断。
モングー「ゼツボゥッ!!」
――ズドォォォォォン!!!
地面が爆ぜ、衝撃波が弾ける。
愛梨の身体が宙を舞い、無情にもアスファルトを転がった。
制服の袖が破れ、膝から赤い血がにじむ。
モングー「ゼツボウ!!」
爪が、蹴りが、荒れ狂う暴風のように迫る。
「っあぁっ!!」
次の瞬間、少女の身体は再び吹き飛び、背中から地面に叩きつけられた。
息が詰まり、喉が焼けるように痛い。
髪は乱れ、フリルは裂け、ピンクの輝きが徐々にくすんでいく。
モングーが吠え、影の塊となって背後から飛びかかる。
――その一撃は、トドメを刺すためにあった。