「こんにちは~です!」
「……」
カランカランと店のドアのベルが鳴り、ユキのテンションは先程からうなぎ登りで元気良く入店!
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいましたー!」
店員の挨拶にも返すほどだ。
「ほら!オシャレの国!ミクラルですよ!いっぱいいっぱい買い物しなきゃですよ!」
ユキは元気いっぱいに笑顔を振りまきながらも店内を興味津々に見回す。
「……ユキ、さっきはオシャレな食べ物の国って言ってた」
「そ、それもあるんです、ですけど!そ、そう!この国はオシャレ全般なんですよ!」
「……へぇ」
「その返事、絶対疑ってますよね!」
「……別に」
「いいですか!ミクラル王国のオシャレ度は半端ないんです!グリードやアバレーに比べて服の様な装備が安く手に入るのもミクラルの人達がオシャレに妥協しなかった結果なんですよ!」
「……疑ってないのに……」
会話だけ聞いてるとカップルの様に聞こえるが、実際に2人と居ると兄妹という言葉が似合っているのが見えてくる。
「ならここでかっこいい装備を買いますよ!ヒロユキさん!」
「…………あぁ」
実際の値段によるが今の相場と同じくらいの性能で服になるのならそちらの方が動きやすいのは確実だろう。
「まぁでも、私も流行りとか解んないので、こう言うときは店員さんに聞きましょう!」
「……了解」
「すいませーん!」
「はい、なんでしょうか?」
「私たちに会う服ってありますか?」
「え!?あ、はい」
かなりド直球な質問に驚いたが、店員さんは2人をまじまじと見て__
「そうですね、まずあなたは此方とかどうでしょう?」
ヒロユキに黒に赤のラインが入った軍服の様な服を差し出した。
「……わかった」
あまりにも即答でユキが困惑する。
「早!?確かに似合ってると思いますけど……こう、なんかこう!もっと他の見たりしないんですか?」
「……他のを見てもよくわからない」
「ま、まぁそれもそうですけど……」
「……そういうことだ」
「うぐ、言いくるめられました……店員さん、私のはありますか?」
「そうですねぇ……お客様くらい容姿が整ってると店長が喜ぶんですけど……今は奥で別のお客様の対応してまして……」
「えへへ、照れます」
「うーん」
かなり店員も迷ってる様だ。
少し時間が長引きそうだな。
「……ユキ、先に着替えてくる」
「分かりました、行ってらっしゃいです」
「……店員さん、試着室は?」
「試着室ならあちらのカーテンを開けたところになります、あ、そうだこれとかどうですか?」
出されてたのはフリフリが多いドレス。
「これですか!?え、えと、私はこれから祭りで歩いたりするので……」
そんな2人を尻目にヒロユキは服を持って店員が言ってた「あちら」付近に行く。
「(……ここかな?)」
それっぽくカーテンが閉じられてたので開けると__
「な!?」
「……!」
高級な椅子と机の個室に繋がっていてそこで優雅におばあちゃんが紅茶を飲んでいた。
「あ、あっつ!!」
おばあちゃんは驚いて持っていたティーカップを膝に落としてしまって立ち上がる。
その拍子で机においてあった何枚かの魔皮紙がヒラヒラと落ちてしまった。
「……すいません」
ヒロユキは自分の近くにあった魔皮紙を拾い上げて謝りながら返そうとするのだが……
「まったく何さね!人の待合室にいきなり入ってきて!これだから最近の若い奴はって奴さね!」
おばあちゃんはカンカンに怒りながら汚れた服の場所に魔力を流しながらヒロユキを見ずに言う。
「……あ、あの」
「この服がこう言うときの為に洗浄機能があって良かったさね!さっさと出ていくさね!」
そのままカーテンを閉められてしまった。
「……あ」
手に持っていた一枚の魔皮紙を返せず……
「……」
流石に今またカーテンを開けると火に油を注ぎそうなので少し時間を置いて返そう……
「なんかすごい怒鳴ってる声聞こえてきたんですけどどうしました?」
「……ユキ、試着室が」
ユキはヒロユキを見てなんとなく理解し、「あちゃーそうでした」と言って説明する。
「そう言えばこう言うところに来ないので教えてませんでした、これは魔法のカーテンでここに魔力を通すと行き先が変わるんです」
ユキはそういって横にあるボタンに魔力を流した後、カーテンを開けると中は先程までと違って鏡張りの試着室になっていた。
「この機能が付いてる服屋も多いので常識として覚えておいてください、まぁ、普通は中からロックしてるんですけどしてなかったら一番最後に合わせられた部屋になります」
「(……それじゃぁ、あのおばあさん……自己責任なんじゃ……)」
「取り敢えず私はまだ店員さんが私に合う服のサイズを探してるみたいなのでお先にどうぞ」
「……解った」
ヒロユキは試着室に入ってロックをかける。
「……」
ヒロユキは怒られたことを思い出しながら着替えていく。
「……(でも常識的に考えると何も言わずにカーテン開ける方がおかしいのか)」
なんとなく納得しながら着替え終わって試着室を出た。
「……出るときは普通に出れるんだ」
出てきたヒロユキを見て店員さんが「お似合いですよ!」と声をかける。
「……ありがとう」
「彼女様は今は着替えております、きっとお気に召されますよ♪」
「……彼女じゃない」
「そうなのですか?ごめんなさい、あまりにお似合いだったので」
「……」
それから待つこと5分、カーテンが開かれた。
現れたのは純白に赤のラインが入った魔法使いドレスを着たユキ。
「その……どうですか?ヒロユキさん」
恥ずかしそうにヒロユキに聞くユキは普段の元気とは裏腹にそのしおらしさが可愛さをより一層引き立てる。
「……ユキは何着ても似合ってる」
安定のヒロユキだ。
「へ?あぇ?そ、そうですか?へへへ」
ユキはどっちか分からない返答に少し迷うが褒められたということで解決したみたいだ。
「お二人とも、かなり似合ってますよ!黒と白で太極な色にすることでお揃いのコーデみたいですよ!」
「お揃い!確かにそうですね!」
「でしょ?ふふふ」
店員はユキの嬉しいところを的確についてくる。
そして____
「買います!お揃いで!!」
「毎度あり♪」
その後、お会計でユキの目玉が飛び出るほどの額だったが“お揃い”というワードが頭から離れず、さらには今の装備よりも多種多様な機能があるので結局買うことになった。
「最低半年は死ぬ気で依頼こなしますよ、ヒロユキさん」
「……何か忘れてる気がする」
「?、何をですか?」
「……いや……それよりこれからどうする?」
「もちろん!食べまくります!ここまで来たら使うだけ使っときましょうお金!それにどちらにしろ四日まで何もできませんからね!行ってみますか!」
「どこに?」
「ミクラル王国!ニューイヤーフェスティバル名物!《モンスターコロシアム》!」
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